第186話 張り合うんじゃありません。
シーバスが俺に差し出した物は『剣』。
王城に向かう前に渡すって………何?俺にクーデターでも起こせってこと?
「違います」
…ですよねえ。冗談だ冗談。
で、本当は何なの?そもそも城に剣なんて持ち込めなくない?
「御付きの者や護衛の者の武器の携帯は認められておりません。例外的に貴族本人のみ武器の携帯を認められております」
…ほぉん。
護衛が武器を持てないって本末転倒な気がしないでもないけど…。貴族本人が持っていても良いのは『自分の身は自分で守れ』的な感じなのかな?
「そのような感じですかね」
ふぅ~ん、その割には裏工作やら私兵やらを使ってきて、自分で戦う貴族が少ないような気がするけど?
「慣習…のようなものですから…」
まあ、それならそれで受け取っておくか…と剣を受け取り、腰にぶら下げる。
ふむ、俺に誂えたかのようなサイズ感。鞘の色合いも今着ている服の邪魔にならないような感じだな…。
良いじゃないか。
「グラム商会長からの贈り物で、オーダーメイドの剣ですからね。誂えたように思うのも当然です」
なるほど、納得。しかし、いつの間に…まあ、くれたんなら、そのままもらっておくけれども…。
「本当はミスリルか何かで作りたかったようですよ。ただ、ユーリウス様がまだ成長するだろうとのことで、泣く泣く鉄製にしたとか…」
そうなの?ミスリルなんて高価な金属使われたら、ソレはソレで怪しいんだけど…?それに剣なら『無限収納』に入ってるしな…。
あっ…あれか、俺が剣を使ってないし、普段身に付けていないから…ってことか。だとすると余計な気を使わせちゃったかな…。
ま、さっきも言ったけれど、サイズ感はちょうど良いし、重さもまあまあ…有り難くもらっておくことにしよう。
今度、新しいレシピかなんかあげるか…。
準備が完了したところで、コンコンコン…とスイートルームのドアがノックされる。
「ユーリウス様、王城からの馬車が到着しました」
タイミングばっちりだな。
よしっ………行こうかっ!
部屋を出て宿の入口に行くと、非常に金が掛かっていそうな馬車が着けていた。馬車を引く馬も、あれは芦毛…じゃないな。白毛の馬か…珍しい。しかも二頭…。とてもハンサムなお馬さんたちである。
「お待たせしました、ユーリウス=フォン=ゼハールト様。ここからは私どもでご案内させていただきます。さ、馬車へお乗りになってください」
執事然とした若い男が言う。シーバスよりも一回り身体は小さいが…なかなかに強そうだ。
「(私の方が遥かに強いですがね)」
ボソッと言うシーバス。
…張り合うんじゃありません。
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