第122話 【大会に向けて・2】


 迷宮で一夜過ごした翌日、朝食を食べた俺達は昨日と同じように俺と師匠は後ろで見守りながら、皆は迷宮探索を続けた。


「アレンさんが本気で戦う相手って、どんな相手ですか?」


「俺が本気で戦う相手?」


 お昼休憩の際、レインが師匠にそんな事を聞いた。

 師匠の本気、出会ってからそれなりに経つが師匠が本気で戦った姿は見た事が無いな。


「ここ最近は本気を出して戦っては無いな。アルフの師匠になる前は、それこそアースドラゴンとか倒してたからその時は本気を出していたぞ」


「アースドラゴンって、ドラゴン族の中でも防御力が高くて倒すのが困難だと聞いた事があるんですが、アレンさんは一人で倒したんですか?」


「まあ、そもそもそのアースドラゴンは俺の知り合いだからな、腕試しがてら戦っただけだ」


「ドラゴン族にも知り合いが居るって、師匠は本当に凄いですね……」


 ドラゴン族の知り合いが居ると言った師匠に対して、俺がそう言うと皆も俺と同じ意見なのか頷いていた。


「そのアースドラゴンの前で言うと、アルフの従魔になったフェルガともよく戦ってたぞ。あいつとは互いに本気で戦い合って、力を高め合っていたからな」


「そんなフェルガですけど、ここ最近は従魔の異空間で惰眠を貪ってますけどね……意識は繋がってるので分かりますが、ここ数日はずっと寝てますよ」


「元々、寝る事が好きな奴だったがアルフの従魔になってそれに磨きがかかったからな……クロの方はどうなんだ? あいつは偶には運動してるイメージはあるが」


「まあ、クロの方が異空間で体は動かしてますけど、フェルガと同じくほぼ寝てますね」


 従魔になる前は、あれほどカッコよく見えてフェルガとクロだが、従魔になってからずっと惰眠を貪ってる姿しか見てない。

 その為、俺の中で二匹の従魔達は駄犬と駄竜というイメージになってしまっている。


「いざという時はやる奴等だと思うが、そんなになってたとはな……今、フェルガは呼び出せるか?」


「ちょっと待っててください」


 師匠からフェルガを呼ぶように言われた俺は、異空間で寝てるフェルガに声を掛けて外に出した。

 フェルガは話していた通り、寝ていた様で眠そうな表情をしていた。


「我を呼ぶとは、何か用があるのかアレン?」


「お前、アルフの従魔になってから自堕落な生活を送ってないか?」


「……そんな事はないぞ? いざという時の為に体力を残しておいてるんだ。アレンも言っていただろ、アルフを守ってほしいと」


「……そのポッコリと出たお腹で威厳を出そうとしても無駄だぞ?」


 この数ヵ月、食事をしたら直ぐに異空間で寝ていたフェルガのお腹には贅肉がしっかりと付いて、ポッコリとお腹が出ていた。

 師匠から指摘されたフェルガは、顔を真っ赤にすると「煩い!」と吠えたが師匠は呆れた表情をしていた。


「アルフ、クロも呼び出してくれるか?」


「わかりました」


 クロも呼び出す様にと言われた俺は、クロにも声を掛けて外に出て貰った。

 フェルガとは違い、多少動いていたクロは特に体に変化は無かった。


「クロの事も駄竜と呼ぼうと思っていたが、ちゃんとクロは動いていたみたいだな……これからフェルガの事は、駄犬と呼ぶことにするか」


「駄犬とはなんだ! 我は、フェンリルだぞ!」


「だったら、そのお腹は何だ! アルフに食事と寝床を提供して貰ってる癖に、惰眠を貪り訓練を怠った証拠だろうが!」


 フェルガの反論に対して師匠がそう言うと、フェルガは言い返す事が出来ずに悔しそうな表情をした。


「フェルガ、おめでとう。正式に駄犬の称号を貰ったな」


「煩いぞ、クロも同じだろう!」


 クロからも煽られたフェルガは威嚇するが、クロはそれに対して全く反応を示さず「駄犬はよく吠えるな~」と更に煽っていた。


「師匠。どうしますか、フェルガ達言い合いを始めましたけど」


「……折角だし、フェルガには動いて痩せさせた方が良いから、戦わせるのはどうだ? あの状態のフェルガと俺が戦っても、俺が圧勝しそうだからな」


「今なんといった? 我に圧勝するだと?」


 クロと言い合っていたフェルガは、師匠の言葉が耳に入ったのか言い合いを止めとこっちに寄って来た。


「我はフェンリルだぞ、多少体を動かしておらんかったがそれだけで人間であるアレンに圧勝される程、力は落ちておらん!」


「だったら俺と一戦やるか? もし、俺に何も出来ずに負けたらこれから先は異空間で惰眠を貪る事は禁止にして、アルフの訓練に付き合って貰うぞ?」


「良いだろう。我が勝ったら、これまでの侮辱を誠意を込めて謝罪をしてもらうぞ」


 こうして師匠とフェルガの戦いが決まり、迷宮内で師匠達が戦うと迷宮が崩れそうと考え、迷宮の外へと俺達は出た。

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