第113話 ガーベラ姫






 ザンッ ザシュッ


「ふぅ」


 ミーシャは一息つく。

 オークの一体を屠った所だ。

 手早くオークの胸から魔石を抜き取り、収納袋の中に入れる。


「お前、中々やるじゃないか。ギルドで見た時は見掛け倒しだと思ったが……」



 そう言うのは大剣を背負った竜人の少女、いや一部では姫様と呼ばれていた少女だ。

 冒険者ギルドで耕平たちに絡んでいたのは記憶に新しい。

 ミーシャの腕前に感心したのだろうか、以前とは態度が軟化していた。


「ミーシャだ」


「む。まだ名乗っていなかったな。我はガーベラと言う」


「うむ、ガーベラ。よろしく頼む」


 そうして森の中を進む。

 ミーシャ達銀級の冒険者はスタンピードの原因であるキングを倒すべく敵の本拠地に向かっている。


 今回のスタンピードはゴブリン、オーク、オーガのスタンピードだった。


 それぞれ銅級のチームがゴブリンキングを、銀級がオークキング、金級がオーガキングを倒すことになっている。


 この度、オークキングの本拠地が判明したのでミーシャ達が出張る事になったのだった。


 ミーシャ達、銀級の冒険者のチームは森の中を進む。

 その間、敵の歩哨だろうか。ポツポツとオークとエンカウントする。


 ドンッ!


 ガーベラの振るう大剣が衝撃を放つ。


「っし!」


 ガーベラがオークを切り倒し、残心しながら下がる。


「そちらこそやるな」

 ミーシャがガーベラを褒める。


「ただのオーク程度では話にならん」


 フンッと鼻を鳴らすガーベラ。


「いやいや、姫さん。姫さんの歳でそれだけ出来れば言う事ねえですぜ。なぁ?」

「だな」


 周りの冒険者たちが言う。


「まぁ肩慣らしにはちょうど良いか」


 不承不承といった様子で納得するガーベラ。鮮やかなピンクの髪が揺れた。


 冒険者たちは音も少なく森の中を進む。

 程なくしてポッカリと森の開けた空間の前に出た。


 目の前には洞窟のようなものがあり、入り口の両脇をオークの兵が固めている。


「こんなところに洞窟なんてあったか?」

「見張りがいやがるぜ。」「どうする?」


「片方はミーシャが受け持とう」


「じゃあもう片方は俺の弓で仕留める」


 ものの数秒で方針が決まる。


「アインはここで待っていてくれ」


 アインが無言でうなずいた。

 ミーシャは冒険者の隊から離れると森を迂回してオークの側面に立つ。


 片方のオークに矢が突き立てられる!


「ブッ」


 ここだ。

「シッ」


 ミーシャは空歩で近づき、オークの死角からその延髄を断つ。


 ザシュッ

 倒れるオークを抱えるようにして寝かす。


 もう片方のオークの喉には矢が刺さっていた。

 そちらは座り込むように倒れていた。


 森の切れ端から冒険者たちが姿を表す。


「うまくいったな」

「さて、中はどうなっているやら」


 冒険者たちが小声で話す。


「では、行くか」


 リーダー格の冒険者の一言で冒険者たちは洞窟の中へと入っていく。

 ミーシャもアインを連れて洞窟の中へと足を進める。

 洞窟の中は薄暗く、ジメジメとしている。

 オークの巨体に合わせてなのか中々広い洞窟だ。


 松明の頼りない明かりに照らされている洞窟を進んでいくと奥に広間のようなものがあった。


 松明が設けられ、オーク達がなにやら飲み食いしている。


「宴会でもしていやがるのか? あいつら……」

「ここで乱戦はあまりしたくないな」

「明かりがあるのはありがたいが……」


 冒険者たちはコソコソと相談する。


「しっ。入り口の方から足音が聞こえる」

「くそ。外に出ていた奴らが戻ってきたのか」

「これは打って出るしかないな」

「挟み撃ちはごめんだぜ」

「途中でやり過ごせる場所は無かったよな?」


「我が後ろで持ちこたえる。その間に中を頼む」


 ガーベラが一人で殿をするようだ。


「姫さん。後ろは頼んだ」


 冒険者たちは広場に奇襲をかける!

 オーク達でひしめき合う広場へと躍り出ると手当たり次第に斬り伏せていく。


 ザンッ ザシュッ ヒュガッ


 ミーシャも遅れじと冒険者たちについていき、殲滅戦に加わった。

 アインがミーシャの前に出てオークを真横に吹っ飛ばす!


 ズドンッ!


 その吹っ飛んだオークをミーシャが空歩で追いかけ、トドメを刺す。


 カィンッ


 ミーシャを狙った矢をアインが盾で遮る。


 ザシュッ

「悪い! そっちに流れた!」

 冒険者が叫ぶように言う。


 ドズンッ!

「ガヴッ!」


 アインの一撃で膝をついたオークの首筋にミーシャが刃を入れる!


「シッ!」

 ザシュッ!


「これは埒が明かない、ぜっ!」

 ドガッ


 隣の冒険者が愚痴る。


 ズドォン!

 こちらに蹴り飛ばされてきたオークをアインが殴り飛ばした!


 しばし、こちらが優勢で始まった乱戦だったが、敵が持ちこたえ始める。

 盾を持ったオーク達が隊列を組み始めたのだ。


「クソっ。アイツら隊列を組み始めやがった!」


 ヒュッ ズン!


 弓持ちの冒険者が前列に並ぶ盾持ちのオークを狙う! が、盾に阻まれる。


「ガアァァァァァァァァァァァッ!!」


 広場の入口の方でガーベラの声が鳴り響く。

 後ろは大丈夫なのか? と疑問に思ったミーシャは入り口の方に目をやった。


 そこには竜の羽根を生やし、牙も伸びたガーベラの姿があった。






――――――――――――


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