第48話 非常識な非常口

 ぐぉぉぉぉ、スゥスゥと二人のダンジョンマスターの寝息が響き渡る。

 ドラゴンもドライアドも普通に寝るんだな。


「結局俺の出した酒のほとんどを飲みやがったよこの二人……」


「えーと、さすがに後でDPの補填を言い出すと思うので、ご勘弁くださいゼン殿」


 俺のぼやきにデュラハンのラハさんがそう答えた。


 今は宴も終わり、ルナも〈ルーム〉に帰ってスキルを覚えるために光る繭の中で眠っている。


 俺は片付けをある程度終わらせてから、ラハさんと差し向かいでテーブルに着き、のんびりと二次会をやっている所だ。


 俺の視線の先には、ホムラとリアが二人して触れ合い魔物園の芝生の上で大の字で寝ていて……仲良しか?


「DPは別にいいんですけどね、火竜のホムラならまだ分かるんだけどリアも酒好きとは思わなかったですよ」


「マスターリアは誰かと飲むお酒が好きなんですよ、一人ではほとんど飲みません」



「なるほど? まぁまた仕入れておきますよ、実はまだまだ色んな種類があるんです」


「なんと! ゼン殿の世界はすごいのですね……確かにこのお酒も美味しいですし」


 そう言ってラハさんの体さんが苦労して生首に飲ませているのはハイボールだ。


「あ、これ使ってみてください、使い捨てなのでなくなったら言ってください」


 ラハさんに〈インベントリ〉から出した使い捨てのストローを袋ごと渡してみた。

 ルナの飲み物用にたくさん買ってあるので、一袋ぐらいどうとでもなるのだ。


 ラハさんはストローを不思議そうに見ていたがそれを使うや否や。


「ゼン殿! これは素晴らしいな! いつもいつも零してしまい体には迷惑を掛けて申し訳ないと思っていたんだが、これなら問題なく飲める……うん美味い!」


 ラハさんだけでなく体さんも喜んでいるようでよかった、それならデュラハン用に便利グッズでもプレゼントしようかねぇ……首が外れている人用の商品なんて地球にはないけど。


 何かないかなぁと俺はダンジョンメニューで色々と探してみる。

 あ、これとかどうだろうか。


 それを購入するとテーブルの上にアイテムが落ちてくる。


「これも使ってみってくださいよラハさん……あれ? どうしました?」


 ラハさんが俺の方をびっくりと大きく目を見開いて見てきていた。

 体さんの動きも止まってしまっているね、何事?


 今出したアイテムが気に入らないんだろうか?

 だがしかし、ちゃんと説明を聞いてからにして欲しいものだ。


「これはですねラハさん、サッカーボールを入れて運ぶ袋でして、これなら安全に生首を運べるかと思いまし――」

「今ゼン殿は何をしたのだ……」


 むぅ話を聞いてくれないようだ……今何をしたかって?


「メニューで買ったアイテムの説明をしている所ですけど」


「そうですよ! 何故ここでメニューを使えて尚且つアイテムが出て来るのですか! ここはマスターリアのダンジョン内ですよ?」


 あ、そうか。


「あーえっと〈非常口〉っていう〈ルーム〉スキルの拡張を手に入れた話はリア達に話したんですが、ラハさんも聞いてました?」


 ラハさんはコクリッと頷きを……体さんが生首をカクカクと揺らして頷きを表す。

 ……ラハさんが気持ち悪そうにしているから、やめて差し上げて?


「それでこれって緊急で逃げる事に使えるのですけど、扉を俺の体に沿わせて出現させてるんですよ、しかも見えないタイプを」


「それは聞いてましたけど……」


 ラハさんと体さんは、お互いに首と体を傾げて分からないという事を表現してくる。

 ちょっと可愛いなおい。


「まぁ聞いてくださいラハさん、そしてその扉はコアの側に通じている訳で、スキルを中途半端に出した状態、そうですね、俺の胸のあたりにほんの少し出した状態で止める事が出来るんです、まぁそれだと俺の魔力を消費し続けるんですけど、扉を小さくすればするほどその持続させるための力の消費量は少なくなるんです」


「ゼン殿……まさかそれで?」


「そうです、針の先程の扉を維持すればダンジョンコアの側にいると判定されて、メニューも使えますし購入したアイテムのお届けも出来ちゃうんですよ、しかもです」


「まだ何かあると? ゴクリッ」


「これを発動したままならば〈ルーム〉の側にいると判定されるので、〈入口〉を開けっ放しにしたままダンジョンで繋がっていない遠くまで移動する事も可能なんですよ、つまり、お出かけをするたびに〈ルーム〉の外に作ったダンジョンを一々閉鎖しなくてもよくなります」


「……なんですかその有り得ない性能は……ゼン殿の弱点だった部分がそれで解消されてしまうじゃないですか……」


「まぁ今は維持しておくべきダンジョンなんてないから意味のないスキル効果ですよ、精々こうやって何処でもメニューが使えるってくらいです、あはは」


 ラハさんの体さんがラハさんの首のオデコに手をあてている、熱でもあるの?


「……ゼン殿、自分の発言がいかに常識外れか自覚してください……」


「む? 俺、何かおかしな事言っちゃいましたか?」


「いいですかゼン殿、貴方は今こう言ったのです、ダンジョンメニューが使えると、これを良く考えてみてください」


 ふむ……えーと何処でもダンジョンメニューが出せたら……買い物がいつでも出来る。

 後は……出先で倒した魔物をコアメニューで解体とかも出来るな。

 それと……魔物を召喚してその場にダンジョンの配下戦力を呼び出せちゃうか?


 ふむ……他にもメニューの便利機能とかを全部使えちゃう訳か……。


「……控えめに言ってぶっ壊れスキルじゃないですかこれ?」


「やっと気づきましたか、他のダンマスに知られないようにしてくださいね、他人のダンジョンでダンジョンメニューが使用できるなんて知られたら……その時は私と夫婦になりましょう」


「なんでやねん!」


 ラハさんが真剣な口調で話すからつい俺も真剣に聞いていたのに、急に変な落ちを付けてきたのでつい突っ込んでしまった。


「相手のダンジョンの領域を中から奪う事が出来るんです、危険視されたら首を落とされますと言っているんですよ」


「ああ、なるほど……確かにダンジョンバトルで外側から浸食していくならまだしも、いきなり中でダンジョンが食われたら嫌だよな……そこに転移陣とか置いて魔物を送り込んだりとか、俺はまぁ扉で送り込めちゃうんだけど……尚やばいですねこれ」


「そうです……だからマスターリアも何度もぶっ壊れユニークスキルだと言っておられるのです、今回の事でそれがさらに酷くなりましたし、しかもコアという弱点が周りからは確認出来ないんですよ……」



 そっかぁ……俺にはまだ大した戦力がないからあれだけど、自由に動ける転移陣みたいな物だもんな。

 これはやべー、大人しく自重……ばれないように使うしかないな。


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