第7話 エルフちゃんと俺の妹
学食でカレーを食べて満足した俺たち二人は教室に戻った。
普通に午後の授業を受けた。
放課後、女子たちがララちゃんの前に集まってくる。
「ねぇねぇ、ララちゃん。何部に入るの?」
「一緒にバスケットする?」
「女子サッカー部とかどう?」
女の子は思ったよりも積極的だ。
ララちゃんがいれば即戦力になりそうだし、なにより目立つからいい広告塔だ。
来年の新入生にも期待が持てる。
「あ、まだ考えてなくて」
「そっか」
「残念」
クラスメートということもあり、しつこい人はいなくてすぐに引き上げていった。
「あ、俺は家戻った後すぐ病院行くけどどうする? どこか一人で寄ってく?」
「私も病院に行ってもいいですか? 妹さんのところですよねぇ」
「うん」
「ありがとう。是非会ってみたかったんですぅ」
「妹もきっとよろこぶよ」
「家族なんですから、妹ちゃんも私の妹みたいなものですもんね」
「おう、確かにそうだな、んじゃいこっか」
「はいっ」
靴箱で靴に履き替える。
ララちゃんの靴箱も帰りのホームルームの後に鍵を貰って割り当てられていた。
「では帰りましょう。手っ」
「あ、うん」
俺がそっと手を出すと、ララちゃんががっちり手を掴んでそのまま腕を組んでしまう。
案の定、おっぱいの柔らかいのがぽよんぽよんと当たっている。
「ふっふふのふ~らららんらん~」
俺とくっついていられるからか非常に機嫌がよかった。
知らない歌。エルフの歌だろうか。それを口ずさんでいた。
なんだか異文化の歌みたいな独特のメロディーで非常に興味深い。
そしておっぱいが気になってしょうがない。
一度家に帰って妹の着替えなどを持ってくる。
当然として下着類もあるが妹のものだし別に色気のあるやつじゃないのでこれくらいなら何とも思わない。
ララちゃんはどうやらそれよりは色気のあるピンクの下着をつけているようだけど。
ほんの少しセーラー服の白い生地からピンク色が透けているのだ。
上がそうなら下も結構派手かもしれない。
そうしてこうして循環バスに乗って病院へ。
バス停で少し待つとすぐにバスがやってきた。
「これがバスっ」
「ああ、そうだよ」
バスに乗るとララちゃんが感動している。
電車バス共通の電子カードは持っているみたいで機械にかざして乗り込む。
そしてバスの中を見回していた。
「前がいい? 後ろ?」
「えっと、前っ」
「了解」
運転手さんのすぐ後ろの席を陣取る。
ララちゃんは顔を乗り出して運転しているところを見ていた。
景色にも視線を向けつつ興味深そうにしている。
「次は、埼台市東総合病院前、総合病院前」
「お、おりますっ」
ララちゃんが声を出した。
俺がボタンを押す。
ピンポン。
「次、止まります」
アナウンスが再び入りララちゃんがホッとする。
「なるほどぉ」
仕組みに感心しきりのララちゃんはまるで幼稚園児だ。
まったくかわいいったらない。
降りるときもタッチで清算を済ませる。
「街中の乗合馬車とかを使うときは銀貨を出したりしてその都度まごついてましたけど、この電子カードとかいうの便利ですねぇ」
「だろ、これも俺たちが生まれる前にはなかったらしいよ」
「へぇ」
昔は精算機の機械に普通にお金を投入していたらしい。
今ではみんな電子カードに移行していた。
「おおぉこれが病院、おおきーいですぅ」
「総合病院だからね。普通の街の病院は一軒家とそれほど変わらないよ」
「そうなんですねぇ」
「うん。ここはビルだから」
「なるほどぉ」
感心しきりのララちゃんを連れて病院の受付へ。
ララちゃんも行政上は親族ということになっているらしく普通にサインをして入院病棟へ進む。
「わわっ、エレベーター」
「うん。使ったことない?」
「ホテルに泊まったときに少し使いましたから、四回目くらいですかぁ」
「ふむ」
「ふわってして気持ち悪いんですよねぇ。これ苦手なんですぅ」
「そうだったか。階段にする? 五階なんだけど」
「いえ面白いのでエレベーターで大丈夫ですっ」
「そっか、了解」
エレベーターのボタンを押すとすぐに扉が開く。
一階で待機していたらしい。
四角い箱に入りドアが閉まった。上昇していく。
