7. 昂るキス
紗雪の超人的な力の理由は分かった。しかし、どうやったらドラゴンになるのか、キスするとなぜ強くなるのかがよく分からない。
「レヴィアのドラゴン化にはこの棒が要るのか?」
英斗はぶんぶんと水色のクリスタルのスティックを振り回した。
「おいバカ! やめろ! 割れたらどうしてくれるんじゃ!」
レヴィアは必死に棒を奪おうと手を伸ばしたが、英斗は軽々とそれを制止する。人化しているレヴィアの力は女子中学生レベル。ドラゴン化さえしなければいくらでも力で押せるのだ。
「しばらく僕が預かっておく。それより……、キ、キスすると強くなるとかは……あるのか?」
英斗は顔を赤くしながら聞いた。
それを見たレヴィアはニヤッと笑い、
「ははーん、お主、あの娘とキスしとるんか? ヌフフフ」
と、煽った。
「あ、そういう態度するならこの棒どうなっても知らないよ」
英斗はムッとして、スティックを外に投げるふりをする。
「あ――――! やめてくれぇ! キスは龍族の神聖な行為、龍族の力を引き出せるんじゃぁ」
レヴィアはスティックに手を伸ばし、焦って答える。
「そんな神聖かどうかの話じゃなくてさ。キスの何に反応してるの? どういう仕組みなの?」
英斗はレヴィアのふわっとした説明に満足せず、突っ込んだ。
「エクソソームじゃよ。細胞から出てくる顆粒状のm-RNA。他の人の細胞が生成したてのこいつを体内に取り込むことで全身の細胞が活性化され、普段では出ない力が出るんじゃ」
「ふーん、ではキス以外でも出来たての体液を飲めばいい?」
「……、おい。どこの体液飲ますつもりじゃ?」
レヴィアは汚らわしいものを見るような目で英斗を見る。
「あ、いや、キ、キスでいいよキス」
英斗は予想外の突っ込みに真っ赤になった。
思った通り、強くなるために紗雪は自分にキスしていたのだ。しかし、誰とでもいいという事だったら単に使われただけということになる。そこは自分のことを好きであっていて欲しい。
「そ、それは、紗雪は僕のことを、す、好きってこと……だよな?」
英斗は上目遣いに恐る恐る聞く。
「そんなのあの娘に聞け! 知らんわ!」
レヴィアは呆れたように返す。
「そういう態度、良くないと思うな!」
英斗はムッとして、またスティックを捨てるしぐさを見せる。
「わ、わ、悪かった。気持ちが
レヴィアは冷や汗を流しながら泣きそうな顔で叫んだ。
「マ、マジか……。やった……」
英斗は思わずガッツポーズ。
紗雪は自分のことが好きで、自分とキスをすると昂るのだ。
うんうん、そうだよなぁ……。
英斗はにやけ顔でうなずく。
小学校時代あれだけ仲良く気持ちを交わしあっていた仲だったのだ。好きでいて当たり前、僕らは両思いなのだ!
英斗はチロチロと愛おしそうに動いていた紗雪の柔らかな舌を思い出し、ボッと頬を赤らめた。
しかし……。そうなると、急に冷たくなったことには理由があるに違いない。それは一体何なのだろうか?
「紗雪がね、キスしても記憶を消そうとするんだよ。龍族は人間と恋……しちゃダメなの?」
英斗はレヴィアをチラッと見ておずおずと聞いた。
「あー、それは『しちゃいけないキス』に昂ってるのかもしれんな。くふふふ」
「しちゃいけないキス?」
「要は、毎回お主のファーストキスをいきなり奪うことに興奮しとるんじゃろ。変態じゃな」
「えっ!? いや、まさか……そんな……」
英斗は眉をひそめた。確かにラブラブになって頻繁にキスするようになったら昂らなくなってしまうのかもしれない。記憶を消して何度も新鮮なキスをする……。
ここにきて英斗は、高校に入ってから何度か記憶を失っていたことがあった事に気が付いた。
ん……? まさか……。
冷静になって思い返すと、教室で、自宅で、いつのまにか寝てしまっていたことがあったのだ。
さ、紗雪……、お前やってくれたな……。
くっ、くくくっ……。はっはっは!
英斗は思わず笑ってしまった。
紗雪と上手く行かないことを悩んでいる間にも、自分は紗雪とキスを何度もしていたのだ。それも両想いのキスを。思えばファーストキスにしては自分も上手くできていた。初めての時は歯をぶつけたりしてしまうという話を聞いたことがあるが、そんなこともなくお互いを求めあうことができていた。いつの間にかキスに慣れていたのである。
英斗は額に手を当て、とんでもない真実にたどり着いたことに心が付いていかず、大きく息をついた。
最近記憶が残るようになったのは、何度も記憶喪失薬を使われたから、いつの間にか薬剤耐性がついてしまったのだろう。
「まぁ、単にお主を暴力の世界に巻き込むことを避けたかったのかも? 知らんけど」
レヴィアは肩をすくめて言った。
こっちの説の方が納得感はある。ファーストキスを奪い続けたいというのさすがにないだろうと思ったが……、正解は紗雪に聞かねば分からない。
しかし、どうやって聞いたらいいか? 自分は記憶がないことになっているのだ。下手に聞くわけにはいかない。
英斗はため息をつき、首を振る。
「恋愛……そのものは問題ないの?」
英斗はチラッとレヴィアを見て聞いた。
「紗雪の両親も片方は人間じゃろ? 別に問題なかろう」
「そうか……」
英斗はうなずく。
自分はこれから紗雪とどう接して行ったらいいのだろうか? 両想いなのだからもっと親しくしたいが……、いいやり方が思い浮かばない。
ふぅと大きく息を息をつくと、今は、『紗雪は自分のことを大切に思っている』ということだけかみしめておこうと決め、唇をそっとなでた。
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