　八十七代魔帝暦（まていれき）二二年・星蠍（ほしさそり）の月第十二日・属性(闇)・天気：曇り

　放課後、マジケットの練習を終え、学生寮（がくせいりょう）へ帰ろうとしたら、深刻（しんこく）な表情を浮かべた例の転校生から二人きりで話がしたいと呼び止められました。

　有無（うむ）を言わせぬ雰囲気（ふんいき）にのまれ、その背を追って人の寄（よ）りつかぬ校舎裏（こうしゃうら）へ向かうと、彼女はこちらに振（ふ）り返（か）り、先ほどよりも険（けわ）しい顔つきで睨（にら）んできます。

　困惑（こんわく）していると、転校生は瞳（ひとみ）の奥に確かな怒りの炎を宿（やど）し、一方的な感情を私にぶつけてきました……。どうやら私のこれまでの言動に不満があるみたいです。

「貴女（あなた）にティコの名は相応（ふさわ）しくない！」

　そうして、去り際（ぎわ）にそう言い捨（す）てた転校生の背を、私は無言で見送ります。

　はぁ～、私だって好きでティコになったわけじゃないのに……。

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