2-10 悪魔が生まれた日 後編
大広間に集まるクズ共は、トワが
「な、なんだお前は!?衛兵!こいつを捕らえろ!」
「……」
「おい、衛兵!何をしてる!さっさと来い!」
「無駄だよ、クソ野郎」
騒がれても面倒だと思ったトワは、この部屋を
――この騒いでるデブが、アテルのクソ野郎か。
お前は殺さない。生き地獄をくれてやる。
「ねぇ、ここにいる人たちは皆さぁ、アテル伯爵の噂の関係者ってことでいいのかな?」
「わ、私はそんな噂とは関係ないぞ!さっさとここから出してくれ!」
トワの瞳には、自分の保身のことしか考えていないクズしか映っていない。
「最後に聞くけど、地下牢の女性たちをあんな目に合わせたのはお前らだな?」
「…………」
全員が、なぜその事を知っているとばかりに顔を青くしている。
「そうか。死ねよクズども」
ここにいる者たちが全て生きる害悪だと分かったトワは、アテル伯爵以外の全員に
それは、ネジャロの武器作成のために考えられた、大岩をも軽々と破壊する魔法である。
そんな魔法がかけられた人達は、声を上げる暇すらなく、爆散した。
「な、なな何が?ヒィッ!?」
あまりの出来事に驚き、腰を抜かしたアテル伯爵に近づく。
「知らなかった!知らなかったんだ!ワシは辞めるように言った。
それが、あんなことになってるなんて、本当に知らなかったんだ!」
――白々しい。
自分の命が危うくなったら途端に責任放棄。
あー、うっかり殺しちゃいそうだ。
「そうだ!お前を雇ってやる。月に白金貨三、いや五枚だす!これだけの給金なら――あァ゛ァ゛!!」
口を開けば自分のことばかり。
聞くに耐えなかったトワは尻尾の剣でアテル伯爵の腕と脚を切り裂き、時魔法で巻き戻す。
これを、地下牢で亡くなっていた女性たちの遺体の分、繰り返した。
そして最後に、腕と下半身を潰し、回復魔法で治されないように時間魔法で時を止める。
「死んで楽になるなんて許さないからな。
一生、その激痛で苦しみ続けろ」
腕と下半身がぐちゃぐちゃになった伯爵を捕まえて、衛兵の詰所に
「うわっ!?なんだお前は!」
一部血に濡れてヤバい感じになっているトワと、ぐちゃぐちゃの廃人になった伯爵は衛兵に剣を向けられる。
確かに誰がどう見てもヤバい奴にしか見えない。
が、そんなことは無視して伯爵を衛兵の方へ捨てる。
「こいつはアテル伯爵だ。こうなった理由が知りたければ伯爵邸の地下牢を調べろ。
それと、今から一台の馬車を持ってくる。
そこにいる女性たちを元の場所に返してやって欲しい。
こいつの私兵の扱いは……面倒だから任せる」
口早に伝え、なにか言いたそうにしている衛兵を無視して女性たちを載せた馬車へと
そして、数秒も経たないうちに馬車を連れて戻ってきた。
御者をしていた私兵は暴れようとしたが、対処の早い衛兵にサクッと拘束され、手の空いている衛兵数人を引き連れ、馬車の積荷を開けてゆく。
「これはッ、人だと!?
おい!全員他の積荷もさっさと開けろ!」
そう、攫われた女性たちは木箱に詰められ、積荷に偽装されて運び込まれていたのだ。
全く惨たらしい……
「これをやったのがアテル伯爵だ。
そいつの私兵もどうせ同罪だろ。
ちゃんと処分してくれよ」
衛兵たちは攫われた女性たちの保護と、アテル伯爵の私兵、それに、屋敷で生き残っている数人の使用人の捕縛を約束した。
「任せたよ。それじゃ」
あの衛兵たちは信用できる。
何となくそう思い、トワはその場を後にした。
――そういえば身分証……
そう思い取り出した身分証には、なんの変化もなかった。
この世界の身分証は、持ち主に変化が起きた場合、自動で内容が書き変わるものと聞いている。
――私は、殺人をした。
正当防衛でも何でもなく、20人近くの人を殺した。
なんだけど、犯罪歴のところに殺人の文字は……出てこないね。
もしかしたら罪の意識とか、なんか別のものが関係してんのかな?
トワは今回のことに関し、罪の意識など微塵も感じていない。
だって、悪人を処分した。
それだけの事だから。
トワの感覚がズレてきているのだが、本人は全く気づかない。
――そうだ。伯爵の身分証、見せてもらえばよかったな。
さっきの仮説が正しいなら、アイツらの身分証はきっと綺麗なものだろうし。
まぁ、問題なく生活出来てたってことは、そういうことなんでしょ。
んー……そう考えるとこの身分証、あんまり信用出来ないものかもしれないな。
もし怪しいヤツが身分証を明かしてきたとしても、それを鵜呑みにはすまい。
トワはそう決めた。
「ただいまー!」
変装用に身につけていた〈悪魔の衣装〉を
「ッ!おかえり。探しに行こうと思ってたところだよ。
一体どこまで行ってたんだい?」
数分で戻ってくると伝えたが、予定外のことがあったために20分近くかかってしまった。
少し帰ってくるのが遅れただけなのだが、わざわざ探しに行こうとしてくれたようだ。
――うれしい。心配してくれてありがとう、アラン。
「少し、街のゴミ拾いをしてきたんです!
そしたら衛兵さんにお礼を言われちゃって。
それで帰るのが遅くなりました。心配かけてごめんなさい!」
アランに本当のことは伝えなかった。
だって、知る必要が無いから……
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