第21話 アラフォー、ドリアードと出会う

「よーし、今日は久々にクエスト行こうか」

「久しぶりですね~」

「うむ、楽しみじゃ」

 ギルド前、あの凱旋から暫く経ち街は落ち着きを取り戻していた。今日受けるのは西の森にあると言う万年草の採取だ。

 採取クエストとは言っても西の森は魔物も多くかなり危険な場所のため難度はAである。夜に出るなら難度はSにもなる。勝てないわけではないが用心しながら進もう。

「あの……どうかお気をつけて」

 受付にも心配されてしまった。聞くと噂ではフォレストレッドリザードが出るらしい。危険度はリザードにしてS。これは厳しい相手になりそうだ。


——森

「ふむ……今のところ強い魔物はおらんな」

「だが油断はできない」

 森に入って一時間。出てきたのはシルバーファング、レイジングボア、ビッグマンティス、キラーエイプなどA級の魔物。しかし迷宮に比べるとそこまで強くはない。歯応えがないわけではないが。

「お、あれは……万年草ではないか?」

「おおっ! 群生している」

「やりましたね、Dさん!」

 どうやら奥地まで来たらしい。万年草が大量にある。規定数とって、城での栽培サンプルとして多少回収。

 と、まだ奥に進めそうだ。

「意外に早く終わったしのう……探検してみるか?」

「行ってみよう。いいものがあるかもしれない」

「賛成です」

 ではエクストラステージといきますか。


——最奥の最奥

「あっ、開けた」

 草木をかき分け道なき道を進んだ先にその光景は広がっていた。

「畑……?」

「小屋もあるようじゃ」

 とにかく近づいて……っ!

「上です!」

——ザッ!

 頭上からの急襲。まさか……

「フォレストレッドリザードじゃ!」

「くっ、気が立っている」

 細くしなやかな体。殺意に満ちた目。鋭い爪と牙。直感する、強敵であると。背を向ければ確実に殺される。

「人間よ、ここからすぐに立ち去れ! ここを荒らすでない!」

「ま、待ってくれ。私たちは偶然ここに来ただけなんだ!」

「偶然? そんなわけがあるか! ここに来る人間はみなそう言う! ええい、問答無用! ドリアード様の敵め!」

——ズバァン!

「ぐっ、ダメだ。話が通じない!」

「ふむぅ、仕方あるまい」

 突如ヴィルベルが龍化する。30%くらいか?

「おい、フォレストレッドリザードよ。話くらい聞かぬか」

「人間の貴様らの話な……ど……ヴィ、ヴィルベル様!?」

「龍化せねば分からぬか。この者に牙を向けること、それは我に牙を向けると同義じゃ。話を聞くがよい」

「はっ、ははっー!」

 ヴィルベルが出るや否や急に態度が一変。やはり頂点の頂点は凄い。

 とにかくも私たちが本当に偶然来たという事は信じてもらえた。すると……

「フレイ、なにしてるの?」

 小屋からヴィルベルよりも小さな女の子が出てきた。不思議な雰囲気が出ている。

「ドリアード様! 出歩いては……」

「こほっ……大丈夫。その方たちは?」

 ドリアードとやらに自己紹介。なんでも彼女は闇のドリアード。大昔にドリアード一族から追い出されこの森でひっそり暮らしているらしい。

「ドリアード様は怪我をした私を助けて下さったんだ。それからここの番を私はしている」

「でもフレイ、いきなり襲いかかるのはダメ」

「うっ……申し訳ない」

「だけどありがとう、フレイ。……ここで私が何をしてるか、だよね。私はここで闇の植物の栽培をしてるの」

 聞けば闇の植物はその名の通り闇の力を用いて暗所でのみ栽培できるのだという。ドリアード自身の闇の力とこの薄暗い森を利用してやっているらしいが闇の植物の噂を聞きつけた人間が荒らしに来たことが幾度となくあったようだ。

「私は私の食べる分だけあればいい。でも闇の植物たちはもっと繁殖したいって言ってる。でも私の力はこれが限界」

「ただでさえ闇の力が少ない場所でドリアード様は栽培をされておられる。お体が……」

「でも植物を育てることはドリアードの精霊としての使命」

 ふむ……なにやら大変なことに首を突っ込んだようだ。力になりたいが……

「それならば我が主の城に来るが良い。闇の力も暗闇も目一杯あるぞ?」

「ああ! 確かにあの城なら!」

 植物に詳しい精霊が来てくれるならこんなに嬉しいことはない。

「本当? でも私は特殊な精霊、契約がなければここから動けない」

「だったら私と契約はどうですか? 精霊契約できるんです」

「! いいの? 私弱いけど」

「強さなんて関係ありません。困っているなら力になりたいんです」

「ドリアード様……! 希望が……!」

「うん。なら契約する。私を連れて行って」

「はい。では……」

 呪文と魔法陣。それがわずかに光り、契約は完了した。と……?

「凄い、闇の力が流れてくる。これなら……」

 ドリアードが畑に向かって一息。するとどうか。畑の作物が急成長、あっという間に食べごろになったではないか。

「嬉しい……植物たちが喜んでる!」

 涙を流して喜ぶドリアード。フレイも感無量といったところか。

「貴方の城にいけばもっとできると思う。よろしくね、Dさん」

「こちらこそよろしく頼む。田畑の知識が欲しかったんだ。思う存分耕して育んで欲しい」

 ドリアードとの話がまとまる。思いがけない出会いだ。

「……ではドリアード様とはお別れですね」

「フレイ……」

「私は元々流浪の者。悲しくはありますが」


「ならフレイも一緒に来ればいいじゃないか」


 なにも難しいことはない。別れる必要などない。

「しかし、私は……」

「構わないさ。城は大きいんだ。住民が増えるのは歓迎だよ」

「感謝する……!」

 さぁギルドへクエストの報告をして帰ろう。

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