第190話 謁見!!
ギリギリ…と歯軋りを鳴らしそうな表情で俺たち…いや、俺を見る貴族のオッサンたちとその後ろに控えている近衛騎士たち。
「………………?」
おかしい…何も思うところ…が無いワケでもないが、そんな全員に睨まれるようなことはさすがにしていないはずなんだがな…。
そんな針の筵の中を、気にはなるが気にもせず、俺はテクテクと衛兵さんの後に続く。
「ここで暴れるのはお止めくださいね」
コソッ…と俺にだけ聞こえるようにシーバスが言う。失礼な…さすがに俺だってそんな無差別に暴れたりなんてしないよ?…時と場合によるけど。
「時と場合…と言っても、これだけの人数を相手に…ですか?」
ん?…余裕だろ?そもそもこの程度の人数なら、今のお前でも勝てるぞ?…余裕で。
その言葉にシーバスは少しだけだが目を見開く。何だ、気付いてなかったのか…。今のシーバスはレベルも十年前より大分上がっているし、戦闘経験も積んだだろう?お前の訓練に付き合っていたのは誰だと思っているんだ…。
「………そうですか」
納得したかのかは知らないが、シーバスはそのまま黙り込む。心なしか、嬉しそうに見えるのはきっと気のせいだろう…。
そして、衛兵さんの足が止まり、俺たちもその足を止める。衛兵さんは玉座側に一礼したあと、こちらにも一礼し、その場を離れた。
そして…
いよいよ、ご対面である。
このエクシア王国国王…
『セツナ=フォン=エクシア』
………何だろう。
武力介入を開始する…とか、俺がっ!俺たちがピーーーだっ!!…とか言っちゃいそうな雰囲気を醸し出しているが…さすがに言わないか。
そう思っていると心なしか、あのマイスターに似ているような気がしないでもない、ような気がする。
ただ…そんな雰囲気だけで、その目はマイスターとは違いギラついているようにも見える。
はて…?何故あんな肉食獣のような目を俺に向けるのだろうか…。
「ユーリウス様…」
…っと、シーバスに名前を呼ばれ、ハッと我に帰る。いかんいかん、臣下になったつもりは無いが臣下の礼くらいはしておかないとな…。
俺は片膝を付き、右手を心臓の辺りに添え…
「ユーリウス=フォン=ゼハールト、召還により参上致しました」
頭を下げる。
王様とはいえ、仕えている相手でもないのに頭を下げるのは気にいらんな…。二度と登城はすまい…とソッと誓う。
「面を上げよ」
その声は真面目な時の鳳凰いげふんげふん…なにがしの声に近い。イコール、マイスターのあの人にも近いワケで…。
あ、ああああ、アカンっ!耐えろ俺っ!ここはさすがに笑いを耐えなければいけない場面だっ!!…と前からは見えないように左足をツネリ、我慢に我慢を重ねた。
あ、危ねえ…耐えた、耐えきったぞっ!自分で自分を褒めてやりたいところだが…
しかし…地獄が始まるのは、これからだった…。
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