【ー記憶ー】92
それは、やっぱり二人で楽しむ事を知ってしまったからなのであろうか。
雄介はそんな思いのまま一人部屋の中で、ひと息吐くと一人で食事を終わらせ、そのお皿をキッチンへと運んで行く。
そんな時に思い出されたのは望の事だ。
望の家では雄介がご飯を作ると必ず望が食器を洗ってくれていた。 だから、こう一人でお皿を洗うのは久しぶりなのかもしれない。 一人いや恋人がいないと本当に灯りが一つ消えたようにも思える。 それくらい部屋の中も暗くなったようにも思えるのだから。
そんな時、雄介はある事を思い出す。
「あ! せやっ!」
そう望がついこの間、望が記憶を失くす前に雄介に提案してくれた事だ。
『一緒に住まないか?』
本当にこの言葉の後に望が記憶を失くしてしまったのだから、まだその約束は果たされていない。
もし望が一週間位で退院出来るなら望と一緒に暮らす事は出来ないのであろうか。
でも今の望はその言葉を雄介に言った事さえ覚えてないのかもしれない。 今の望はその記憶さえないのだから。
じゃあ、どうすれば望と一緒に暮らす事が出来るのであろうか。
今はそこが問題である。
今の望からしてみたら雄介は完全な赤の他人で例え望が退院してきても、その赤の他人が一緒に住むなんて事は出来ないだろう。
そこは、また望の承諾が必要となるところだ。
じゃあ、こう自然に望と一緒に住む事は出来ないのであろうか。
雄介はお風呂にお湯を溜めると、そこでまた考える。
「何かこう一緒に住める方法はないんかな?」
お風呂の中というのは一番ゆっくり出来る所でもあってか、逆に何も無い場所なのだから色々と考える事をするには最適な場所なのかもしれない。
ただの友達の関係で、流石に望の家に泊まる訳にはいかない。 そこは完全に不自然過ぎる。
和也みたいな職業であれば看護師としてや職場の仲間として付き添うのであれば一緒に住めるのかもしれないのだが、今の雄介は望からしてみたら恋人でも友達の関係でもないのだから。
何かこういいアイディアがないかと、雄介はお風呂の中で腕を組んでまで考える。
そして何かいいアイディアが浮かんだのか、雄介が立ち上がると同時にお風呂のお湯が大きな音を立てるのだ。
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