第80話 なりたいっ!

と言うワケでパワーレベリングである。何が『と言うワケ』なのかは分からんが、まあいい。


事前にグラム商会長経由でゴブリンの集落を探してもらい、俺たちはソコに出向いていた。


場所はヴァーチェの南東、馬車で半日程度の距離。メンバーは御者を除き、俺、義祖父さん、シーバス、そして何故か…


「わぁ…ユーリ、見て見てっ!ウサギが跳んでるよ!」


「………ゴフッ」


セイ兄…天使か…。


それは置いといて、そう…何故かセイ兄ことセイリウス=フォン=ゼハールトが同乗同行していた。


「僕もユーリみたいに強くなりたいっ!」


「………ゴフッ」


セイ兄…天…それはもういいか。

まあ、そんなことを先日セイ兄に言われたのだが、当然俺は反対。セイ兄はまだ六歳だ。身体の成長やらなんやら、まだこれからである。…とまあ、そんなことを三歳の俺が言ってもまったく説得力が無いワケで…。


「強くなりたい…良いではないか。ゼハールト家の男はこうでなくてはなっ!」


義祖父さんの余計な一言でセイ兄の参戦が決定してしまったワケだ。

もちろんこの後、義祖父さんをヒートエンドしたのは言うまでもない。


決定してしまったのはしょうがないので護衛にシーバスを付け、現地では俺が支援系付与魔法を全盛りすれば大丈夫か…と今に至る。

決してセイ兄の「………だめ?」に負けたワケではない。…ホント。


カラカラカラ…と馬車は進み、一度休憩を挟んだあと、集落の近くでゴブリンに感知されない場所まで到着。ここからは徒歩で向かうことになる。

しかし、尻が痛い。こっそり『浮遊』の魔法で尻を浮かしておけば良かった…と気付いたのは馬車を降りたあとだった。


馬車を降りた場所は街道沿いだったが、そこから森に入り、徒歩で三十分程度らしい。

冒険者時代、斥候だったシーバスはセイ兄の護衛に付けているので、先頭は義祖父さん、次に俺、三列目にセイ兄、の後ろにシーバス、という並びである。


この森は大して強い魔物はいないらしい…が魔物とあわせて普通の獣も出るそうで冒険者とは別に一般の狩人も森に入っているらしい。…一緒のような気もするんだが…。


セイ兄は城壁外を歩くことが初めてなので、大きな声は出さないものの、はしゃいでる様子が見受けられる。

………くっ、何故俺は今までカメラ的な物を作らなかったのか…。魔法と錬金術で何とかなりそうなのに…と造ることが出来るかどうか分からないのに後悔していた。


そして俺たちはゴブリンの集落…その間際まで到着した…。

ちなみに義祖父さんは森の中を先頭切ってブイブイいわしていたことを報告しておこう。

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