第32話 婚約者①
ゴールデンウイーク初日。
優は時間五分前に待ち合わせ場所に着いた。
待ち合わせ場所にはクラスメイト達が集まっていた。おしゃれな私服を着ている女子を誉める男子達。男子達と楽しく会話している女子達。初めて会う人達に自己紹介している男女。
「現道君、来たわね。私服も似合っているわ」
「ありがとう、中園さん。……今日もカメラ持っているんだね」
「モチロンよ。カメラ持ってないと私じゃないでしょう!」
女子は私服で印象が変わるなと優は思った。他のクラスメイト達も学校の制服ではないので皆が違って見えた。
「そういえば山田君は? 一緒じゃないの? 寮が一緒だから一緒に来ると思っていたのに」
「市太郎君は昨日「朝に用事がある」って言って、先に出たよ。後で会おうと言っていたから、もうすく来るんじゃないかな?」
もうすぐ待ち合わせの時間になるが、市太郎が来ない。それが気に食わないのか市原輝美が不機嫌に言う。
「まったく、遅刻するなんて、罰として全員に何か奢ってもらおうかしら」
「まだ遅刻じゃないよ、輝美ちゃん」
「あと一分だけどな」
市原輝美と白川涼子と江戸川祭の幼馴染三人。
読者モデル経験者の市原輝美の私服姿は他人を二度見させる。白川涼子はカジュアルな服装だが似合っている。江戸川祭は女子受けしそうなスマートは服装だ。
そんな事を話していたら、待ち合わせ場所に一台の高級車が止まった。そして車から出て来たのは市太郎と着物姿の美少女だった。
「すまない、彼女が参加したいと言って、迎えに行って少し遅れてしまった」
「我儘を言って申し訳ございません。でも市太郎様のご友人にお会いしたかったので。初めまして皆様、伝風寺綾乃(デンフウジ アヤノ)と申します」
和服美人の美少女は礼儀正しく自己紹介し頭を下げた。そして男女全員を魅了する笑顔を放った。
全員が見惚れていたが、唯一驚きで声を上げた市原輝美。
「綾乃様! どうして此処に! どうして山田、君と一緒なのですか!」
「あら、お久しぶりですね、輝美さん。春のパーティー以来ですね」
「お、お久しぶりです、パーティーではお世話になり、両親も感謝しておりました」
誰かが「セレブな会話か?」と言った。市原輝美の父親は伝風寺財閥の子会社の重役で、娘の輝美が探索者高等学校に進むからパーティーに招待したときに挨拶をした程度の顔見知りだ。
「綾乃様、お久しぶりです。貴方がこちらに来られてビックリしています」
「アリサさん、お久しぶりですね。お知り合いが居て私も驚いています」
服の系統を纏めている私服姿のアリサ。綾乃もアリサも二人が居る事に驚いていた。
輝ノ島アリサも日本上位の金持ちの社長令嬢だが、世界屈指の財閥である伝風寺財閥とは比べ物にならない。
「あの、山田君とはどのような関係でしょうか?」
アリサが全員の知りたい事を聞いた。
「市太郎様とは婚約者です」
全員が市太郎を見て、綾乃を見る。そして一呼吸おいて全員が驚きの声を上げた。
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