第22話 Clock-17
本来なら大勢の犠牲者を出した大事故。
しかし、その事故は未然に防がれた。
おかげで、扱うニュースの枠は非常に短い。
夕方のニュースを見ながら、ほんの小さな尺で報道された事件。
『パイロットがすべて死んだのに”偶然”乗客にパイロットの教官が乗り入れたおかげで墜落することなく緊急着生した』
だが、ニュースになったのはその飛行機にC国の巨大企業のTOPが搭乗していたからであろう。そうでない場合、TVのニュースで扱われたかも怪しい。
「へえ~。偶然ってあるんだね~」
無邪気に隣に座っている安藤美緒がつぶやく。
安藤家のキッチンでは、夕食の支度をする音が聞こえる。
平和な日常。
時田英治は、この穏やかで平和な日常が嫌いではない。
だが、
何度となく、あの”スマホ”の電源を入れるのをためらいはした。
しかし、結局は電源を入れてみてしまうのだ。
その度に、英治は自分が違う人間になってしまう感覚を感じていた。
もちろん、あの活動は単なる自己満足であることは分かっている。
だけれども、やめることはできなかった。
「英治兄ちゃん。どうしたの?怖い顔をして」
「え?・・・いや、何でもないよ」
しまった。
つい考え事をして、表情に出てしまったらしい。
「ふうん・・もし、英治兄ちゃんが困ってたら相談してね。私、何でもするから」
無邪気に笑いながら見上げてくる美緒。
「うん、わかった。ありがと」
考えていたことを心にしまい、英治は笑顔で美緒に答えるのであった。
しかしながら、内心では非常に動揺していたのであった。
学校から帰ってきて、まずは見てしまった未来。
それは、今まで見てきた未来に比べるとかなりシリアスな内容であったのだ。
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