【ー記憶ー】31

 和也が出て行ってしまった後、雄介の部屋は静かな空間へと変わるのだ。


 そして雄介は大きなため息を吐くと、ベッドへと寄りかかり携帯を開く。


 でも、やっぱり雄介の方も望同様になかなかボタンを押せずにいた。


 そして雄介が望に電話を掛けるか掛けないかで迷っていると刻々と時間だけが過ぎてゆくだけだ。


 今の時刻はもう既に夜中の十二時を差そうしていた。


 でも確かに和也の言う通り今掛けなければ次いつチャンスが来るか? っていうのが分からない。 いや、もう二度とチャンスはないのかもしれない。 それにこのまま放っておいたら和也に望の事を取られてしまうのかもしれない。 それに多分、今日というチャンスを逃してしまったら、もう二度と電話を掛けるチャンスがなくなってしまうような気がしたのであろう。 そうなってしまったら、益々、雄介と望の心は離れてしまうかもしれないとでも思ったのか、次の瞬間には指が動き通話ボタンを押していた。


 何回かのコール音。


 だが望が出る気配はなく間も無く留守番電話サービスへと繋がる頃だったのであろうか。


 望は眠っていたのか、ただ単に電話に出るのがめんどきさかったのか、そこは分からないのだが、電話の向こう側に出た望は本当にだるそうな声が聞こえて来る。


『……はい』


「望か? 俺や! 俺!」


 出てくれた望にそう興奮気味に答える雄介。


『あ、ああ……ぅん……分かってる……。 あ、その……だから、俺はその眠いわけで……また、今度に……』

「それはアカン……俺らにとって重要な話やしな。 本気で、今、聞いて欲しいんやって」

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