「ホンマなんやったかなぁ？　昨日は熱にうなされておったし、何も覚えてへんような気がするし。　でも、さっきの望の言葉こう何か引っかかる感じなんやけどな？　それに、望が顔を赤くしながら言っておったようにも思えるしな？」

　雄介はそう独り言を呟きながら脱衣所からお風呂場へと入って行くと浴槽にはお湯が張られていた。

　そういえば前に望にそんな事を話したような気がする。

　そう雄介はお風呂に入る時には浴槽にお湯を張って浸からないと疲れが取れた気がしないっていう事を望は覚えていたのであろう。

　雄介は望のお言葉に甘えて、いや行動と言った方が正しいのかもしれない。　そんな望の行動に甘えて雄介はお湯へと浸かり、もう一度望が言っていた事を思い出しているようだ。

『早く出て来いよ……』

　だが未だにその言葉の意味を分かっていない雄介。　前に望にはゆっくりお湯に浸からないとお風呂に入った気がしないと告げて有る訳だし、望もそれを覚えていてお湯を張っておいてくれたなのだから、お湯に浸かるという事はそんなに早く出れる訳がない。　なのに何故か望は雄介に早く出て来い。　とも言っていた。　本当に雄介からしてみたら謎の言葉でもある。

　雄介はそう考えながら湯船にあるお湯を掬い顔を洗うのだ。

　すると、さっき望が言っていた言葉を急に思い出したのか、

「あー！　分かった！　そういう意味やったんかぁー！　ほなら、こうゆっくりと入ってる場合やないな」

　そう言いながら雄介はお湯から立ち上がる。

　雄介がお風呂に入って約十五分。　やっと、さっき言っていた望の言葉を思い出せたようだ。