第47話 病院と未来人
私、小野寺涼子は
2つの嘘を、葛城夜魅についた。
◇
一つ目の真実は、
「結城悠馬に、都市伝説について話していること」
結城悠馬
カフェ・アンリミテッドの店主にして謎多き人物。
彼との出会いは私が未だ、編集者として、ファション部門にいた頃に遡る。
◆
「なんで今になって!? 撮影明日だよ!?」
「申し訳ありません……体調不良ということで、出演キャンセルということで、、」
その日、撮影予定だった男性モデルが急に出演をキャンセルする事件が発生した。
打開策もないまま、何かアイデアが思いつけばいいと思い、私は“たまたま”見つけた、喫茶店に入った。
そこが彼の経営する、カフェ・アンリミテッドだった。
そこで、彼を見つけた私は迷わず彼に声を掛け雑誌に出演してもらう事になった。
今考えたら、無茶苦茶な話だ。
初対面の女性に、いきなりモデルの仕事を頼まれるなんて。
◆
そして、彼が私のピンチを救ってくれたように私も彼にちょっとした、
お返しをして、いくうちに親密な仲になった。
ユウくん。
と呼ぶようになったのは、最近のことだ。
そして、数日前のカフェでのことだ。
「ほんと、ユウくんと会えてよかった」
その時、私は彼との思い出に浸っていた。
さっき言ったような、彼との出会いを私は懐かしんでいた。
ファション部門から外されたことで少しセンチメンタルになっていたのかも。
でも、それだけじゃない。
「仕事は楽しいよ」
「そうですか。」
ユウくんは、目を細める。
私は前々から。都市伝説について調べることが趣味だった。
一応、私はメディア側の人間で相応の裏社会の情報が普通の人より入手し易い。
その情報を元に都市伝説を紐解くと、一般人には解らないようなことがわかって特別感もある。
しかし、私は
「怖くも、あるんですよね。仕事が」
そうなのだ。怖くもあるのだ。
ユウくんは、私の心を見透かしている。
「あなたは、“たまたま”僕と会った」
そう“たまたま”
「あなたにとって、“たまたま”は良い事との出会いを指すことが多い」
「そうだね」
「しかし、“たまたま”悪い事が起きる可能性も大いにある」
そうだ、、私は“たまたま”
偶然性の力が怖いんだ。
◆
気づくと私はユウくんに
今、私が手掛けている仕事の話をしていた。
《未来都市国家セクター
記事にしようとしていた。
セクターΩ。
地図に乗らない国
或いは、未来人が作り上げた国
はたまた、亡霊の住む国。
情報が錯綜し、混ざり合って訳がわからない。
(そんな、存在ある訳ない)
面白そうな、情報だけ摘出してだたのフィクションにして記事に落とし込もう。
当初、私はそう考えていた。
しかし一人の社員が姿を消して、私の態度は一変した。
◇
その社員は、新人で私の部下だった。
彼女が消える前日、
あるメッセージが彼女の元から私に届いた。
『セクターΩの目的が分かりました』
『もう少し、探ってからお話しします』
彼女は、独自のルートで取材をしていた。
そして、私はその取材を止めなかった。
(彼女の失踪の一端は私に責任がある。)
彼女を見つけ出す。
そう決心した私は、彼女の軌跡を辿った。
そして、辿った先で。
「見てしまったんですね。幽霊を」
ユウくんの発言が私の思考の先回りし、告げる。
そうなのだ。
私が、彼女の住んでいた賃貸アパートに訪れた際。
私は、見てしまったのだ。
肌が半透明になった。彼女の姿を。
私の抱える、もう一つの真実は
「都市伝説で語られるような組織は、ある」ということだ。
◇
それから降ってきた少年を、
病院に入れるのは、一苦労だった。
もちろん。物理的な意味合いでは、ない。
救急車を呼んだため、すぐに彼を病院のベッドで寝させることはできた。
しかし、入院に必要な書類を書く事ができないのだ。
私たちのところに、“たまたま”少年が降ってきたのだ。
少年の情報なんて知る訳がなかった。
しかし、彼が“希少な”男性であることも相まって奇跡的に入院させる事ができた。
少年が、起きたのは日が暮れてからだ。
突然のことだった。
「はぁ!」
少年がいきなりベットで、体を起こした。
病室には私しかいない。
葛城さんは、家に帰ってしまった。
不思議なことに看護師さんもいない。
目が覚めた彼は、すごい剣幕で問い詰めてきた
「妹は?ここは!どこだ!」
いささか、面をくらった
私はオロオロとしながら回答をする。
「え〜と、ここは病院。あっ、あなたは一人空から降ってきた」
「まて!俺は一人だったのか?」
間違いない。
「ええ」
私の言葉に彼の顔が曇った
「透子、、」
「その、トウコ?って人が、貴方の妹さんの名前?」
「あぁ」
彼は、ぶっきらぼうに答える。
おそらく、彼にとっては、私に注意を払えるような事態ではないのだ。
現に、私のことについて何も質問がなされない。
私は、彼の焦りを和らげようと対話を試みる。
「どこなら来たの?アナタ?」
「未来だ。幽霊になりたくなかった。」
「幽霊?未来?」
「あぁ」
未来に、幽霊。
まるで、セクターΩの話をしているみたいじゃないか。
「もしかして、アナタの住んでいた所
――未来人が建国した国?
そんな、バカみたいな質問を彼に投げかけた。
「あぁ、セクターΩって国だ」
そのバカみたいな質問は、どうやら確信をついていたようだ。
どうやら“たまたま”拾った少年がセクターΩ在住だった。
――“たまたま”悪い事が起きる可能性も大いにある。
彼の言葉が脳裏をよぎった瞬間。
私は、後頭部に強い衝撃を受け視界が真っ暗になった。
どうやら、私が掴み取った“たまたま”は
悪い運命を引き寄せたようだ。
そこで、私の意識は途絶えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます