第86話・閑話・ジョニーの旅路

「姉ちゃん世話になったな」


「ジョニー。行くのね」


「元気でな」


「本当にありがとう。いつでも来てね。私……待ってるから」


 一方ヴェネーゼを出たジョニーは愛機であるシューティングスター号により、アレックス達とは違う別の国を旅していた。


 若いエルフの美女と別れの挨拶をするジョニーだが、女性は悲しげな瞳で送り出す。


 異世界での生活もすっかり板についた様子のジョニーは、最後に美女が求めるままに別れのキスを交わして歩き出す。


 ちなみにジョニーは何故か困ってる女性によく出会うようで、ヴェネーゼを出てすでに三度も女性を助けていた。


 当然ながらいい伴侶を見つける為には努力を惜しまぬこの惑星の女性達は、強くて頼りがいのあるジョニーに対してお礼と称して迫り一夜の恋人になっている。


 ジョニーも旅の途中だからと一度は断るが、それでもと言われると女性を拒否する男ではないので抱いていた。


「さあ。行こうか。相棒」


 この日も一人の女性を助けたジョニーは、まだ見ぬ世界を求めてシューティングスター号で飛び立つ。


 彼は謎の小型空中船に乗る男として、一部の地域ですでに有名になっていた。


 どうやらシューティングスター号を隠す気が、すでにほとんど無いらしい。


 異邦人やら古代文明のオーパーツやら、時々現状の文明では理解できぬ物が世にでるこの惑星において、ジョニーのような存在は時々居るのが現実だった。




「ん? 未確認の敵性生命体だと?」


 そして砂漠の上を飛行してる時にそれは起こった。


 突然未知の敵性生命体がレーダーに現れ、ジョニーは慎重に確認に向かうことにする。


 ちなみに余談だがシューティングスター号の収集したデータは地味にアレックス達の役に立っていて、ほとんど戦闘しないアレックス達に代わり、魔物との交戦データが次々に得られるので宇宙要塞のアンドロイド達が喜んでるなんて話もあるが。


「ゲッ! なんだありゃあ!!」


 近寄らなきゃいいのに、わざわざ確認に来たジョニーが見たものは、シューティングスター号が虫にでも見えてそうなほど巨大なワームだった。


 しかもエサか何かと間違えてるようで、砂漠から顔を出したワームはシューティングスター号を丸飲みしようと、猛スピードで一気に迫ってくる。


「冗談じゃねえぞ!」


 何とか急旋回でワームのお口は回避したジョニーだが、攻撃する前にワームは再び砂漠の中に潜ってしまう。


 なお一般的にワームの巣になっているこの場所に、好き好んで来る人間は滅多に居ない。


 というか普通は絶対来ない場所である。


「ウォー!!」


 ただこの時ワームが真下から再度現れると、一気に迫って来てしまい、ジョニーはシューティングスター号のバリアを展開しつつ対地攻撃用のミサイルをぶちこむ。


「再生するなんて聞いてねえ!!」


 ミサイルは見事ワームの頭を吹き飛ばしたが、ワームはまだ生きていてそのまま頭を再生しながらシューティングスター号を飲み込んだ。


「舐めんじゃねえ!」


 並の生物ならばお陀仏だろうが、シューティングスター号のバリアまではワームの胃液も溶かせないようで、ジョニーはレーザーをワームの腹の中で撃ちまくる。


「なんだこりゃ?」


 結果としてワームは何とか倒せたが、残されたのはサッカーボールほどある茶色い魔石と、ワームが飲み込んだらしい財宝の山だった。


「指令室。聞こえるか? こちらジョニー。でかいミミズの化け物を倒したら、財宝が腹の中から出てきたんだ。悪いけど回収してくれ。補給の代金にしていいからよ」


「補給の代金って、前の魔石や素材でまだかなり余ってますよ」


「どうせ使いきれねえんだ。そっちにやるよ。それよりこの地下に財宝がある遺跡でもあるんじゃねえか?」


「少し待ってください。輸送機と偵察機を送ります」


「あいよ。昼飯食って待ってるぜ」


 あちこちで人助けをしたり魔物を倒してるジョニーは、その報酬や素材を持てる分以外は全て支援しているアレックスのアンドロイド達にあっさりとあげてしまう。


 おかげで補給は好きなだけ回して貰えるので本人は満足らしく、この日もワームの魔石や財宝を全てアンドロイド達にあげると、砂漠の地下に興味を持ったようで次は遺跡でも探検するかと期待に胸を膨らませていた。



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