　八十七代魔帝暦（まていれき）二二年・天秤（てんびん）の月第二十五日・属性(風)・天気：曇りのち風雨（ふうう）

　午前中は通常授業で、仮説熱力学（かせつねつりきがく）の初授業だったんですが……教室には私以外、生徒が一人もいません。いやいや……嘘、ですよね？

　確かに、授業計画書の最後に記載（きさい）された謎のおまけみたいな科目でしたけど！　こんなことってありますか？

　あ！　きっと教室の場所が分からずに、他の生徒は迷ってるんですよ！

　だって、錬金術（れんきんじゅつ）研究棟（けんきゅうとう）地下一階の書庫、その隅（すみ）にある室内用大型置き時計（ホールクロック）の陰（かげ）に隠れた階段を上（のぼ）った先ですからね、ここ！　私も一昨日は迷いましたし、そうに決まってます！

　しかし、授業の開始時間になっても結局、生徒は一人も現れませんでした。

　というか、先生も来ないってどういうことですか！　泣きますよ、本気で！

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい