【ー天災ー】50
望はその後、何事ももなかったかのように雄介から視線を外すと体を反転させ物資の搬出へと向かおうとした瞬間、後ろから誰かに手首を掴まれるのだ。
「……何だよっ! 離せっ! 俺とお前はもう他人同然なんだからよっ!」
そう怒りと同時に雄介にそう言い放つ。 そして雄介に掴まれている手首を離そうとするのだが、雄介の方はその掴んだ手を離そうとはしない。 寧ろもう離さまいと更に強く握っているようにも思える。
雄介の方は頰を叩かれ顔を上げられないだけなのか、それとも望には顔向け出来ないという事なのか顔は全く上げずに、
「今回の事はホンマにスマンかった……」
そう雄介は申し訳なさそうに言うと、今度は顔を上げ望の視線へと合わせ、
「せやけど、俺だって……その……めっちゃ悩んで……出た答えやったし……。 その気持ちは分かってくれへんかな?」
「……分かる……分かる訳ねぇだろうがっ! いいから、とりあえず、この手を離せよっ!」
そうだ。 今は雄介にどんな事を言われても許す訳にはいかない。
だから望は自分のありったけの力を振り絞って雄介から逃れようとするのだが、日頃から鍛えている雄介はまったくもってビクともしないようだ。 本当になかなか離してくれようとしない雄介。
「お前、いい加減にっ!」
「……出来る訳ないやろ? この手、もう一生離したないんやから」
雄介は本当に本気なのであろう。 今度真剣な瞳で望の事を見つめるのだ。
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