第120話・結婚式・その二

 結婚式は異世界もそう変わらないみたい。


 多少の礼儀の違いはあれども神の前で永遠の愛を誓う。


 花婿の男性は王都までの旅路を一緒に旅をした青年だ。


 帰ったら結婚しようと約束していたらしいけど、変なフラグじゃなくて良かったね。


 花嫁はごく普通のこちらの世界の女性だけど、ウェディングドレスを着ると美しく見えると言えば失礼かな。


 神父役は伯爵様だけど、付き合いで結婚式に出たことが多いようで様になってる。


 本当はちゃんとした神父がいいらしいんだけど、田舎の村なんかだと年長者が代役を勤めるのも珍しくないらしい。


 そういえば実家にあった両親の結婚式や両親とオレが一緒に写った写真。


 あれだけは未練がある。


 あちらがどうなってるか知らないし、今が幸せだから誰にも言う気はないけど大切な想い出だからさ。


 一度だけ戻れるなら写真だけはこっちに持ってきたい。


 まあ無理だけどさ。


 どちらか選べと言われたら、オレは今の生活を選ぶ。




「新たな夫婦に神の祝福があらんことを」


 厳かな儀式が終わると、村の広場で宴会となる。


「うわあ。これ凄い。本物みたい!」


「貴族様みたいだな」


 オレ達から新婚さんにサプライズとして、式の様子を撮影した写真と動画をプレゼントすることにした。 


 一般的にこの世界では写真はないらしく、貴族ならば絵画にして生涯残すらしいけどオレ達なら簡単だからね。


 花嫁の父は写真を見て泣いてる。


 花嫁の母は何年か前に亡くなったようで、娘の晴れ姿を見せてやりたかったのだろう。


「それじゃあ明日にでも、墓参りに行きましょうか?」


「えっ……でも」


「飛行船ならすぐですよ。ついでに新婚さんに旅行をプレゼントしますから」


 亡き母やご先祖様に結婚を報告して、前々から計画していた通り新婚旅行に連れて行ってあげよう。


 王国は嫌な予感がするから帝国で。


「すげー、飛行船なんか一生に一度乗れればいいのに。流石は異邦人。異邦人って伝説だとみんな奥さんが多いもんな。ああやって女性を口説くのか」


「いいなぁ。私も村長さんの奥さん。ううん。お妾さんでもいいわ」


「ちょっと!? マリ! オレとの約束は!?」


「ウフフ。冗談よ。流石に四ヶ月に一回しか、夫婦になれないのは寂しいもの。私は無理よ」


 あの、だから違うって言ってるんですけど?


 なんかここの人達って、異邦人の男は女好きだなんて妙な先入観あるみたいだけど、前に来た人達何したの?


 それと何人かから少し熱い視線を向けられたけど、エル達を見たら熱い視線が消えた。


 オレは無実なんだけどなぁ。


「ねえ、そんなに多いと一緒に寝られないわよね? 夜はどうしてるの?」


「一晩に何人か一緒に寝れば問題ないよ」


「凄いわね!」


 それとジュリア。クリスティーナ様に変なことを教えない!


「アタシは司令の為に言ったんだよ。こんだけ女が居るのに、何もしてないなんて男として恥だろ。不能だと思われたいのかい?」


「そういう問題じゃないだろ?」


「馬鹿だね。こんな世界で草食系なんて評価されないよ」


 ジュリア。絶対遊んでるよね。


 他のみんなも、さも当たり前のように妻のふりをしない!


 もっとこう男女の友情とか信頼とかあったよね?


「自業自得だと思う」


 トドメはケティに刺された。


 自業自得なんだけどさ。それは理解する。


 でもさ。


「大丈夫。新しい人を増やしても私達は受け入れる」


 違うのに。


 ハーレムは夢であってリアルで作るような甲斐性なんかないのに。


 解せぬ。


 何故こうなった。


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