第46話 白川葵


「まさか……!」


 こないだも敵の魔術師たちに襲撃を受けたばかりで、屋敷の結界は十分ではない。

 ふたたび白川家が襲ってきたとなれば、脅威だ。


 東三条家の組織力も落ちているし、護衛の魔術師なんてほとんどいない。

 案の定、あっさりと白川家の魔術師は風呂場にまで侵入してきた。


 しかも、それはセーラー服姿の女子高生だった。黒い髪を長く伸ばした清楚な雰囲気の美少女だが、目つきが鋭く、気の強さを感じさせた。


「あーあ、エミリアったら、そんな格好で男を誘惑するなんてはしたない。やっぱり淫乱女の娘は淫乱なのね」


「……っ! 葵姉さん……!」


 バスタオル姿のエミリアが顔を青くする。

 目の前にいるのは、エミリアの姉・白川葵だった。


 話したことはないが、和樹も顔を見たことはある。同学年の女子だからだ。

 

「祝園寺くんも災難ね。容姿で男に媚を売ることしかできない女のせいで、ひどい目にあうんだから」


 葵は酷薄な笑みを浮かべた。


「どういうこと?」


「白川家はね、エミリアの保護を目的として東三条家を襲撃したの」


「え?」


「白川の娘を勝手に拉致誘拐して東三条のものにしようとした。それがあなたたちの罪」


「でも、結子さんからそちらの当主には話が通っているはずだ」


「何のことかしら」


 とぼけたように葵は言う。和樹はすべてを悟った。白川の当主は、結子の連絡を握りつぶし、東三条を乗っ取る口実に利用したのだ。

 非道なことをする。


 葵はニヤリと笑い、黒い髪をかき上げる。


「実際、祝園寺くんはエミリアに奉仕させようとしていたみたいだし、あながち冤罪でもないんじゃない?」


「ち、違います! 風呂場に入ったのは私が勝手にしたことで――」


「経緯はどうでもいいの。まあ、エミリアが裏切ったことはわかっているし、あとでお仕置きしないとね。白川に従属する魔術師の男たちに犯させてあげようかしら」


「……っ!」


「死んだ方がマシっていう目にあわせてあげる」


 葵はそう言うと、魔術を行使して手を輝かせた。光る触手のようなものが伸び、エミリアを一瞬で捕縛する。


「きゃあああああっ!」


 エミリアはバスタオルを触手に奪われ、一糸まとわぬ姿になってしまった。そのまま口や大きな胸を触手にもてあそばれる。


「んんっ―!」


「祝園寺くんの大事な妹さんや、透子も同じ目にあわせてあげる。今頃ほかの魔術師たちが彼女たちを拘束しているはず」


「どうしてそんなことを……」


「だって、この屋敷の女たちは、全部、お兄様に献上してお兄様の子供を生んでもらわないといけないし。子供を生んだ後は、一生うちの性奴隷ね」


 和樹は頭に血が上るをの感じた。観月、透子、結子、朱里、桜子……。和樹の身内の女性たちを、白川の嫡男はすべて凌辱するつもりらしい。


 必死に抵抗するエミリアはなんとか触手を引き剥がすが、ふたたび触手に襲われ、今度は押し倒されてしまっていた。


「いやっ……助けて祝園寺先輩っ」


 エミリアは青い瞳を涙で濡らし、和樹に助けを求めていた。

 ここで白川家に負ければ、和樹の大事な女性たちはみんなひどい目に合わされてしまう。


 絶対に負けるわけにはいかない。

 和樹はエミリアの触手に魔術の弾丸を撃ち込み、破砕した。そして、エミリアに手を差し伸べる。


「大丈夫、白川さん?」


「はい……!」


 エミリアはこくりとうなずくと、立ち上がった。そして、自分が裸なのに気づき、恥ずかしそうに胸を隠す。


「戦いに勝ったら、さっきの続きをしてくださいますか……?」


「勝ったらね」


 和樹は思わずうなずいてしまった。エミリアは嬉しそうに笑う。


「約束ですよ?」


 そう言うとエミリアも、葵にまた向き合った。

 反撃開始だ。







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