「えへへ、誰も見てません」
そう言ってぎゅっとくっついてくるララちゃん。
「あの監視カメラあるんだけど」
「えっ見られてるんですか、ぎゃあ」
今度はほんの少しだけ間を空けるララちゃん。
五階までそのまま昇っていきドアが開いた。
「着きましたぁ。この降りる前がぐわあんってなって面白いんですよぉ」
「まあね、変な感覚だよな」
「そうなんですよぉ、分かりますかぁ。こんなのエルフの街にはなかったです」
「エレベーターの普及したエルフの街も見てみたい気がするが、なさそうだな」
「はいっ、電気とかいうのがないのです」
ナースステーションに寄って受付をして個室へ向かう。
年頃の女の子だ。病院側の都合の関係もあって個室にしてもらっている。
「
「あ、お兄ちゃん、どうぞ」
「失礼します」
エリカがパジャマ姿でベッドで起き上がっている。
「今日は起きてるのか」
「うん。少しだけ調子よくて」
「そりゃよかった」
なんというかエリカはいわゆる原因不明というもので調子が悪いのだ。
酷い倦怠感やめまいなどがあり長時間座ったり立ったり歩いたりできない。
血液検査や脳検査などもしてみたものの特に異常は見つかっていない。
「あの……外国人さん? エルフさん??」
エリカもエルフとか知っているらしく、頭の上にデカいクエッションマークが浮かんでいる。
「どうもこんにちは。エルフのララですぅ」
「えっ本当にエルフなの?」
「父さんの仕事、知ってるだろ。マジらしい」
「知ってるけど……へぇすごいね。私も異世界転生したいな」
苦しい生活を余儀なくされているエリカにとって異世界転生したいとは口癖みたいなものだった。
俺も異世界モノを多くたしなんでいるのでその欲望は骨身に染みるほど理解できる。
「異世界って実在してたんだね……驚き」
全然驚かない顔でそう笑ってみせる。
「早く死んで転生したい、こんな体」
「まぁそう言うな。彼女は転移してきたんだ。可能性はある」
「あのエリカちゃん……ちょっと手を出してもらっていいですかぁ」
「いいよ、何かくれるの?」
エリカが手を差し出してそれをララちゃんが丁寧に両手で包むように握りしめる。
「んっ」
エリカが少し恥ずかしいのか顔を赤くして目を見張る。
「えっ、なにこれ」
「分かりますか。エリカちゃん……魔力障害があるんです」
「え俺たちって魔力とかあるの?」
「はい。人間もエルフもみな魔力はあります。この世界の人には有効に使われていませんが存在はしていますぅ」
「そうなのか」
ララちゃんがいつになく真剣な表情になってなにかをごにょごにょ呟いている。
「エリカちゃん、ごめんなさい。ちょっと感じると思うけど我慢してください」
「えっ、うん。……あっ、んんんっ、あぅ」
妹のほうが顔を赤くして目が泳いでいる。
感じるってそういう、おおう。
「はい、いいですよ」
「あれ、なんだかちょっと調子よくなった気がする」
「魔力を与えて流したんです。これを続ければ少しずつよくなりますですぅ」
「え、なに、絵理加の病気、治るの?」
「はい。あのこのまま放っておくと五年後くらいには死んでしまうところでした」
「げ、マジか」
「はい。本当は男の人と性交渉すると魔力が流れ込んできて治ることもあるのですが」
「ダメダメダメ、そんなのなし。何歳だと思ってる」
「ですよねぇ」
あっけらかんとそういうこと言うのはなしだ。
なんだよエッチすれば治るって。
五年だろ。指折り数える高校卒業するまでは妹は誰にもやらん。絶対ダメだ。
「お兄ちゃんとエッチしても治るのかな」
「俺? えっ俺?」
「近親者は魔力も馴染みやすいので効果が高いって言いますねぇ」
「はぁ??」
「お兄ちゃん想像した? お兄ちゃんのえっち」
「うおおぉおおお」
俺大ダメージ。
妹にそんなこと言われる日が来るとは思ってなかった。
俺が治療のために妹とエッチ……しないわ。
だいたいエルフのララちゃんが魔力流せば治るんならそうしてくれ。
ララちゃんが家族になって本当によかった。ありがとう。
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