第186話・帝国争乱?・その九

「サミラス艦隊。攻撃するようです」


「それしかないか。無人艦にはサミラス艦隊を守らせて。まさかとは思うけど、何か策があるかもしれないし」


「了解しました」


 バルバドス皇子の船は一路サミラス艦隊に突っ込んでいく。


 でも武装は破壊した上にたいしたスピードじゃないし、ただの的でしかない。


「まさか囮か?」


「離脱した艦隊は先程から動きを止めたまま、動く気配はありません。旗艦からも脱出した形跡なし。転移魔法による逃亡の場合は追跡は不可能です」


 何を考えてるか分からないけど、バルバドス皇子の船はサミラス艦隊の集中攻撃を受けてあっさり撃沈された。


 あまりの事態に拍子抜けした感じもあるけど、サミラス皇子は残る敵艦にも降伏勧告をするも、返事はないし逃げもしないって何がしたいの?


「司令。撃沈した敵旗艦に生体反応が二つだけ残ってます。ライブラリー照合の結果、人ではありません。生体反応は以前ワイマール王国の第二王子が、魔族化した時の反応に酷似してます」


 今も無反応の敵艦は魔法障壁が邪魔で、内部のサーチは出来ないけど、撃沈した敵旗艦ならば残骸をサーチすることが出来る。


 念のため残骸をサーチしたら、とんでもないもの見つけちゃったな。


「サミラス殿下に警告して。あと支援艦隊には攻撃命令。怪しげな動きしたら、残骸ごと破壊していいから」


「了解しました」


 通信機がない艦隊戦がこれほど厄介だとは思わなかった。


 リアルタイムで情報を共有出来ないせいか、サミラス艦隊は無反応の七隻の空中船を警戒しながら。バルバドス皇子が乗っていたはずの旗艦の残骸を調査するらしく、一部の船が着陸態勢に入ってる。


 何があるか知らないけど冗談じゃないよ。


「司令。生体反応一つ消えました。局地的な空間の歪みを同時に検知。逃亡したと思われます 」


「ゲッ。逃げられた? さっさと攻撃するべきだったかな?」


「残る生体反応動き出しました! 速いです!」


 判断ミスが悔やまれる。敵の一人を逃がしてしまったな。


「メルティ。撃て!」


 だけど悔やんでる暇はなかった。残る生体反応の一体が突如動き出すと、サミラス皇子の乗る船に向けて空を飛ぶように移動をした。


 人のサイズの人でないモノ。やはり黒いオーラに包まれ人型をしてはいるが、化け物としか思えぬおぞましい存在。


 動きが速くサミラス艦隊に接近しすぎたので、大気圏外の支援艦隊の攻撃では周りを巻き込むかもしれない。


 そう思ったらオレは、とっさに船を操縦してるメルティに撃てと声を発してしまった。


 黒いオーラの化け物は、大気圏外からのレーザーとオレ達の船からのレーザーにより、サミラス皇子の船の直前でなんとか撃墜することが出来た。




「やれやれ。勇者殿のお仲間の助力が無ければ、僕は確実に死んでたね」


 残る敵艦が無人だと判明したのは、そのすぐあとだった。


 サミラス皇子は残る敵艦を制圧すると、一旦地上に降りて撃沈した敵旗艦と最後に突撃した化け物の調査を開始した。


 オレ達も戦闘艦を着陸させサミラス皇子の元に、諸々の報告と謝罪に来たけど。サミラス皇子はあまりの事態に、少し無理に笑ってるようにオレには見えた。



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