【ー記憶ー】73

「まぁ、俺やってたまにはこう息抜きみたいなのしたいやんか。 ま、そこはええとして……まぁ、今日は見逃してくれへん? 今度、何か奢るし」


 雄介はその救急隊員に向かってお願いをするのだ。


「今はとりあえず、コイツの事が心配やねんって」

「桜井さんの恋人ですか?」

「え? あ……まぁ、なんていうんか……ま、とりあえず……まぁ、堪忍してな。 って、何してるん?」


 雄介はそう誤魔化しながらも話をしていると、その間にその救急隊員は望の事を診ているようだ。


「何してるって? 診察ですよ。 あれ? この方、よく見たら、春坂病院の吉良先生じゃないんでしょうか?」

「お前、知っておるんか!?」

「そりゃ、一応同じ地域の病院なんでね。 それに、一番吉良先生が勤務している病院に患者さんを運んでいますから」

「あ! そうかっ! 確かにそうやったわぁ、俺だって、春坂病院によく運ばれておったんやっけな?」


 そう雄介は独り言のように言っていると、どうやらその救急隊員は診察は終わらせたようで、


「まぁ、吉良先生は大丈夫ですよ。 煤は至る所についてますが外傷の方はありません。 ただ、気になるのは内臓系か脳かな? と思われますけどね。 吉良先生はお医者さんでもあるので、自分の体位は分かるかと思いますけど。 心配なら病院に行く事をお勧めしますよ」

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