解呪の魔法ディスペルしか使えないからと追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾う 〜追放されたダンジョンの最深部で守護龍と契約して最強になります!〜
第7話 封印されていた書物を解呪してしまいました
第7話 封印されていた書物を解呪してしまいました
「あれでよかったのですか?」
「あぁ。王宮騎士団といえども金には目がない。この国ももう腐ってるんだよ」
「なるほど……これは予想以上に深刻なことになってそうですね」
俺の言葉を聞いたフラウは納得顔になった。そんな会話をしているうちに、俺たちは無事に図書館に到着した。
「それじゃあ、調べものを始めようか」
「はい」
俺達は早速、手分けをして歴史書を読み始めた。昔の歴史を漁って、ドラゴンライダーに関する記述を探していく。しかしどれだけ探しても、人間がドラゴンと契約したという記述は見つからなかった。
「やっぱりな……」
「見つかりませんね」
「ああ……。でも、邪龍に関する記述は残っているな」
俺は手に持っていた歴史書の1ページをフラウに示した。そこには邪龍が人間の街を襲う姿が描かれていた。
「ドラゴンが……そんな酷い……」
「ああ。その昔、この世界に災厄をもたらしたドラゴンがいたんだ。そいつは『邪龍』と呼ばれ、人間と長い間戦っていたんだが、英雄ディートリッヒと女神ソフィアによって封印された。英雄の子孫は今の王族だって言われているな」
「ディートリッヒ……ソフィア……その名前に聞き覚えはあります。もしかして……」
フラウは何かを考えるように呟いた。
「その邪龍って私のことじゃ……私が人間に災厄をもたらした存在ってことですか?」
「違うよ」
俺は即座に否定した。否定してしまった。
「どうして言い切れるんですか?」
「お前は悪い奴じゃないからだ。お前みたいなやつが意味もなく人間を襲うなんて考えられない!」
「っ!」
フラウは驚いた顔になる。
「私……封印されていた時のことも何も覚えていないのですよ? なのに何故信じてくれるのです?」
「それは……」
俺は言葉に詰まった。だって、俺は今嘘をついているのだから。
「それは……お前のことが好きだからだよ」
代わりに出てきたのはなんとも恥ずかしい台詞だった。
「っ!?」
今度はフラウの顔が真っ赤に染まる。俺までなんだか照れ臭くなってきた。
「あー……ええと……とにかくだ! お前は悪くない! だから、自分を責めるのはやめてくれ!」
「は、はい……」
俺達がぎこちなくしていると、不意に後ろから声をかけられた。
「おや? なにか探し物ですか?」
振り返るとそこには黒いローブを身にまとった女性が立っていた。なにやらただものではないオーラを発している。気配もなく近づいてきたことといい、なんだコイツは?
俺たちは無意識に身構えた。
「おっと怖い顔をしないでくださいよ。私はただの王宮魔導師ですから」
「あんた誰だ?」
「私は──」
女性はフードを取った。そこから現れたのは水色の長い髪だった。
「『首席宮廷魔導師』のフリーダ・マーキュリーと申します」
「なに……?」
俺はその名前に聞き覚えがあった。確か、王族のお抱え魔導師である王宮魔術師の中でも一番の実力者に与えられる称号だ。
「もしかして、首席宮廷魔導師ってあの?」
「はい」
俺達の驚き様に満足げな笑みを浮かべる女性。
「それで、あなた方は何をお求めでここへ?」
「実は──ドラゴンライダーについて調べているんだ」
俺はどこまで話したらいいか思案しながらも、フリーダに正直に打ち明けることにした。多分、この手の人物に嘘は通用しないだろう。
「ドラゴンライダー?」
フリーダは全く表情を変えなかった。ひたすら柔和な微笑を浮かべている。
「ああ、知ってるのか?」
「もちろんです」
「教えてほしい。一体何者なんだ? 何故記録が残っていない?」
「それはですね……」
フリーダは少し考える素振りを見せた後、口を開いた。
「知りたいですか?」
「ああ」
「では、ついてきてください」
そう言うなり歩き出した。俺は慌ててフラウの手を引きながらその後を追った。
「ここです。──『
フリーダはある本棚の前に立つと、呪文を唱えた。すると、目の前の壁が音を立てて横にスライドしていく。
「ここは?」
「禁書庫です。ここにあるものは選ばれた者以外触れることも禁止なのですが……特別に許可を出しましょう」
「いいのか?」
「ええ。どうせ、ここには誰も来ませんから」
そう言ってフリーダは奥へと進んでいく。俺たちもその背中を追いかけていった。
「禁書庫には外に出ると危険な書物が収められています。……王族にとって危険な思想とか、隠したい事実とかですね」
「それって……」
「そう。ドラゴンライダーの存在は王族にとって、記録から
フリーダは試すような視線をこちらに向けてくる。
「……まさか、ドラゴンライダーの力を悪用しようとしたのか?」
「いいえ。もっと単純に、ドラゴンライダーの力を恐れたのです」
「なに……?」
フリーダは手に持った杖の先に魔法で明かりを灯し、周囲を照らしながら暗い書庫の中を探していく。
「あっ、ありました。これです」
やがて彼女は1冊の古い本を引っ張り出すと、それを俺に手渡した。
「これは……?」
「この本に全てが記されています。……ただし」
「……?」
「その本には強力な封印が施されています。読みたいのなら、自力で封印を解くことですね」
フリーダは真剣な眼差しで忠告してきた。俺はゴクリと唾を飲み込むと、渡された本の表紙を捲ろうとした。しかしフリーダの言うとおり、本の表紙は最初から開くことを想定されていなかったかのようにビクともしなかった。
「くっ……!」
俺はなんとかして開けようと試みるが、それでも表紙を開くことはできなかった。
「無駄ですよ。国王陛下に命じられてこの本に封印を施したのは私ですから」
「なんだと……?」
俺は思わずフリーダの方を見た。彼女の顔からは相変わらず笑みが消えていない。
少し悩んだ末、俺は『
「『
俺が呪文を唱えると、本が淡い光を放ち始めた。そして数秒後、パタンと音をたてて勝手に開いた。
「……ロイ」
「あらあら、まさか本当に解呪してしまうなんて」
フラウは不安そうな表情で俺の肩に手を置き、フリーダは何故か嬉しそうに微笑んだ。俺は開かれた本のページに目を落とす。そこには文字がびっしりと書かれていた。
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