第156話 王都の香辛料


「あれ、この香辛料と調味料はアレフレアの街のものと比べても意外と安いな」


 王都の物価は基本的にはアレフレアの街の2~3倍くらいする。さらには香辛料や調味料なんかの嗜好品にかんする物はさらに高いと思っていたのだが、実際にアレフレアの街の香辛料や調味料の1.5倍くらいに収まっている。


 これはどういうことなんだ?


「兄ちゃんはアレフレアの街から来たのか?」


「ああ、王都の物価はかなり高いけれど、香辛料や調味料やそこまで高くないと思ってさ」


「ほう、あの駆け出し冒険者の街から遠路はるばる王都まで大変だっただろうな」


 実際にはフェリーさんの召喚したスレイプニルのスレプのおかげで、普通の馬車の数倍の速さによってこの王都までたった1週間で来ることができたんだけれどな。


「実は少し前に特殊な魔法を利用した香辛料の栽培方法が考案されてな。最近になってようやくその栽培方法によって育てられた香辛料が収穫され始めたんだ。その影響で一部の香辛料や香辛料を使用した調味料なんかの価格が以前の半分近くまで下がったんだよ」


「へえ~そんなことがあったんだ」


 そう言えば以前にそんな話をどこかで聞いたことがあったな。そうか、ついに香辛料や調味料の値段が下がり始めてくれたのか。


「今はまだ王都だけだが、すぐに別の街の香辛料や調味料なんかも価格が下がり始めるだろうな。まあ、うちの店としちゃあ、仕入れ値が以前の半分になっても売値も以前の半分になるから大損なんだが、将来的には他の多くの種類の香辛料や調味料が新しくできるだろうし、普通の家庭にも普及し始めるだろうから今は我慢だぜ……」


 なるほど、確かに価格が下がりすぎると、店の方は大変そうだ。とはいえ、安くなった分需要は格段に増えていくだろう。少なくとも俺たち消費者側にとってありがたいことは間違いないな。


「テツヤ、そうなったら例のアウトドアスパイスも店で売れるんじゃないか?」


「そうだね。リリアの言う通り、香辛料が普及してきたらアウトドアスパイスも販売してよさそうだな」


 今まで香辛料は高価なもので、利権を求めた商人たちが怖くて販売を控えていたが、これなら販売を開始しても大丈夫そうだ。


「あれは焼いた肉にかけるだけでも塩だけとは全然違った味になる。冒険者ならみんな買うと思う」


「なるほど」


 フェリーさんからのお墨付きもいただいた。確かにアウトドアスパイスのクオリティはめちゃくちゃ高いからな。アレフレアの街に戻ったら、販売を考えてみるとしよう。


「なんだい、同業者さんだったのかい」


「いや、そういうわけじゃないんだけれどな。でも香辛料や調味料が安くなって普及するのはいいことだ。おっちゃん、いろいろと買っていくから、おすすめの商品を教えてくれないか」


「おう、そういうことなら大歓迎だぜ!」




「いやあ~いい買い物ができたな!」


 そのあとおっちゃんのお店で大量の香辛料と調味料を購入した。実際のところ、王都のお店の香辛料と調味料の種類はアレフレアの街のものの比ではなかった。


 まあ、様々な街からいろいろな物が集まる王都だから、駆け出し冒険者の街であるアレフレアの街とは比べ物にならないのは当然と言えば当然である。


 フェリーさんの収納魔法のおかげで、たくさんの香辛料と調味料を購入したにもかかわらず、手ぶらで街を歩けている。


「こんなにたくさん買えたのもフェリーさんのおかげだよ。本当にありがとう」


「テツヤの役に立てたならよかった」


 そう言いながら、少し照れた顔ではにかむフェリーさん。フェリーさんのこういった照れた姿を見るのは珍しいな。


「しかし、ずいぶんといろいろな種類の香辛料と調味料を購入したようだな」


「うん、思ったよりも珍しい物が多かったからね! これで日々の料理もいろいろと改良することができるよ。例のタレもいろいろとパワーアップできそうだな」


 今回購入したのは辛い唐辛子のような赤い香辛料、山椒のようなピリリとする香辛料、甘く爽やかな香りのするシナモンのような香辛料などなど。


 そしてなんと、原料は大豆かは不明だが、豆を使った醤油もどきと味噌もどきの調味料を手に入れることができた。これらの調味料は例の魔法栽培で安くなってはいなかったが、お金には余裕があるので、迷わず購入した。


 いやあ、まさか醤油と味噌が手に入るとはな! これだけで王都まで足を延ばした甲斐があるというものだ。というか、ぶっちゃけ王都の冒険者ギルドでの商談がまとまったことよりも、醤油と味噌を手に入れることができたことの方が嬉しかったりする。


 アレフレアの街では娯楽が少ないから、最近の俺は料理が趣味になっている。もちろん元の世界の漫画やアニメなんかは恋しいが、こちらの世界の食材などを使って、元の世界の料理を再現するのは結構面白いんだよね。


「テツヤがここまで喜んでいる姿を見るのは初めてのことかもしれないな」


「そうかな? やっぱり新しい場所に来るのって楽しいよね。アウトドアショップの経営も落ち着いてきたし、また定期的にいろんな街へ行くのも悪くないかな」


「ああ、新しい場所に行くのは楽しいものだ。王都の他にもたくさんの魅力的な街があるんだぞ!」


「それは楽しみだな。うん、例の地図や図鑑とかの件もあるし、またみんなでいろんな街へ行こう」




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いつも拙作をお読みいただき、誠にありがとうございます(^人^)


先日より新作の貞操逆転ものを投稿しておりますので、よろしければこちらも応援いただけますと幸いですm(_ _)m


こちらは男女比が1:9で冒険者メインの話となります。ノクターンのコンテストにも参加しようと思っておりますので、微エロですw


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