第82話現状分析

 2週間の外遊が終わり、俺は女王陛下に状況を説明した。軍縮の件も含めてだ。


「以上が、私が考えるグレア帝国の内情です。向こうはこちらを分断させようとしてくるでしょう。ただでさえ、統一から間もない我が国ですから。付け入るスキがあると考えているのです」


「では、クニカズ? あなたはどうすればいいと考えますか?」


「グレアはすでに諜報部門において、こちらよりも一歩進んでいます。向こうは正面からの衝突は、航空技術の差によって避けたいはずです。ですから、戦わずにこちらを分断させて弱体化させようとしてきます」


「そうね。私でもそうするわ」


「よって、こちらの弱点である諜報部門の強化は急務です。失礼ながら、ヴォルフスブルク王国の宰相も敵国に通じていた実情がありますからね。すでに、国内はスパイ天国になっている可能性が高いと思います。造船場という軍事機密の塊に敵国がアクセスできたことでも、わかりますからね」


 俺の提案に女王陛下を含む軍首脳部は頷いた。


「では、軍務省に情報局を創設します。もちろん、初代の局長は、クニカズ。あなたです」

 

「謹んで拝命致します」

 これでこちらも本格的な諜報機関を持つことができた。

 スパイ機関のトップになるのは緊張するな。

 自分で言ったことだし、こうなるのも仕方ない。


「では、あなたの部下ですが……なにか、希望はありますか?」


「そうですね。グレア語が堪能な人が欲しいです。あと、マッシリア語も……あと、駐在武官経験者も……」


 駐在武官とは、外国の大使館に派遣される軍人のことだ。外交と国防は切り離せない関係であり、外交の専門家が軍の専門家ではないので助言役として派遣される。もちろん、それは表向きで、裏では相手国の情報を集めなくてはいけないのだが……


 もちろん、向こうで仕事をするので、語学に堪能な軍人が多い。彼らは勉強熱心なので、部下になれば非常に頼もしいだろう。


 早期に情報機関を整備して、他国の介入を防がないといけない。2国間の冷戦期における諜報機関の重要性は、やはり米ソが証明している。両超大国は、CIA・KGBといった最強のスパイ組織を動かして、周辺諸国への介入をおこなった。もちろん、それを妨害したこともだ。


 ここから先は水面下の戦いも重要になる。



(前回までのあらすじ)


山田邦和はニートのため兄貴と喧嘩し、実家を追放されてしまう。

そして、ホームレスとなった彼はダンボールの妖精に導かれて、ゲーム世界に転生した。

妖精の加護を受けて、最強の魔導士となったクニカズは最弱国ヴォルフスブルクに仕官して、生き残りを図る。


大国・ローザンブルクの謀略に対してクニカズは空飛ぶ魔導士隊で対抗し、大番狂わせを起こす。クニカズの活躍によって、英雄・ニコライを敗死させ、大国・ローザンブルクとの講和を達成したクニカズは女王直属の部下として辣腕を振るう。


クニカズは、盟友であるクリスタと共に、革命的な軍事理論を完成させて、ヴォルフスブルクの近代化に尽力した。


ボルミア・シュバルツ両公国を軍門に降しグレアの介入を排除したうえで、ついにヴォルフスブルク地方の統一を実現したクニカズたちは、大ヴォルフスブルク帝国を建国した。


そして、クニカズはダンボールの妖精・ターニャと絆を深めたのだった。


ヴォルフスブルク保守派であり敵国とも内通していた宰相をも粛清したクニカズたちは、グレア帝国に匹敵する大国を作り上げるのだった。続いて、永遠のライバルであったザルツ公国もその強力な軍事力をもって併合する。クニカズは、新設された帝国軍最強部隊・ヴォルフスブルク帝国軍第1遠征旅団を率いてその圧倒的な戦略を披露した。


そして、大ヴォルフスブルク帝国とグレア帝国の冷戦がはじまった。

冷戦を勝ち抜くために、クニカズは「情報機関」の重要性を説き、その初代局長に就任する。


ダンボールの厚みがまた、1ページ。


(登場人物紹介)


