第38話 甘いもので雇えてしまう、フェアリーの用心棒


「じゃあピクシーの木に行こうか!」

 フェアリーの木から出るとピクシーたちが木の上に複数の転移魔法の光の球を浮かべた、その内の一つにぼくとフィリオーネとリリオーネとフロレーテはまとまって入った。

 転移魔法の光の球から出ると、すでに上空に大ガラス(体長160センチ翼幅300センチ)が飛び回っており雨(おそらく魔法の)が降っていた。

 大ガラスたちは次々とピクシーとインプの上を取り電撃を放って高度を下げさせようとしている、それをピクシーとインプは同じく電撃を放って止めさせようとするが、大ガラスは数と体格でかわるがわるせまり着実にピクシーとインプの高度を下げさせていく。

「フェアリーのみんな!大ガラスを攻撃して!」半径1キロメートルに自分の声を届けて相手の声も聞こえるようにする魔法でフェアリーに指示をする。

 ぼくとフィリオーネとリリオーネとフロレーテも近くでピクシーとインプを追いかけている大ガラスたちに近付き、電撃を放つが数が多くてうまくいかない。

 そのうち1匹のピクシーが木に近づいた瞬間、なにか高速の物がピクシーにあたり巻き込んで引き寄せ、体の色を木の枝に擬態した大カメレオン(体長2メートル)にパクリと食べられた。

「ああ!フェアリーのみんな!木に擬態した大カメレオンに食べられてるピクシーとインプの救出を優先して!」半径1キロメートルに自分の声を届けて相手の声も聞こえるようにする魔法で、指示を上書きする。

 ぼくとフィリオーネとリリオーネとフロレーテもさっきピクシーを食べたカメレオンの所に行き、カメレオンだけにダメージが行くようにした電撃を一斉に浴びせる。

「チャリン」カメレオンから、ピカピカの銅貨見たいなマナチップがフィリオーネとフロレーテに飛んでいき音を鳴らして吸い込まれていった。

 落ちる前にみんなで大カメレオンの死体を支えて口を開き、食べられていたピクシーを引きずり出す。

 全身粘液ぜんしんねんえきまみれで服と羽がボロボロになっているので、身体をピカと光らせて装備品を含めた全身クリーニングの魔法できれいにしてあげる。

「羽と服ボロボロになってるけど、自分で飛べそう?」と聞くとピクシーは身体を光らせる事もなく羽と服を新品にした。

「全身の肌がヒリヒリするけど、たぶん大丈夫!」とピクシー。

 そんな事をしている内に地上ふきんに追い込まれたピクシーとインプが、地上で待機していた大ガエル(体長3メートル)に食べられ始めた。

「フェアリーのみんな!今度は地上にいる大ガエルたちに、ピクシーとインプが食べられてる!こっちも救助して!」半径1キロメートルに自分の声を届けて相手の声も聞こえるようにする魔法で、また指示をする。

「フロレーテとリリオーネの組とぼくとフィリオーネの組に分かれて、ピクシーとインプを助けよう!いいかな?」

「「「いいよ!」」」とフィリオーネとリリオーネとフロレーテ。

「ぼくとフィリオーネはあそこの大ガエルからインプを助けるから、フロレーテとリリオーネはあっちの大ガエルからピクシーを助けて! 解散!」

 フィリオーネとぼくで大ガエルだけにダメージが行く電撃を食らわせる、すぐに大ガエルからぼくとフィリオーネにピカピカの銅貨みたいなマナチップが飛んできて「チャリン、チャリン」と音を鳴らせて身体に吸収されていった。

 またさっきのように今度はインプを助けて「大丈夫?」と聞くと、「ピクシーの木の中で休憩してくる」と言うので、なんとなくピクシーの木がありそうな方にインプを送っていく。

 ピクシーの木のすぐそばまで来るとピクシーの木の方からまた高速の何かが飛んできてインプを巻き込み引き寄せて木に擬態した大カメレオン(今度は体長3メートル)に、また食べられた。

 すかさずぼくとフィリオーネが大カメレオンだけにダメージが行く電撃で大カメレオンを殺し、食べられたインプを引きずり出す。

「もうやだ!なんで2回も食べられるの!」とインプ。

「大きいサイズの大カメレオンの縄張りになってるって言ってただろ。ほらぼくたちは周りの大カメレオンと大ガエルと大ガラスを駆除してからピクシーの木に入るから、先にピクシーの木の中で休憩していて!」と言って装備品を含めた全身クリーニングの魔法できれいにしてやると、「がんばってね!」と言ってインプはピクシーの木の中に入っていった。

 まずはピクシーの木に取り付いて木に擬態した大カメレオンたちをぼくとフィリオーネで駆除していく、無抵抗でやられていく姿に“これでいいのかな?”と疑問を感じながら。

 大ガエルと大ガラスの駆除も逃げまどう大ガエルと大ガラスを一方的に駆除すると言うものだった、まあピクシーとインプが追いかけまわされていたのは変わらないが、それもピクシーとインプがピクシーの木に避難しきった所で大ガエルと大ガラスと小さめの大カメレオンは逃げて行った。


