第118話 銀級のチームが壊滅?






 ケイオスオーガの体がサラサラと白い砂のようなものに変わって流れていく。


「ふぅ、なんとか倒せたな」


 俺は腕で自分の顎の下をぬぐった。


「ええ、あなた様。強敵でした」


「うむうむ。妾とマリンちゃんにかかれば、こんなものなのじゃ」


「マスターのフォローが輝きましたね」


「ウォフッ」


 ゼフィちゃんの隣に佇む水の精霊、マリンちゃんも機嫌が良さそうだ。

 うんうんと頷いている。


 俺は抱っこ紐の中のヴェルとアウラを撫でる。

 お前らも無事で良かったな。大地の力を流してやる。

 ポワッ ポワッ


「クルルゥ」

「キュアッ」


 ケイオスオーガの体があった場所にはヤツの左腕の先と左目らしきものが残されるのみだった。

 今回は邪神の欠片は無いみたいだ。


「お前らもお疲れな。この成果は上に報告しておく。きっと昇級するぞ?」


 ルドルフさんがニヤリと笑いながら近づいてくる。


「それは助かります。ルドルフさんはお怪我は?」


 俺がルドルフさんに返事をする。

「ああ、軽い打ち身ってところか?」


 あれだけケイオスオーガと打ち合って軽い打ち身だけなんて、ルドルフさんは随分とタフだな。


 そこへ冒険者が駆け寄ってくる。回収班か?


「ルドルフさん! こちらでしたか! 大変です! 銀級のチームが壊滅したかも知れません!」


 その冒険者は慌てながらルドルフさんに報告をする。

 なんだって!? 銀級って言えばミーシャのところじゃないか!


「ルドルフさん! 銀級の持ち場はどこですか?」


 俺は焦りながらルドルフさんに尋ねる。


「ぬ? 銀級はオークキングの本拠地を狩るって話だったはずだ」


 そう答えるルドルフさん。

 すると神獣が、


「ウォフッ!」


 俺の前に伏せる。


「神獣! ミーシャの場所が分かるのか?」


「ウォフッ!」


「あなた様。私もついて参ります」


「うむうむ。妾も行くのじゃ」


「マスター。急ぎましょう」


「ルドルフさん! 俺たちは一足先に銀級のチームがいる場所へ行きます!」


 俺がルドルフさんに告げる。


「む、そうか。こっちは動ける金級を集めて向かうことになる。先は任せた」


「はい!」


 俺たちが跨るとすぐに神獣は駆け出した。

 すごい勢いで景色が後ろに流れていく。

 暗い森の中の木を蹴飛ばしながら神獣は走る。

 速さの割に風の抵抗を受けること無く進むと、森の木がポッカリと空いた空間に出る。


 そこには口の開けた洞窟が待ち受けていた。

 入り口にはオークの歩哨だったものが倒れ伏している。


 俺たちはそのまま洞窟に入った。

 中は暗くてジメジメしていたが思いの外広く、巨体の神獣が入っても余裕があった。


 奥へ進むと、段々とオークの骸(むくろ)が増えていく。

 やがて、広場のような空間に出た。

 入り口にはたくさんのオークの骸(むくろ)が積まれている。

 中は倒れているものも有ったが篝火がたかれていた。

 広場の中も激戦の跡があり、倒れ伏すオークたちと冒険者たちの姿があった。


 倒れ伏す冒険者の姿を見て、俺の心臓はドコンと跳ね上がる。

 ミーシャ! 無事でいてくれ!


 辺りを見回して生存者の確認をする。

 息のあるものには霧夢の腕輪からポーションを取り出して飲ませていった。




 それを見つけたのは奥の方だった。


 四肢を砕かれた石の人形。

 ……アインだ!


 俺はアインの残骸に駆け寄る。

 見ると胸にある魔石も露出している!

 近くにボロボロになったアインの装備が転がっていた。



 ……そしてその影に隠れるようにミーシャが倒れていた!


 俺は急いで駆けより、ミーシャの息を確かめる。

 息は……している。


 俺はポーションを取り出し、飲ませようとするが上手く飲み込んでくれない!


 ええい!

 俺はポーションを自ら煽るとミーシャに口移しでのませ、大地の力を注ぎ込んだ。

 倒れているミーシャの体が一瞬ポワンっと光った。



 俺は崩れて倒れているアインの側でしゃがむと、アインの胸に手を当て大地の力を流していく。


 ポワンっ


 謎の光り現象が起こり、巻き戻すようにアインの手足が元に戻っていく。

 程なくして、アインが立ち上がる。

 なんだかアインの元気が無さそうに見える。へにょりだ。

 アインの腕にはボロボロのアイスガントレットと、凹んだ灼熱の盾が握られている。


「アイン。よくミーシャを守ってくれた。ありがとうな」


 ポンポンとアインの肩を叩く。

 ミーシャを壁際に寝かせ、アルカ、ティファ、アインと一緒に息のあった冒険者達を隣に並べていく。

 ゼフィちゃんと神獣は警戒だ。


 すると、ドコンっという音が響く。

 なんだ!?


 俺たちは辺りを見回す。


 ドクン


 なんだか広場の奥の方から……


 ドクン ドクン


 聞こえてくる、この


 ドクンドクンドクン


 音は、前にもどこかで……


 ドクンドクンドクンドクンドクンドクン


 聞いた事があるなっ!


 俺は広場の奥のある一角を鑑定した。


 ~~~~~

 ケイオスオーク

 邪神の眷属

 ~~~~~


 やっぱりか!


「アルカ! ティファ! ゼフィちゃん! 邪神の眷属がまだいるっ!」


「なんじゃとっ!?」


「マスター、奴らはどこにでも湧きますね」


「あなた様、汚らわしいオークは私たちで殲滅しましょう」


 なんだかアルカの目が怖いぞ? オークと何かあったのか?


 オークの骸が積み重なる場所から手も使わずに、人形が起き上がるようにソイツはムクリと起き上がった。


「ア“ア”ァァァァァァァァァァァァァァッ!」


 ソイツはドス黒い蒸気のような物をまとわりつかせて、両腕をだらりと下げている。

 口は半開きでダラダラとヨダレも垂れていた。






――――――――――――


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