第16話 本邸!
貴族区入り口の衛兵にお見舞いしてやった俺は、「次は良い感じにアフロになるように調節しよう…」ととか考えつつ、ゼハールト準男爵家本邸に向かう馬車の中で大人しくしていた。
と言っても、もう直ぐにでも到着するとは思うが…。
貴族区にある本邸…とはいえ準男爵家である。
下から数えた方が早い爵位なので特別豪華なお屋敷…というワケでもなく、立地が良いワケでもない。
建っていたのはごく普通のお屋敷。
建ぺい率?何ソレ旨いの?と言わんばかりに両隣の屋敷は接近していた。
…コレ、猫も入れないんじゃね?と言うくらい隙間が無いのにはビックリである。
門と屋敷の間には申し訳程度にスペースが取られた庭は存在しているが………庭?って感じだ。
そんな敷地、建物が乱立している区画を通り、馬車は一軒の屋敷の前に止まる。
使いの男が馬車の扉を開け、降りていく。続くように…
「さ…降りようか、ユーリ」
俺の手を引き、セイ兄と俺が降りる。
つーかこの野郎、乗り込む時もそうだったが三歳と六歳の子供が馬車を降りるってのに手も貸さないとは、どういう了見だ。
いや、その前に俺たちは雇い主の子息なワケだが。…やっぱり舐めてやがるなこの野郎。
元々許すつもりもないが、もう許さん。
使いの男が鉄製の門を開ける前に、俺は『極小雷撃』を門に流す。今回はさらに弱めにしてあるが…。
男が門の取っ手に手を掛けた瞬間…
『バチィッ』
「あ痛あ"ぁ"っ!?」
小さく弾ける音と共にゴロゴロと転がる男。
「っ!?っ!?っ!?」
転がるのを止めた後は何が起きたのかわからない、という顔で門を見ている。
………ふっ、ざまぁ。
まあ今のはせいぜいドッキリ企画の電流より少し強い程度だ。多少、溜飲は下がったが…これで終わりだと思うな。
今度は鉄製の門を熱しておこうかな、とも思ったがソレは次の機会にでもしよう。
男は今度は慎重に取っ手をチョンチョン…と触ってから門を開けた。その姿に笑いそうになったがソコは我慢。
正直、さっきゴロゴロ転がっている時は指差して笑いそうになっていたのは内緒である。
そして男と俺たちは申し訳程度の庭を抜け、屋敷の玄関前…両開きの扉の前に立つ。
男はここでも慎重に鉄製のドアノッカーを触ってから鳴らした。
もちろん俺が笑いを我慢したのは言うまでもない。
少しするとドアの片側が開き、中から執事服を着た男が現れた。
白髪をオールバックにした初老くらいか?の男。
目付きは鋭く、白い髭を生やし、執事服の上からでも鍛えているのがわかる。
執事はその鋭い眼差しで使いの男と俺たちを一瞥すると「入れ」と一言残し、直ぐに引っ込んでしまう。
そして俺は見逃さなかった…。執事が現れた時にセイ兄が一瞬だが、ビクリとしたことを…。
…どうやらあの執事も俺の敵らしい。
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