27「また家庭訪問じゃね?」③
「うわぁ、神様ってドライ。あと、なんとなーく月詠先生もそんな感じ?」
「ええ、まあ。教師として生徒は大事ですし、神として夏樹くんたちのことは気にかけていますが、他は別にという感じです」
あっさり認めた月読に、夏樹が声を上げて笑う。
素盞嗚尊や天照大神がフレンドリーなだけで、月読命が神として普通であると夏樹も思った。
「少し、幻滅させていまいましたか?」
「いいや、そんなことはないですよ。人間だって、それほど他人に興味はないでしょう。最近の人間って、他人に興味があるんじゃなくて、他人からどう見られているのかにしか興味がないっていうか。そんな奴らばかりじゃないんでしょうけど、そんなもんじゃないですかねぇ」
「若いのに達観していますね。その辺りの話はまた後日ゆっくりに、として。そんなわけで、神々が出張って酒呑童子を殺すことはしないでしょう。それに、例えばですが、私が酒呑童子を殺すと、暇を持て余していた神が必要のないことをし始める可能性があります。基本的に神々は暇ですから。人間に、地上に興味がないくらいがちょうどいいんですよ」
最も、私のように人間社会で楽しく生活している神もそれなりにいますけどね、と強みは肩をすくめる。
神も魔族も、みんな自分の生きたいように生きているようだ。実に羨ましい。
「神ではなく、教師として……いえ、近所のお兄さんのような感覚でアドバイスをさせていただきます」
「はい」
「京都は関わらない方がいいですよ。酒呑童子は強い。単純な力が強いことはもちろんですが、配下が多く面倒臭いです。夏樹くんは、いらぬ苦労を異世界でしたのですから、自分から厄介ごとにこれ以上巻き込まれずともいいでしょう」
と、言いながら、月読がいたずらっ子のような顔をした。
「でも、夏樹くんのことだから巻き込まれて酒呑童子と戦う羽目になるかもしれませんね」
「……月読先生が言うと冗談に聞こえないんですけどぉ」
ふたりして笑う。
しばらく他愛無い話を続け、気づけば三十分ほど時間が過ぎていた。
「おっと、長く話し過ぎてしまいましたね。今日は権藤先生の新居で飲む約束をしているので、そろそろ失礼しますね」
「プリントどうもありがとうございました。権藤先生にもよろしく言っておいてください!」
「ええ、もちろんです。権藤先生も夏樹くんのことを気にしていましたから。――あ、そうでした」
「どうしました?」
公園を去ろうとした月読が振り返る。
「夏樹くんと都さんのおかげで、松島明日香さんとバスケ部員たちの不祥事が私たちにわかった件ですが」
「あー、はいはい。その件ですね。どうなりましたか?」
「松島明日香さんは、正式に転校が決まりました。親御さんは、クラスメイトへの挨拶もさせないそうです」
「あらら」
「そして、バスケ部ですが、廃部となりました。真面目にやっていた生徒には申し訳ないのですが……すでに他の保護者の一部に話が漏れているようで……」
「ありゃりゃ」
明日香に関しては聞いていたが、バスケ部の正式廃部は本当にざまあみろだ。
中学生でありながら、学業を疎かにし、不純異性交遊に勤しむなど言語道断である。
「と言う感じになりましたので、お伝えしておきます。それでは、――よい夜を」
そう言い残し、月読は現れた時のように音も気配もなく消えていった。
「相変わらず怖い人だなぁ。すさすさよりも絶対強いっしょ。瞬殺される自信あるわー」
月読実力が相変わらず測れないことに、少しだけ冷や汗をかいたものの、気を取り直して帰路についた。
「ただいまー! どぶろくと、おまんじゅうと、八つ橋のお土産があるよー!」
〜〜あとがき〜〜
ようやく小梅さんと銀子さんの出番ですね!
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