第201話・新たなる依頼

「ところで私が呼ばれた用件は何でしょう?」


「ああ、君達は呼ばないと、顔も出さないだろうなって思って」


 和やかな一家団欒もいいけど、そろそろオレが呼ばれた用件を聞きたいんだけど。たいした用件ないのか?


 普通に考えて一国の皇族のところに、呼ばれもしないのに来るわけないじゃん!


「報告をね。あの竜。正式に邪神竜だと判明したんだけど、流石に公開出来なくてね。一部の国と教国には伝えたんだけど」


「分かりました。私達は構わないですよ」


「あとね。一つ頼みがあってね。帝国に東方の領土があるんだけど、その重要な拠点の一つで原因不明の病気が蔓延してるんだ。軍に神官と魔法使いを付けて派遣したけど、成果が出なくてね。逆に同じ病気にかかって現地で隔離してる。君達に頼めないかと思って。勇者殿は向かなそうだし」


 あー、やっぱり面倒事なのね。


 皇帝陛下は呪いから解放されたとはいえ、ずっと寝たきりだったこともあり政務に復帰はしてないみたい。


 結果としてバルバドス皇子は亡くなり、代わりに帝国の政務をしてるのはサミラス殿下な訳ね。


 確かにジョニーさん向きな依頼じゃないよなぁ。


「まあ調査くらいなら、してもいいですけど」


「感染のリスクもあるから、ダメなら断ってもいいよ」


「その手の防護服がありますから、多分大丈夫かと」


「やり方は任せる。こっそり解決出来るならそれでもいい。一応父上の名で全権委任の命令書も出すから、必要なら現地で強権発動してもいい」


 断ってもいいとは言うけど、断りにくいよね。確信犯だろうけど。


 まあ調査すれば、この世界の感染症のデータ収集には役立つだろう。他人事じゃないからね。島だと感染症は流行りにくいだろうけどさ。


「現地の統治者はどなたが?」


「直轄領だから代官がいるはず。兄上が任命した貴族だけど、派閥とかとは縁遠い人らしいから、あまり変なことはしてないみたいだね」


 サミラス殿下から現地や感染症の資料と全権委任の命令書を受けとると、オレ達は皇宮を後にした。


 勇者の仲間として、立太子式とパーティに出るかと誘われたけど当然断ったよ。ジョニーさんも理由を付けて出席しないみたいだしね。


 帝国の協力を取り付けたジョニーさんは、また気ままな旅に出たらしい。


 オレ達が貸した通信機で、ジョニーさんでなければならないような依頼を連絡する手筈になったみたい。


 現状だとジョニーさんじゃなきゃ無理な依頼は、無いみたいだけど。自分の国で何とかするべき依頼ばっかりなんだとか。


 帰りがけに宰相に会ったから、少しジョニーさんのこと話したんだけど、過去の勇者の中には人々の為に世界を駆け回った勇者も居たんだって。


 それに味を占めた国や貴族が多いんだろう。おだてて地位や名誉で勇者にやらせようと考える者が多いんだってさ。


 まあ国のトップなんてのは、勇者だろうが聖女だろうが利用するくらいじゃないと、やっていけないって宰相は言ってたけど。


「とりあえず情報収集からしようか。ミリーが自由になるまで三日あるし、下調べにはちょうどいい」


「はい。無人偵察機で情報収集と周囲の環境調査を行います」


 さてと、オレ達はマルク君の家に挨拶に行ってお祭り楽しもうかね。


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