第12話 【師匠・4】
翌日、朝食を食べ終えた後、訓練場へと行くと既にアレンさんがベンチに座って待っていた。
えっ、かなり早く来たと思ってたのに、何でもう居るんだっ!?
俺は師匠を待たせた事に焦り、走ってアレンさんの近くに寄った。
「す、すみません。遅れました!」
「んっ? ああ、俺が早く来ただけだから、頭下げなくてもいいぞ」
アレンさんに頭を下げて謝ると、アレンさんはそう言って「訓練始めるか」と言って立ち上がった。
今日の訓練は昨日に引き続き、水属性のスキルのレベル上げをする事になった。
「本来であれば、スキルを手に入れたら魔物を倒しながら戦闘技術を学んで、スキルレベルと経験を積むのが正しいやり方だが。アルフレッドの場合は、この訓練方法が一番上がりやすいと思う。戦闘経験に関しては、後でいくらでも経験出来るからな」
「わかりました」
本来のやり方よりも、俺の場合は今の訓練が最適解だと言われて、俺はそれから桶に手を入れて昨日と同じ訓練を始めた。
昨日はスキルを手に入れる所からだったが、今はスキルを手に入れた状態だからか昨日よりも水を動かすのが簡単だった。
「アルフレッド。修行に集中しながらでも、話しながら出来そうか?」
「えっ? あっ、少しならできます」
訓練が始まって10分程経った頃、アレンさんから声を掛けられた俺は訓練に集中しながら、アレンさんと会話をする事になった。
「アルフレッドって、ついこの間まで貴族だったんだよな?」
「はい。そうですよ」
「それなのに、意外とここでの生活に慣れてるよな? 元々、質素な生活をしていたのか?」
アレンさんからそう言われた俺は、確かにここに暮らし始めて二日だけどもう大分慣れてきている。
「う~ん。元々は裕福な暮らしをしてましたけど、ここ一年は謹慎生活でかなり厳しい環境で生活していたんですよ。それで多分、鍛えられていたんだと思います」
「謹慎? お前、何か悪さでもしたのか?」
「いえ、俺がスキルを一つしか手に入れられなかったので、それで謹慎させられていたんです」
アレンさんは俺の事をまだ詳しく聞いていなかったのか、俺の境遇を知らなかったのでそう伝えた。
話を聞いたアレンさんは、驚いた顔をして「スキルが無いからって、そんな事を普通するか?」と言った。
「俺の家が変なだけだと思いますよ。他の貴族の家がどうしてるのかまでは知りませんけど、俺の様に無能だからって謹慎生活をさせるなんて聞いた事がないですから」
「俺も初めて聞いたよ」
それからアレンさんは、俺ばかり聞いたら悪いからと言って、自分の事についても色々と話してくれた。
「そろそろ休憩していいぞ、かなり魔力消費しただろ?」
「は、はい……」
あれから数時間が経ち、昼過ぎ頃まで集中して訓練を続けていた俺はアレンさんの言葉で手を桶から出してベンチに座った。
会話しながらでも集中して訓練をしていた俺は、使う魔力が少ないとはいえかなり魔力を消費していて頭が少し痛くなっていた。
「これを飲め。魔力回復薬だから、少しは楽になるぞ、ただ少し苦いからな」
「ありがとうございます……」
アレンさんが渡してくれた魔力回復薬を口にした俺は、一瞬その苦さに「うえっ」となったが我慢して全部飲み干した。
すると、徐々に頭痛が治ってきて少しだけラクになった。
「凄いな……俺が初めて魔力回復薬を飲んだ時は飲み干せなかった。アルフレッドは、我慢強いな」
「我慢は昔から得意なので」
「確かにな、あんな訓練方法が最適と言われてももって一時間だからな」
アレンさんは桶を見ながらそう言うと、再び俺に視線を戻して「才能に負けない程、努力できる奴なんだな」と褒めてくれた。
その言葉に俺は嬉しくなり、「ありがとうございます」と言葉を返し、照れた顔を見られないように俯かせて言った。
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