第16話 【秘密の訓練場・4】
「何でお前が、アルフの従魔になってるんだよ。アルフには【従魔】スキルは無いんだぞ!?」
「我も分からないんだ! 自分のステータスを見たら、アルフの従魔と書いてあったんだ!」
フェルガはそう叫ぶと、自分のステータスを表示させた。
すると、とんでもないレベルの数値やスキルが表示されていたが、一番驚く場所は【身分:アルフレッドの従魔】という所だった。
「何で我は従魔になっておるんだ!?」
「知らねえよ! 当事者はお前だろ!」
「分からないから、聞いておるんだ!」
再び始まった師匠とフェルガの言い合い、今度は俺も当事者であるが二人の言い合いが凄まじく、中に入る事は出来なかった。
なので俺は、師匠達が争ってる間に落ち着いてどういう訳か考え始めた。
「……やっぱり【従魔】スキルを獲得してる」
もしかしてと思い、ステータスを確認すると俺のスキルには【従魔】スキルが追加されていた。
しかし、不思議な点が一つだけある。
「なんでレベルが10になっているんだ?」
これまで〝剣術、水属性魔法、土属性魔法〟と複数のスキルを獲得してきたが、それはどれもレベル0からの始まりだった。
訓練を続けて、スキルレベルを上げていた。
それに対して、【従魔】スキルはいきなりレベルが10と最高レベルになっている。
「……もしかしてスキルが関係してるんじゃなくて、俺のこの見えない加護が何かしたのか?」
自分のステータスと睨めっこした際、やはり一番不自然な加護の一覧を見ながらその考えに至った。
さっきフェルガは、俺からは大地神の加護を感じると言っていた。
となると、もしかしたら【従魔】に関係する神様の加護を持っていて、それが何か力を作動してフェルガを従魔にしたのかもしれない。
「って、師匠達もそろそろ落ち着いてくださいよ! こんな所で、戦いを始めようとしないでください!」
今にも戦いが始まりそうな雰囲気の師匠達をそう呼び止め、この間に俺が立てた仮説を伝えた。
「多分、それが可能性として高いだろう。もしくは、神々が我をアルフの近くに居る様にするためにという可能性もあるだろうな」
「そんな神様がこの場を見て、決めたり出来るんですか?」
「しようと思えば出来ると思うぞ、神々は人を観察するのが好きだからな。我も何度か神と会った事があるが、人間の生活が見ていて一番楽しいと言っておったな」
そんなフェルガの言葉に、今もどこかから見てるのか? と俺は思いキョロキョロと周りを見た。
それから師匠とフェルガは、散々言い合って疲れたと言って一旦洞窟に戻って休む事にした。
「そう言えば、師匠。さっき、ステータスを見た時に【水属性魔法】が消えて【属性魔法(2):—】と変わっていたんですが、あれってどういうことですか?」
「そこは知らないんだな。スキルには色々種類があるが、属性魔法だったり耐性系は同じ種類として一つに統合されるんだよ。ステータスを開いた状態で、更にスキルの属性魔法を詳しく見ようとたら個別で見れるぞ」
師匠にそう言われた俺は、改めてステータスを表示させて【属性魔法】から更に詳しく見ようとすると。
元々、持っていた【水属性魔法】と秘密の訓練場に来て獲得した【土属性魔法】が表示された。
「こんな風になるんですね」
「普通はアルフみたいに沢山のスキルを習得出来ないから、あまり知られてないけどな。魔法が得意なやつとかだと、大体は複数の属性を持っていてこんな風にまとめられてるんだ」
「便利ですね。ステータスにこんな仕様があったなんて知りませんでした」
「沢山あっても見にくいだけだからな、そこら辺はステータスを作ってくれた神様に感謝しなきゃな」
そう師匠は言うと、やけ食いをしていたフェルガが俺と師匠の方へと近づいて来た。
「どうだ。落ち着いたか?」
「うむ……食事をしながら色々と考えたが、なってしまったものは仕方ないからな。清く諦めて、アルフの従魔として生きて行く事を決心した」
従魔とは魔物と契約している状態の事で、洞窟に戻ってきた俺は試しにフェルガを開放しようとした。
しかし、フェルガを開放しようとしても何らかの力が発動して、フェルガを開放する事は出来なかった。
「神々は、我をアルフの近くに置いておきたいのだろう。まさか、我が従魔になるとはな……」
「まあ、別にいいんじゃないか? ずっと欲しがっていた名前も手に入れたし、どうせここで生活をしていても一人で寂しい思いしてただろ?」
「別に我は寂しがってなどいない!」
「嘘つけ、俺が修行に来たらどんなに遠くに居ても直ぐに来てただろ?」
その師匠の言葉にフェルガは、顔を真っ赤にして「寂しがってなどおらん!」と叫び、洞窟が少しだけ揺れた。
それから、師匠とフェルガは言い合いを始め。
「また始まった……」
そう俺は、二人の喧嘩を呆れた表情で見つめ。
戦いに発展する前に、二人の仲裁に入って喧嘩を止めなきゃいけないなと思いつつ、俺は溜息を吐いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます