第93話 惨劇②

 藤堂寺連夜と永森竜吾が現道優達を殺した理由は六年目の逆恨みだった。

 六年前、優が連夜と竜吾と決別し、市太郎と優が出会った時だった。山田市太郎達がダンジョンに囚われた事件。管理省の人間を囮にして殺そうとした事件。

 二人は「優が裏切ってダンジョン管理省にオレ達を売った」と思い逆恨みした。

 管理省の人達と一緒に優を囮にして、裏切った事を忘れているのか、本人達は『自分達が刑務所に居るのは全部優のせい』と変換されていた。

 六年後、数日前に二人は出所した。二人が出所して最初にすべき事は裏切った優を殺す事だった。

 優の情報は直ぐに分かった。ダンジョン管理省の特殊探索課の希少の特殊探索者と調べ上げた連夜と竜吾。

 二人は優を殺害する為に、優に関する情報を集め、武器の代わりに包丁やナイフを用意した。

 そして連夜と竜吾には運良く、優と輝美には運悪く、両者は出会った。

 優は『嫌な予感』を感じていたが、ダンジョン外だった事と、輝美と日和が大事な話があると言われて、公園で休憩を取っているときだった。

 連夜と竜吾は輝美と日和を人質にとった。お腹にいる赤子を守る為に慎重になる輝美と日和。

 優は連夜と竜吾を説得するが、二人は「武器と義手を外せ! 人質を殺すぞ!」と脅迫して優の言葉を無視する。

 義手と装備を外した優は、連夜と竜吾に刺される。急所は外れているが優から血が出る。叫ぶ輝美と日和を殴りつける連夜と竜吾。

 そして連夜と竜吾は優を殴り、刃物で切りつけた。

 優が傷つけられ、輝美がわずかな隙を見て、日和を人質に取っている連夜を殴った。

 輝美の行動で日和は解放されたが、輝美を人質に取っている竜也が輝美の腹に刃物を突き刺した。

 竜也の行動に怒りを露わにして、力を振り絞って竜也を殴り飛ばす優。そして輝美を守りながら、


「逃げろ! 助けを呼べ!」


 日和に叫んだ。日和は逃げながら周辺に助けを呼ぶ!

 助けを呼ぶ日和の声に数人が集まった。そして日和は現場に向かう。

 現場には優と輝美が倒れていた。優は致命傷を負い周りの地面が赤く染まっている場所で亡くなっていた。そしてわずかに意識があった輝美が、


「ひより、だい、じょうぶ?」


 と言って力尽きた。日和の返事を聞く間もなく……。

 日和は動転しながらも山田に連絡を取った。助けに来てくれた人達は警察や救急車に連絡をする。

 警察官が来た。現場を見た警察官はブルーシートで惨劇を隠す。

 その後、山田市太郎が来た。日和は泣きながら市太郎に抱き着く。

 救急車が到着した。二人は緊急手術で優と輝美が蘇生できるかを聞ける状態ではなかった。

 

 優を殺す事に成功した連夜と竜吾。しかし二人も手傷を追っていた。片腕で半死人の優に手傷を負わされた二人は、優を殺す事で恨みを解消した。


「さてと、後は逃げるか」

「実家に隠れよう。親も分かってくれるさ」


 二人の家族は一度目の犯罪で地元から逃げ出しており、二人の面会にも来た事が無かったが、連夜と竜吾は家族が自分達を待っていると思っていた。


「しかし優の必死な顔といったら」

「マジ笑えたな。気持ち悪い女を刺したときの顔といったら!」

「爆笑もんだよ! 顔に傷がついている気持ち悪い女にキレるなんて馬鹿だよな!」

「馬鹿だからしかたないだろう。きっとそんな女にしか興味ないんだぜ!」

「ブス専ならぬ、傷物専門ってヤツか? マジで笑えるわー」

「早く帰ろうぜ! 途中で酒を買って帰ろう!」

「ツマミと話のネタもあるからな。奮発して高い酒でも買って帰るか!」


 連夜と竜吾は笑いながら実家へ帰ろうとするが、警察と探索者に捕まる。

 二度目の犯罪と出所してからすぐの殺人の重さから、被疑者の家族達から死刑を求刑されていたが終身刑となった。連夜と竜吾は刑に不服で無罪を求めている。

 優の一番の不幸は連夜と竜吾の二人が幼馴染であった事だろう。

 そして優の両親は連夜と竜吾の素性を見破れなかった事を後悔した。

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