第173話 ポータブル冷蔵庫と発電機


 ポータブル冷蔵庫については説明はいらないと思うが、これは持ち運びできる冷蔵庫のキャンプギアである。しかも屋外でも使用できる分、急速冷凍なんかも可能なキャンプギアで、飲み物を急に冷やしたりすることなんかもできる。


 そしてその電源は家庭用のコンセントや車のシガーソケット、アウトドア用のポータブル電源から給電することができ、少しだが内蔵されたバッテリーに充電しておくことも可能となっている。


 ポータブル発電機はその名の通り発電機のキャンプギアだ。発電方法は2種類あり、ガソリンとカセットボンベになる。ガソリンによる発電の方がコスパは良いのだが、当然こちらの世界にはガソリンなんてものは存在しないので、カセットボンベ一択になる。カセットボンベについてはだいぶ前から出ていたからな。


 ちなみに使い終わったカセットボンベについては鍛冶屋のグレゴさんに再利用できないか相談中だ。基本的にカセットボンベはスチール、つまりは鉄でできているので、溶かして再利用が可能なはずだ。カセットボンベが銅貨5枚で購入できるのだが、むしろ使い終わったガス缶の方が高く売れてしまうのである。


 鍛冶屋のグレゴさんには保存パックの開発を手伝ってもらったし、今後もキャンプギアでいろいろと相談したいことも多くある。今後みんなと相談して俺のアウトドアショップの能力の秘密を打ち明けても良いかもしれない。


 ポータブル発電機のおかげでこの世界でも電気を使用することができるようになった。他にもアウトドアショップのレベルアップにより、ソーラーパネルなんかも出てきたから、今後は電気を使ったキャンプギアを使えるのはだいぶ助かるぞ。


「それにしてもこの冷蔵庫というものはすごいな。氷魔法を使えなくても、物を冷やすことができるとは……」


「本当ですね、兄さん。テツヤさん、これは魔道具とは別のものなんですよね?」


「ああ。アンジュの言う通り、これは魔道具とは別物で、魔力とは別の電気という力を使っている。……まあ、陽の光やガスという力をエネルギーにしているから、魔法と似たようなものになるのかな」


 俺もソーラー充電や発電の詳しい仕組みは分からないのでうまく説明することができない。魔力というものを使用して使う魔法や魔道具なんかと同様のものと思ってくれればそれでいいかな。


「とはいえ、エネルギーは使うものだから、たまに使うくらいのものだと思っておいてくれ」


 この冷蔵庫は結構な電力を消耗する。発電機で充電をするためには結構なカセットボンベを消費するので、毎日常に稼働しておくわけにはいかない。たまに冷たいものが食べたり飲みたくなった時に稼働するといった使い方だな。


 だけど氷魔法を使用できるランジェさんがいない時でも冷たいお酒やジュースが飲めるようになったのはとても大きい。これでたまには冷やしたうまい酒が飲めるというものだよ。


「さすがに電気を使用した商品なんかは販売しない予定だからね。まあ、この辺りは従業員の特権と言うことで」


 少なくとも当分の間は電気を使用したキャンプギアの販売はしない予定だ。さすがに魔法が使われている社会で、いきなり電気なんてエネルギーが発見されたら大混乱になりそうだもんな。


 そうなったら、冒険者ギルドやAランク冒険者のベルナさんとフェリーさんであっても俺達をかばいきれないかもしれない。さすがに大きな面倒ごとはご免である。こういったものは俺達の身の回りだけでこっそりと楽しむこととしよう。


「それにしても、洗い物がなくなっただけでだいぶ仕事は楽になったな」


「最近閉店後の作業の中では洗い物が一番大変でしたからね」


 アンジュの言う通り、ありがたいことに最近ではインスタントスープや棒状ラーメン、アルファ米、虫よけジェルなどの容器を繰り返し使用できる商品のリピート率も多く、1日の洗い物の量は結構なものとなっていた。まあ、虫よけジェルだけはそこまでではないけれど。


 そのため、洗い物が閉店後の作業の結構な部分を占めていた。しかし、例の宿に洗い物をお願いしたことにより、洗い物作業から解放され、こうして閉店作業を早めに終えてのんびりとお茶をする時間もできたわけだ。


「来週からは新しい商品の販売を始めて、また忙しくなるだろうからね。これからもよろしく頼むよ」


「はいです!」


「ええ、もちろんです」


「ああ、任せてくれ」


「もちろんだぞ、テツヤ!」


 保存パックや木筒の洗い物もおっちゃん達に頼むことができたことだし、いよいよ来週からはアウトドアスパイス、カレー、ようかんの販売を始める。また仕事が忙しくなることは明白だ。


 来週はランジェさんが来てくれるから、6人で接客することはできるけれど、どれも人気が出そうな商品だから、また忙しくなるだろうなあ。


 ちなみに従業員のみんなには、家に帰っても楽しむことができるお餅、塩飴、タブレットを渡した。すべてアウトドアショップのレベルが5になって購入できるようになった行動食だが、普通に食べても楽しめるからな。


 塩飴やタブレットなんかも、冒険者達には喜ばれること間違いなしなのだが、さすがに商品を置く場所がない。新しい店舗についても少しずつ考えていくことにしよう。

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