【ー天災ー】16

「……そういう事かいな。 今までのは夢でもなかったっていう訳やんな。 やっぱ、俺、ちゃんと人命救助しておったって事なんやなぁ」


 手を天へと翳すと、その手には消防用の手袋がしてあって、さっきあった事を思い出す雄介。


「さ、坂本!」

「あ、ああ、なんだよ」

「子供は、助かったんか?」

「ああ、お前のおかげでな。 今は念の為に病院の方に行ってるけどさ」


 雄介はその話を聞いて安心したのか安堵のため息を漏らし微笑む。


「やっぱ、人助けた後っていうんは清々しい気分になるな!」

「そうだな」

「ところで、子供はどうやって助かったん? もう、俺の方はあの場でアカンって思うておったのに」

「それか? ああ、それは、お前があのマンション内に入って行ったのを目撃してたから、俺が上に言って、その後を追っかけたんだよ。 それで十階で倒れているお前と子供がいたから助けたんだぜ」

「そうやったんかー! それなら、ホンマにホンマありがとうな。 だってな、もう、絶対助かんないって思うとったからな」

「ああ、当たり前じゃねぇか、だって俺達親友だろ?」


 そう二人はそこで助かった喜びを分かち合うのだ。


 あの時、雄介はあの男の子親の言葉を耳にしていた。 命令違反だと分かっていても子供の命が助かっていたのなら、それでいいと思う。 それは人の命を助けた者にしか分からない事なのだから。

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