第96話 O・HU・RO・⑦

「「「ん………はぁ…」」」

「「「あ"あ"あ"…」」」


というワケでみんなで足湯してみた。


何処かの動画投稿チャンネルのタイトルみたいになってしまったが、各々の反応を見る限り悪くないだろう。………ないよね?


「足浸かるだけでも…」

「悪くないねぇ…」

「そうねぇ…」

「気持ちいいわねぇ…」


うむ、悪くなさそうだ。


「はふぅ…」

「ぬぅ、これは良いな…」

「これは…疲れが取れそうだ…」


特に仕事帰りの父さんには、堪らないだろう。

先程タオルを取りに行ってもらったシーバスも合流して、湯に足を浸けている。…モノクル、曇ってるぞ…。


「どうだい?父さん。気持ちいいでしょ?」


「そうだね…足を浸けるだけでも全然気持ちいいね…」


「でしょ?…でもお風呂は………肩まで浸かってこそだよ」


俺がそう言うと『カァッ』とみんなが目を見開き「な…なんだってぇっ!?」と言いそうな表情になる。


「一番風呂は母さんとレイナに譲りたいところだけど…ここは家長である父さんに一番風呂をお願いしようと思う」


「いいのかい?作ったのは君だよ?ユーリウス…」


「いつも俺たち家族のために働いてくれているんだ。こういう時は良いんじゃないかな?」


「………ユーリウス」


…という感じで、茶番劇を繰り広げる。父さんの方はどう思っているか分からないが、俺は完全に打算である。

一番風呂を譲り、さらに風呂の良さを知ってもらうことで邸内に風呂場を作る許可を貰うための…ね。


「じゃあ、お言葉に甘えようかな…」


『キランッ』俺の目が光る。獲物が罠に掛かった、と…。

俺は即座に『無限収納』内で錬金出来るのを思い出していたので、ボディーソープ・シャンプー・リンスを錬金開始。鑑定先生にお任せして最高級の物を作ってもらう。

あ、リンスはトリートメントとコンディショナーの効果もお願いします。ボディーソープは泡タイプで。


「セイ兄、セイ兄も一緒に入って、父さんの背中流してあげてくれる?」


「え、僕?ユーリじゃなくて?う~ん………父さん、良い?」

「もちろん」


セイ兄に似た容姿…逆か父さんの優男っぷりをセイ兄が受け継いでいるんだが…そんな父さんがセイ兄に笑顔を向けて頷いていた。

腐女子が喜びそうな絵面である。


父さんの専属執事に父さんとセイ兄の着替えとタオルの準備を頼んで、俺はすでに錬金が完了した洗剤類を『無限収納』から取り出して置いておく。

速い、速すぎる。さすが鑑定先生だ。


みんなに湯船から出てもらって入浴時のレクチャー。ポンプボトルタイプで創ってもらった洗剤類にはしっかりとラベルまで貼ってあったので説明がちょっと楽になった。

鑑定先生…抜かりないな。さすがです。


排水のことを忘れていたので、準備していないことに気付く。

今日のところは湯船のお湯は『無限収納』へ。俺がいちいちやるのは面倒だが仕方ない。

洗い場の方は、父さんに外への排水の許可をもらったので、勾配の低い所で外への極薄の穴を空けた。


お風呂場への入口と浴室への入口の二ヶ所には一先ずは大きめの布を簡易に取り付け、目隠しだけにする。


あくまでも試作だから、こんなもんで良いだろう。


「ん、こんなもんかな…。じゃあ、みんな出て出て。父さんたちはひとっ風呂浴びて、ゆっくりしてね」


俺はそう言い残し、二人を残して、お風呂場をあとにした。

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