推し活部へようこそ! 〜なんでただの女子高生の私を推すんですか、これだからオタク達は訳がわかりません〜

米太郎

前夜祭1日目

0次会 僕の青春はここから始まった

 今は昔、稲刈りの翁というものありけり。


 ‌田んぼにて稲を刈りつつ、酒を作ることに使ひけり。

 ‌名をば、造酒司みきのつかさとなむいひける。



「すいません、先生! 現代の言葉に寄せてお願いします!」



 ‌稲の中に、一際光る稲があったそうな。

 ‌その光る稲を刈り、脱穀して精米して、麹に漬け込み、かめに入れて熟成して酒を作っておったそうな。


 ‌そんなある時、酒甁が光を増して、亀裂が入ったかと思うと、酒甕さかがめが勢いよく音を立てて割れたそうな。

 ‌割れた酒甕さかがめの中からは、それはそれは綺麗な幼女が出てきたのであった。


 ‌齢三歳程、熟成された麹のおかげか肌はツヤツヤ。

 ‌色白の肌がたいそう光って見えたそうな。


 ‌酒のせいか、ほんのり頬は赤く染まっており、それは艶やかな色気があったそうな。



「先生! 3歳の幼女の色気ってなんですか! 勝手にアドリブ入れないでください!」


 ……すまん。

 ‌造酒司みきのつかさは、この子のことを大切に大切に育てたそうな。

 この子のことを‌酒姫さけひめと名付けた。



 ‌今、この部活紹介を聞いている君達新入生・・・と同じくらいの歳まで成長した酒姫さけひめは、更に美しさを増した。

 ‌そんな酒姫さけひめの前に熱心な求婚者が5人現れた。


 ‌石作皇子いしづくりのみこ車持皇子くらもちのみこ右大臣阿倍御主人あべのみうし大納言大伴御行おおとものみゆき中納言石上麻呂足いそのかみのまろたり



 ‌どの求婚者からの求愛も熱心だったが、結婚する気の無かった酒姫さけひめは、求婚者たちへ無理難題を与えました。

 酒姫さけひめに振り向いて欲しい求婚者たちは、どの課題に対しても精一杯取り組み、酒姫さけひめへの贈り物と一緒に和歌を添えたというが、どれも酒姫さけひめを満足させることはでき無かったそうな。



「ドンマイというほか無いですな!」


 ‌その後、新たな求婚者として帝が現れた。帝は特に熱心に大量の和歌を酒姫さけひめへ送ったそうな。


 ‌帝からの愛のこもった和歌をありがたく思った酒姫さけひめは、送られてきた和歌にメロディをつけて、皆の前で披露したそうな。

 ‌これが今のJ-POP・・・・・の原点となった。


 ‌そして次第にエスカレートしていき、歌う以外にもダンスも交えて披露するようになったそうな。

 帝から貰った歌を歌って踊って、酒姫さけひめは見ている者たちに夢と希望と元気を与えたそうな。


 ‌これが今のアイドルという職業・・に通ずるそうな。

 ‌このことから、アイドルの日本語訳は酒姫さけひめと呼ぶようになった。



 この酒姫さけひめの話から派生して、今や酒姫さけひめは全国津々浦々、ご当地酒姫さけひめなんてのも多数存在するようになった。

 ご存じの通り、現在では飲んで歌って踊れるアイドルが身近な存在となったのであった。

 このような酒姫さけひめ達は活動規模の大小にかかわらず、見るものを魅了し、そして見るものに夢と希望と元気を与える存在になった。


 めでたしめでたし。




「今お聞き頂いた昔話にありますように、現代の酒姫さけひめの魅力にあてられたのが我が部活、推し活部でございまする!」


「自分の好きな酒姫さけひめ、アイドルを推す、昨今では推し活なんて言われておりますが、好きなだけ推していくのが推し活部の活動になります」


「こんな部活動をやってみたい。推しを推しきりたい。そんなあなた! 一度きりの青春を是非とも我が部活で過ごしてみませんか?」



 ステージの上で、自分の部活動を熱く紹介する2人組。

 大半の生徒達は、オタク二人組による下らない部活動紹介だとさげすんだかもしれない。


 だけど、この日、この演説を聞いた僕は、高校生活で自分のやりたいこと、やるべきことを確信した。

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