第77話 【代償・1】


 学園の試験から三日が経ち、遂に試験結果が返される。

 その為、朝からクラスメート達はソワソワしていて、勿論アリスも同じように試験の結果が心配の様だ。


「それでは皆さん、試験結果をお返ししますね」


 先生は教室に来ると、そう全体に聞こえるように言うと魔法で一人一人に封筒を送り、俺の所にも封筒は届いた。

 周りではその封筒に対して拝むように祈ってる人達が居たが、俺は気にせず受け取って直ぐに中身を確認した。

 封筒の中には、一枚の成績の結果が書かれた紙が入っていた。


「アリスはどうだった?」


 そう隣のアリスに聞くと、アリスは紙を見つめたまま固まっていて、俺の声に少しだけ反応した。


「あ、アルフ君……これ、見て」


 そして固まっていたアリスはギギギと徐々に俺の方に首を向け、か細い声でそう言いながら俺に結果が書かれた紙を見せてくれた。

 どれどれ……お~凄いな、最高点数90点を超えてて、一番低くても70点台となっていた。


「アリス、凄いじゃないか」


「こ、こんなにいい成績取ったのはじめてだよ……アルフ君、本当にありがとう」


 アリスは震えながら、俺に対してお礼を口にした。


「勉強は見てあげたけど、頑張ったのはアリス本人だからね。自身を持っていいと思うよ」


 そう俺はアリスに言うと、アリスは俺の成績が気になったのか「アルフ君の成績も見ても良い?」と言ってきた。

 俺はそんなアリスに「どうぞ」と言って、自分の成績の書かれた紙を渡した。


「……アルフ君って、本当に凄いね」


「いや~、簡単だったからね。わざと間違えようとも思ったけど、皆が必死に頑張ってるのに一人だけ手を抜いたら駄目だと思って、本気で解いた結果だよ」


「その結果が全ての教科満点なんだね……」


 アリスのその言葉は、成績の確認の為に静かだった教室の全員に聞こえたらしく、皆が一斉に俺の方を振り向いた。


「あちゃ~、アリス。もう少し声量は抑えて欲しかったかな」


「あっ、ごめん……」


 周りが反応した事に気付いたアリスは、そう言うと視線を感じてシュンッと小さくなった。

 それから先生は騒がしくなった生徒に対し、手を叩き「お静かに」と言って静め。

 それから、先生による試験での難しい問題の説明が始まった。


「アルフ君、さっき満点って聞こえたんだけど本当なの?」


「うん。ほら、ちゃんと満点でしょ」


 授業が終わり、休憩時間になるとリサとレインが俺の席の近くにやって来て聞いて来たので俺は二人に紙を見せると。


「うわっ、本当だ……」


「こんな成績表見た事が無いよ……全部満点の数字で、全体の順位が一位って……」


 レインとリサは、俺の成績を見ると驚いた顔をしてそう言った。

 それから他のクラスの人達も俺の成績が気になっていたのか、二人の後ろから覗き見て、確認した者達は驚いた顔をしていた。

 そうしてその日は一日、クラスの人達からの視線を異様に感じつつ学園生活を送った。


「アルフ君、ごめんね。私のせいで皆にバレちゃって」


「大丈夫だよ。どうせ、明日になったら皆には知られていたと思うからね」


 学園の試験結果は、上位100名は学園の掲示板に掲載されるらしい。

 その為、俺の成績は商人科でトップの点数の為、必ずその掲示板に張られるだろう。

 そうなれば、隠しておくなんて不可能だ。


「って、あれ? なんか馬車がいつもより大きくない?」


 校門まで話ながら俺とアリスは来ると、いつも乗ってる商会の馬車よりも少し大きな商会の馬車が停まっていた。

 俺達はその場所の近くに行くと、馬車はいつもとは違うが御者さんはいつもの人だ。

 しかし、普段は馬車には誰も乗ってないのに今日は、エルドさんが乗っていた。


「なんでお爺ちゃんが居るの?」


「アリスの成績が気になって直ぐに聞こうと思って、迎えに来たんだ」


 エルドさんは笑顔でそう言い、俺とアリスは馬車に乗り込んだ。


「それで、アリス。試験の結果はどうだった?」


 そうエルドさんが聞くと、アリスは成績の書かれた紙をエルドさんに見せた。


「ッ! 90点越え!? それに、最低点数も70点台なんてアリスよく頑張ったな!」


「えへへ、アルフ君の教え方が上手だったからだよ。凄く勉強も楽しくて、分からない所が分かるようになったんだ」


 アリスの成績を見たエルドさんは驚き、アリスの頭を撫でながら褒めた。

 そんなエルドさんに対して、アリスも嬉しそうな顔をしながらそう言った。


「これ程の成績であれば、留年という話も無くなるだろう。本当にアルフには感謝をしているぞ」


「アリスの頑張りもあったおかげですよ」


「だとしても、それを支えて勉強を教えたのはアルフの功績だ。本当にありがとな、アルフ」


 エルドさんは俺に対し、頭を下げながらそうお礼を言った。

 その後、商会に戻ってくるとエルドさんは商会の人に対して、ルクリア家全員を呼び出す様に指示を出し。

 俺とアリスは、エルドさんにそのまま会議室へと連れていかれた。

 それから5分もしない内に、ルクリア家の人達が会議室へと集まった。


「アリスが居るって事は、成績を確認したんですね。お父さん」


「うむ、その事でお前達を呼んだ。アリス、さっきの紙を出してくれるか?」


 エルドさんからそう言われたアリスは、また成績の書かれた紙を出して家族全員に見せた。

 そして成績を確認したルクリア家の人達は、その点数の高さに全員驚いていた。

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