第74話 やるなお前…
コノモ侯爵の拠点…その玄関前で俺は止まる。先ほど門番ごと玄関の大きな木製扉は吹き飛ばしたので、中のエントランスホールは丸見えの状態でワラワラとチンピラやらゴロツキやらがいるのを確認。
「………ガキ?」
「………羽?」
吹き飛んだ玄関の方を見て、俺の姿を確認すると口々に何かを言っている、最初からエントランスホールにいたのであろう奴ら。
「何があったっ!?」
「おいっ、騒ぐんじゃねえっ!」
エントランスホール以外の部屋から出てきて、確認をしたり、嗜めようとする奴ら。
「少し黙りなさいっ!何があったのです?速やかに報告をよこし………何者です?あの子供は…?」
そんな中、趣味の悪いラメッラメの服を着込んだ妙に痩せている男が、金切り声を上げながら男たちを掻き分けて出て来る。
ガリガリに痩せてはいるが、肌の色が悪かったり…というようなことはない。そのわりには周りの奴らより高身長だが、痩せているせいで、もの凄く弱そうだ。
顔は細長く、ヒステリックな印象を受けるその目はやや吊り上がっているか。貴族らしく綺麗な金髪はツーブロックにされているが長さが絶妙でオカッパにしか見えない。
極めつけは…
「………ぶはっ!うわぁーはっはっはっ!パッツン!ぷっ…金髪ツーブロックのパッツンだよっ!?あぁーはっはっ!ちょっ…まっ…ごほっ」
俺は盛大に指を指しながら笑った。ゴロゴロ転げながら笑った。
殲滅してやろうと思っていたのに、二度目の転生を果たしてから一番笑ったのではなかろうか。
なんなら笑い過ぎて噎せたまである。
だってしょうがなくないっ!?ガリガリに痩せて高身長の細面の奴が金髪ツーブロックのオカッパで前髪パッツンだよっ!?………ラメラメの入った貴族服着て。
属性盛り過ぎだよ。そんなの目の前に現れたら、指指して笑うしかないじゃん?
「ごほっ、ごほっ…ふぅ………ふぅ………ぷっ…ぶはははははっ!!」
収まったと思った瞬間、思い出し笑いである。全然収まってなかったよ…。
「はぁ…はぁ………あぁ、死ぬかと思った…」
やるなお前…と思ったりしないでもないが、ようやく収まったので埃をパンッパンッと払いながら起きあがる。
俺をある意味で殺しにきたソイツが、まあ、身形からしてコノモ侯爵だろう。小物っぽい格好しやがって…危うく俺が笑い死ぬところだったぜ…。
そして俺が起きあがった時、拠点内は『シーーーーーン…』としていた。侯爵は俯き、俺から見ると顔の上半分に陰が掛かっているように見える。
侯爵はプルプルと………あぁ、これは怒りに震えているのかな?
そしてボソリと…
「殺せ…」
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