10「招かれざる客じゃね?」③
「おうおう、威勢の良い兄ちゃんたちだな。だが、なんで人間が妖怪の里にいるんだ? つーか、そっちの激昂している兄ちゃんは人間か?」
巨漢の男が興味深そうに祐介を舐めるような視線を向ける。
祐介は臆することなく、声を荒げた。
「僕が誰だって? 知らないなら教えてあげるよ!」
「お、おい。佐渡、余計なことを言うなよ」
「僕は妖怪の護り手。いや、全亜人さんの守護者にして勇者! 佐渡祐介だぁああああああああああああああああああああ!」
遠巻きに伺っている妖怪たちが、ぱちぱち、と拍手をした。
千手は頭痛を覚えて、眉間を揉んだ。
夏樹もそうだが、もう少し異世界帰りの勇者であることを隠してほしいと思う。
祐介だって、異世界に召喚され『大地の勇者』として戦ってきた経験があるのだ。日本の霊能力者とは、その質も、力も違う。
目の前にいる霊能力者がどこの誰かわからないが、妖怪の里に招かれてもいないのに平然と入ってくるような奴を相手に、簡単に身分を明かして良いはずがない。
最悪の場合は、利用される可能性だってある。
(まあ、由良のバックを考えると、まず利用は無理なんだろうけどな)
警察、魔族、神、そして宇宙の神がいるのだ。
普通の霊能力者では太刀打ちできないのは間違いない。
「よくわからん人やね。……別にいいけど、君は人間なん? 魔力なんてもん持っとるってことは、少なくともまともな人間やないやろ?」
「やべ……こいつら関西方面から来やがった。まさかとは思うが、安倍一門じゃないだろうな?」
「知っとるんなら早い。ボクらは、安倍一門やよ」
「……マジで来やがった。修学旅行編まで京都で大人しくしてろよ!」
「なにを言っているんかわからんのだけど――妖怪に与するなら、殺すで?」
濃密な殺意が少年から吹き荒れる。
常人であれば、気絶してもおかしくないほどの殺気だった。
なによりも面倒臭いのが、少年からは妖怪への憎しみを感じられた。話し合いでどうこうなるとは思えない。
「安倍一門がこっちにくるってことは、院に敵対するってことでいいんだな?」
「君ら、ボクらが院を怖がるなんてこと思ってるん? 霊能力を持っているだけで一人前気取りの雑魚どもが、子供ん頃から血反吐吐いて戦っとるボクらと同列だと思うなら、ボク……笑ってしまうで」
「おいおい、御託はその辺にしておこうぜ。なあ、兄ちゃんたち。俺たちは、お前らじゃなくて妖怪に用があるんだよ。そこを退けば、見逃してやる。邪魔をするなら、妖怪の前に、お前らを相手にするだけだ。さあ、返事は?」
巨漢の男に尋ねられ、千手と祐介は中指を立てた。
「おとといきやがれ」
「ぶぶ漬け出してやるから、帰ってほしいな!」
巨漢の男は、にやり、と笑う。
まるで千手たちのこの答えを待っていたようだった。
「いいぜ、いいぜ! 俺は、妖怪よりも人間をぶっ潰すのが好きなんだよ! 強い奴は大好きだぜ! さあ、さあ、喧嘩だ! 前菜にしてやるぜ!」
「抜かせ。こうなったら、俺たちで潰すぞ。覚悟はいいか、佐渡」
「妖怪さんたちの敵は僕の敵だぁあああああああああああああああああ!」
「絶好調だな、佐渡! そんなお前がおっかなくて、今は頼もしいぜ!」
巨漢の男は嬉しそうに、少年は苛立った様子で一歩踏み出す。
――安倍一門との戦いが幕を開けた。
〜〜あとがき〜〜
その頃、夏樹くんは。
夏樹くん「なーんか嫌な感じがする。おじいちゃん、行こうか!」
河童さん「お待ちください、由良様」
夏樹さん「河童さん!」
河童さん「先日、仲間が助けていただいたそうで。心より感謝します」
夏樹くん「気にしないでください。俺は河童さんを守るために勇者になったようなもんですから」
ぬらぬら「さすがにそりゃねえだろ」
河童さん「そんな夏樹さんをおもてなししようと、王からこちらを」
神輿さん「やあ」
夏樹くん「――っ、ま、まさか河童さんたちに担いでいただけるんですか?」
河童さん「もちろんです。さあ、お乗りください!」
夏樹くん「生きててよかった!」
ぬらぬら「そこまで!?」
なーんて、やりとりがあったとかなかったとか。
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