クニカズ

階級:少佐→中佐→大佐→准将→少将

役職:ハ―ブルク要塞作戦参謀→軍事参議官室長兼第1航空魔導士隊隊長→軍務省作戦課長兼第1航空魔導士隊隊長兼中央軍主席参謀(航空)→ヴォルフスブルク帝国軍第1遠征旅団団長→軍務省情報局長


クリスタ

階級:少佐→中佐→大佐

役職:マンル地方軍後方参謀→軍事参議官室室長補佐兼第1班班長→軍務省作戦課長補佐(後方部隊担当)→ヴォルフスブルク帝国軍第1遠征旅団副団長


リーニャ

階級:少佐→中佐→大佐

役職:軍務省法務課係長(国際法担当)→ハ―ブルク要塞法務参謀(臨時)→ワル―シャ講和会議参加武官→軍務省法務課係長(国際法担当)→軍務省作戦課長補佐(戦力担当)→軍務省作戦課長


ラガ大佐(ヴォルフスブルク帝国軍第1遠征旅団機動部隊長)


知略:65

戦闘:83

魔力:51

政治:59

スキル:撤退上手・猛将・激励


ヴォルフスブルク王国に所属する女性の将軍。近衛騎士団時代のアルフレッドの側近であり、ヴォルフスブルク王国所属の武将の中ではアルフレッド・女王に次いで優秀な戦闘能力を持つ。

責任感が強くまじめで、猛将タイプ。

かなり優秀な武将だが、残念ながらヴォルフスブルク王国プレイではシナリオ開始から5年を経過しなければ、部隊を率いるほどの出世ができない。

彼女が登場するまで5年間耐えることができれば、ヴォルフスブルク王国3強がそろいゲームが一気に楽になる。

ゲーム的にはリトル・アルフレッドのような能力値だが、部隊の士気を上げることができるスキルを大量に持つため能力値以上に高い性能を誇る。特に撤退戦が得意で、被害を最小限に抑えつつ、敵に大損害を与えることが可能だ。

持久戦向けのキャラクターで、後方支援の天才・クリスタと組むことでより真価を発揮する。

ただし、グレア帝国宰相のような智謀キャラとは相性が悪く、何もできずにせん滅される危険性をはらんでいる。


グリツァー少将(南方方面軍司令)

知略:73

戦闘:77

魔力:71

政治:72

スキル:人格者・鼓舞・大器・堅実


大ヴォルフスブルク帝国の将軍。以前は、グール騎士団領に所属していた。

大ヴォルフスブルク帝国が成立したことで、所属が変わり、南方方面軍司令へと就任。

人格者であり、元の騎士団領の派閥の中心人物で、他公国出身者からの信頼も厚い。

ゲームにおいては、バランス型の典型例。


騎士団領プレイでは切り札のような存在で、他国でも彼を配下に加えると重宝される。

君主の補佐役。

内政官。

部隊の指揮官。

方面軍の司令官。

あらゆる役職に就くことができる存在で、器用貧乏になりやすいが、ひとりいるだけで安定感は増す。

特にスキル:大器・人格者のおかげで、方面軍司令官にすると部下の忠誠度が上がる上に、スキル:堅実があるおかげで暴走することもなく、安心して委任できる。

その他、首都において内政官にしておき、突発的に戦線とは逆の国から戦争を挑まれた時の遊軍としておくことも有効。


堅実な性格で基本に中心だが、クニカズから提案される戦略にも理論を聞くことで理解し順応していく。


ビルト中将(グレア帝国:ザルツ公国への義勇軍司令)

知略:64

戦闘:84

魔力:39

政治:31


スキル:猛将・疾風


グレア帝国義勇軍を率いる将軍。

人材の宝庫であるグレア帝国でも、特に戦闘向きな猛将で、率いる軍の速度を上げる疾風というスキルを持つ。特に騎兵を率いることに長けており、彼が率いる騎兵隊の進軍スピードは彼の戦闘力もあって、屈指。


ただし、猪武者になりやすく、適当に使っているとすぐに前線で孤立してやられてしまいがち。

他国では軍事面でエース級の能力値だが、人材の宝庫であるグレアにおいてはそこそこ使える猛将の位置にいる。


彼が中将でとどまっていることは、すなわち、グレア帝国の大将級以上がどれほどチート能力値を誇るかわかりやすい。

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