「ここにピクシーが住むのは、無理があるんじゃないかな?」ピクシーの木の中でピクシーたちに意見を聞く。

「だからフェアリーから、フェアリーの木を奪ったんじゃない!」とピクシーの1匹。

「だからってフェアリーから、フェアリーの木を奪っちゃだめだよ!一緒に住めばいいんだから!」

「ごめんなさい。おわびに10種類のジャムの大ビン合計10本あげる」とピクシーの1匹。

「え?それって留守番していてだまされたフェアリーのなんじゃ?」

「あの子たちにはもうおわびしたから、これは別のおわび」とピクシーの1匹。

「そうなんだ?じゃあ、もらっておこうかな?」

「アルヴィン!もっててあげる!」とリリオーネ。

「うん、まあ、全員に配るには少ないし、食べていいよ!」

「やった~!食べていいって!」とリリオーネ。

 周りにフェアリーが群がりジャムのビンにスプーンを突っ込んですくって食べるのだが、あっと言う間に手と顔をベトベトにしたフェアリーが増えていく。

「フェアリーのみんな~~!ジャムは少ないから他の子の事も考えて!1種類につきスプーンひとすくいで他の子にゆずって~~!インプとピクシーのみんなも、ジャム食べてもいいよ~~~」大声で、フェアリーとインプとピクシーに指示をする。

「(中略たくさん)「は~~い」(中略たくさん)」フェアリーとインプとピクシーが返事をする。

インプとピクシーにもジャムを食べる許可を出すと、ほとんどのインプとピクシーもフェアリーたちと一緒にジャムの列に並んだ。

 10種類のジャムの大ビン合計10本はあっと言う間にカラになったが、ジャムを持っているピクシーたちやフェアリーたちがジャムのビンを取り出してふるまいはじめると、ジャムを持っていないフェアリーやインプやピクシーたちは色々なお菓子を取り出し、お菓子パーティがはじまった。

「ピクシーのみんな~~!お菓子食べたら移住するよ~~!」

「ちょっと待って!ここは故郷なんだから移住なんてしないわよ?」とピクシーの1匹。

「え?でもこんなところ住めないじゃん!」

「大丈夫よ!今までだって住んでたんだから!それに大カメレオンも大ガエルも大ガラスも、たくさんやっつけてもらったし!」とピクシーの1匹。

「たくさんやっつけたって言っても、焼け石に水じゃない?森中にいるんでしょ?」

「そうだけど!大丈夫だから!」とピクシーの1匹。

「そう言えばピクシーたちってバッタやイナゴ捕まえて、農家からおこずかいもらってるんだよね?」

「そうだけど何?」とピクシーの1匹。

「フェアリーたちに甘いものを買い与えて、護衛として雇うぐらいのお金ある?」

「あるよ!あちしたちお金貯めてるから!どうする?ピクシーのみんな!50匹ぐらい雇っちゃう?」とピクシーの1匹。

「(中略たくさん)「雇っちゃおう!」(中略たくさん)」とピクシーたち。

「じゃあ、フェアリーのみんな!ここのフェアリーの木でピクシーたちの護衛をしてもいいよって子たちは、手をあげて!」声をはりあげてフェアリーたちに呼びかけるが、手をあげるフェアリーはいない。

「甘いものもらえるんだよ?」

「甘いものならアルヴィンの所でももらえるし、誰も手をあげないと思うよ?」と近くにいたフェアリー。

「フェアリーのみなさん!お金は無限ではありません!昨日配ったお菓子の量、ちょっと少なめだなとは思いませんでしたか? あのお菓子は全部で、迷宮大金貨4枚分(約4百万円分)あったのです! これから1万匹のフェアリーが生まれる事を考えても、将来の事を考えてお金をためておく事も考えても、いくらあっても足りません! ぼくアルヴィンの所にいても、安定して甘いものが食べられるとはかぎらないのです! そこで今回のピクシーたちを護衛する任務です! 今まではフェアリーからフェアリーの木を奪うために使っていた予算を解放して、フェアリー好みの甘いものをふるまってくれるそうです! この護衛任務は今まで嫌いあっていたフェアリーとピクシーとインプが、友好を結ぶチャンスです! さあ!護衛任務は50匹です! 護衛任務の希望者がたくさんいた場合、順番にこうたいしながらぼくの家とここの護衛任務で行き来するのもいいでしょう。さあ! 護衛任務の希望者は手をあげてください!」と言った瞬間、466匹のフェアリーが手をあげた。

「護衛任務の順番は、今手をあげたフェアリーたちで話し合って決めてください! ちゃんと戦力が均等になるように決めてくださいね!」


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