第10話 初めてのデート②

 


 モールで春川の服を買った俺たちは、そのモールから直近の映画館へ向かっていた。

 さて、春川の今日の服装について説明していなかったので、するとしよう。

 春川の服は、これまた清楚感のある服装だった。バックリボンの付いたミモレ丈の(ふくらはぎが隠れる程度)無地のジャンパースカートのワンピースに、白色の靴。靴下はくるぶし丈で、シミ一つ無い綺麗な肌が覗いている。

 言っておくが、俺は休日に美久のファッションショーに付き合っている内に少し女性ものの服に詳しくなってしまっただけだ。

 ジロジロと見ていたわけではなく、待ち合わせ場所に春川が来たとき、目に入ってきたものをそのまま言っただけである。やましい気持ちは全く無い。


「陽菜」


「何?」


「映画館のある階は多分人が多くいてなかなか出来ないと思うから、今のうちにお互いに御手洗いに行ってこよう」


 そう、俺たちがたった今着いた場所は、映画館が四階にある複合施設だ。一階がスーパー、二階が書店(小説)や中古店、三階がカフェや書店(コミック)だ。五階より上は行った事がないから、良く知らない。

 春川には、映画を観た後は三階のカフェで昼食を取りつつ、感想を伝え会おうと言ってある


「それもそうだね。じゃあ、ここでまた集合ね。といってもすぐだけど」


ということでひとまず別れた俺たち。しかし、お互いに動こうとしない。

 ここは、俺から動くべきか。


「じゃあ、少し待っててくれ」





「待たせた」


「ううん、全然待ってないよ。結構速かったね」


 そりゃ、なにもしないで出てきたからな。しかし、手は洗って、しっかり拭いてきた。トイレに入ったら何となく不潔な感じが昔からするのだ。

 

「じゃあ上に上がるか」


「うん」


 エスカレーターで上がるため、特にこれといった会話はしなかった。が、春川より数段下にエスカレーターに並んでいた男性が変な動きをしていた。何かと思ったら、春川のスカートの中を見ようとしていた。

 春川が後ろに倒れてしまった時のために俺の方が後から並んでいたが、こういう場合もあるのかと思った。 

 しかし、考えてみれば不思議ではなかった。春川の容姿は、そこら辺の同年代の女子では太刀打ちできない程、優れている(美久には及ばないが)のだから、本人が気付いていないだけで昔からあったのかもしれない。

 俺は、その男性の様子を右手に持ったスマホで、バレないように撮影した。動画が撮れているのを確認して、男性に無言で笑いながら脅した。すると、男性は三階でそそくさと去っていった。


「ふんふ~ん、ふふ~ん」


 当の春川は俺の苦労も知らずに、ただ映画が楽しみのようだ。

 観たい映画については、服を選んでいる時にそれとなく聞いておいた。CMで流れていた、淡い恋愛もののドラマが観たいらしい。


「すいません、1時10分から上映される、〇〇〇〇をお願いします。席を予約していた桜庭です」


「では、あちらの機械で番号を入力し、3番館のご指定の席へお座り下さい」


「ちょちょっ、ちょっ待ってほしいんだけど!」


「分かりました。ありがとうございます」


 説明された機械の場所へ行く。


「ねえ、た・く・と?待ってって言ったよね?」


 なにやら春川がひきつった笑みを浮かべている。全然コワくないな。


「私がこの映画を観たいっていうの知ってたのかな?」


うん、やっぱり全然コワくないな。


「いや。あらかじめこの時間帯の映画の座席を前もって予約しておいたんだ」


「…………」


今度はポカンと口を開けている。


「どうした?」


「……拓人ってさ、やっぱり少しおかしいよ。勉強は学年一位だし、陸上も化け物クラスだし、それで運動神経がそこそこなんて言ってるのはヤバイよ。映画の席は別に来た時に決めれば良かったじゃん。私、どこでも良かったのに」


「初めてのデートだぞ。そんな中途半端で良いわけないだろ。それに、恋人をエスコートするのは彼氏の役目だろ」


 これもネットに書いてあったことだが、俺はこれには共感した。仮にも恋人なのだから、責任を果たさなくてどうする。


「…………拓人さ、わざとやってる?」


「何をだ?」


 皆目検討がつかない。


「もう……(ホントに、女誑し…だな。“勘違い”、しちゃうよ……)」


「何か言ったか?」


「……な~んにも言ってませんよ~だ」


 良く分からんが、機嫌が良く見えるのは気のせいだろうか?

 3番館に入る時は扉を先に開き、予約しておいた席まで春川の手を引いて先導する。その時、春川の頬が薄く朱色に染まっていた。

 予約しておいた席は全て、真ん中よりやや後ろの列で、列の中央部分の席だ。つまり、映画を鑑賞するにはベストな席だ。






「はぁ~~、面白かったね🎵」


「……ああ」


「……?え、ウソ!拓人泣いてる!?」


「ああ、俺は昔からこのジャンルのものに弱くて、ほぼ毎回映画を観終わった後は泣いていた」


「信じられな~い。フフッ、オールラウンダーの化け物くんも可愛いところもあるんだ~」


「嬉しそうだな」


「そりゃあね。さて、グッズも買ったし、三階のカフェ行こっか🎵」


「その前にもう一度御手洗い行ってくる」


「じゃあ、私も行こ~っと」






 お互いに御手洗いを済ませ、三階のカフェに着き、映画の感想を語り合った俺たち。終始春川は俺の顔の泣き跡を見て笑っていた。解せぬ。


P.S

 感想の語り合いは、俺の想像よりも大いに盛り上がった。



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 どうも、作者です!

 デート回はあと一回を予定しております!

 少しずつ陽菜ちゃんの拓人くんに対する評価も上がって来ましたね!

 あと1ヶ月と半月で10万文字に達するか不安ですが、頑張ります。

 映画を観たあとの感想の語り合いは、ショッピングの時と同じく、幕間で書こうかな?と考えております🎵

 出きるだけ一日1話のペースを保ちたいと思います。頑張ります!

 この作品が面白いな、と思った方は是非、フォロー、コメント、おすすめレビューをよろしくお願いします🎵

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