馬の皮をかぶった大学生ですが、何か?
コプラ
第1話 僕は馬丁のお気に入り
「お前は本当に聞き分けが良い奴だな。」
そう言いながら、ニールさんは僕を撫でてくれた。僕はニールさんの巧みな指使いで撫でられるのが凄い気持ち良くて好きなんだ。だからもっと撫でて欲しくて、鼻先をニールさんの手のひらに押し付けた。
「ニールさん、この馬ってすごく慣れてますよね。俺、この牧場でこいつが一番好きですよ。」
そう言って、僕に近づいてきたのはキリルさんだ。キリルさんはいつも僕に人参をこっそり余計にくれるから、大好きなんだ。僕はこんにちわって軽くいな鳴くと、キリルさんへと近づいた。
「今日もご機嫌は良さそうだな。ハハハ、そんなに押すなよ。いくらお前が子馬だからって、俺より体重は何倍も重いんだからな?」
まーね。僕はまだ生まれて三ヶ月程だけど、そこそこ大きくなったよ。ていうかびっくりするほど成長が速くて、我ながらそれに心がついていけないんだよね。
中身がいくら人間の大学生だって、身体に引っ張られてちょっと気が短くなっちゃうしね。でも、他の馬たちは結構なバブちゃんだから、ちょっと話が合わないんだよ。
まぁみんなの面倒は見てるけどさ。なかなかやんちゃな子馬ばっかりだから、すっかり保父さん気分だよ。僕がそんな事を考えてると、キリルさんが僕の目を覗き込んで言った。
「ニールさん、俺時々、こいつは俺たちの言ってる事、全部よく分かってるんじゃないかなって思う時があるんですよね。しかもこいつって、滅多にないほど綺麗な馬でしょ?
真っ黒で額のところに星の様に白い模様が入ってて。身体つきも完璧だし。あと三ヶ月もしたら、生後半年の新馬の選考会ですよね。
沢山の買い手が来るだろうけど、きっとこいつ人気者になりますよ。しかも値段も相当良いでしょ。楽しみですよね。」
ニールさんは僕の背中を確認する様に撫でるとキリルさんに言った。
「そうだな。この牧場始まって以来の高値がつきそうだ。俺としては、こいつを大事にしてくれるピッタリの相手に売りたいけどなぁ。お前もしっかり餌食べて運動して、かっこいい馬になるんだぞ?」
かっこいい馬?そーだなぁ、僕の額にそんなカッコいい模様があるんなら、それに相応しいお馬さん目指して頑張るよ、ニールさん。僕はそう思って高らかにいな鳴いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます