【ー記憶ー】53

 今後一緒に暮らす事になれば、また望の事で新しい発見が出来るのであろう。


 そう一緒に暮らす事に期待に胸を膨らませ雄介は食後のコーヒーを両手に持って望が座っているソファへと腰を下ろす。


「ほい、コーヒー」

「ん? あ、ああ……ありがとう」


 いつに間にか雄介は望が作るコーヒーの淹れ方を覚えていた。


 望の場合には気持ちだけ入っているミルクと砂糖の気持ちだけのカフェオレ。


 望はそれを受け取ると口にする。


 人に淹れてもらったコーヒーというのはこう何だか美味しいというのか、きっと雄介が淹れてくれたコーヒーだからなのかもしれないのだが、こうも疲れた体を癒してくれるような気がする。


 今の望は幸せの絶頂期にいるのかもしれない。


 今、この時を恋人と一緒にいられるのは本当に幸せな時間なんであろう。


 気付くと望はコーヒーカップを持ったまま雄介の肩へと頭を寄りかからせていた。


 もう望は大分、雄介に心を許し始めてきているのかもしれない。


 望はもうテレビを見ながらリラックスしているのだから。


 そんな望の様子に雄介は微笑んで望の頭を撫でる。 雄介が暫く望の頭を撫でていると寝息が聞こえて来るのだ。


 それに気付いた雄介は望の顔を覗き込む。


 器用な事に望はコーヒーカップを持ったまま寝ているようだ。


 雄介は望の事を起こそうと思ったのだが、望が持っているコーヒーカップをそっと取ってそれをテーブルの上へと置く。 そして、そのまま望を寝かせておく事にしたようだ。

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