第116話 歓迎会と親睦会


「それじゃあこれからはアンジュもアウトドアショップの一員ということでよろしくね」


「はい、こちらこそどうぞよろしくお願いします」


 アンジュの接客は問題なく、ドルファもアンジュを意識しつつも、なんとかある程度の接客ができるようになってきたので、来週からはアンジュも正式なアウトドアショップの一員だ。


 アンジュのほうもドルファと一緒にこのお店で働きたいと言ってくれている。今日はアンジュの歓迎会ということで、前回と同様に休みの日のお昼を使ってアンジュの歓迎会と親睦会を行う。


「あと今日はゲストとしてAランク冒険者のベルナさんとフェリーさんが来てくれている。2人はリリアの友達だからみんなよろしくね」


「ベルナと申します、よろしくお願いします。今日はみなさんのお食事会にお邪魔して申し訳ありません。私達のことはどうかお気になさらないでください」


「……フェリー。よろしく」


 綺麗な姿勢で礼儀正しく挨拶をするベルナさん。フェリーさんのほうはやはり人見知りなようで、少したどたどしい雰囲気だ。


「それじゃあ面倒な挨拶は抜きにして早速乾杯しよう! 乾杯!」


「「「乾杯!」」」




 歓迎会と親睦会が始まった。今日もアウトドアショップの裏庭のスペースにテーブルと椅子を出して外で行う。


 今日はフィアちゃんの母親のレーアさんは予定があって来られなかったが、ベルナさんとフェリーさんが参加しているから、裏庭のスペースは結構ギリギリになっている。


 まずは冷たい飲み物で乾杯だ。ランジェさんの魔法のおかげで飲み物を冷やして飲むことができる。もちろん俺とランジェさんは酒を飲む予定だ。バーベキューで酒を飲まないのはもったいないからな。


「テツヤさん、この度はお誘いいただいてありがとうございます」


「いえ。なんかこちらのほうこそ、無理に誘ったみたいで本当にすみません。お店の2階スペースでいつでも休憩できるようにしておきますので」


「……助かる」


 フェリーさんは少し人見知りするようだから、一応の避難スペースは準備しておいた。俺はあんまり気にしないが、知らない人と話すのが苦手な人も大勢いるからな。


「テツヤさん、こちらはお土産になります。ぜひみなさんで召し上がってください」


 昨日の遅くに参加することが決まったばかりなのに、わざわざ手土産を用意してくれたらしい。


「これはご丁寧にありがとうございます。おお! これはとてもおいしそうなお肉ですね!」


 包みの中にはとても大きな肉の塊が入っていた。鮮やかな赤色をした肉で、適度に入ったサシの白色がとても美しい。


「こちらはワイバーンの肉です。以前に私達が狩ったワイバーンの肉です。フェリーの収納魔法の中に入れてあったので、腐ったりはしておりませんので」


「ワイバーンですか!?」


 マジか!? ワイバーンやドラゴンの肉と言えば、ファンタジーの世界で定番だ。この世界に来ていつか食べてみたいと思ってはいたが、どちらもかなりの高級素材らしく、この始まりの街では手に入れることができなかった。


 ちなみに以前冒険者ギルドマスターが開店祝いにくれたダナマベアは高級食材、ワイバーンは超高級食材、ドラゴンは超超高級食材といった具合になる。


 ドラゴンに至っては王族や上流貴族くらいしか食べられない代物だ。ワイバーンの肉も普通の庶民では一生口にすることができないような肉である。しかも結構な大きさもある。


「こんなに良いものをいただいてもいいんですか?」


「ええ、もちろんですよ。ぜひみなさんで召し上がってください」


 おお、まさかこの街でワイバーンの肉が食べられるとは思わなかったぞ。食べられるとしても、干し肉や燻製肉などの保存用に加工されたものしか無理だと思っていた。


「ベルナさん、フェリーさん、本当にありがとうございます!」


「ベルナ、フェリー、ありがとう」


 リリアと一緒に2人にお礼を伝える。それにしてもフェリーさんは収納魔法が使えるのか。俺が言うのもなんだが、羨ましい限りである。まさかこんな良い肉が食べられるとはな!


 よし、気合いを入れて料理するとしよう!




「お待たせ! さあ、ベルナさんとフェリーさんにもらったワイバーンの肉をいただこうか」


 魔物図鑑の情報料もあって、多少はお金に余裕があるので、今回はそこそこ良い食材を用意してきたのだが、肉に関しては超高級食材のワイバーンの肉のほうが間違いなくグレードが高い。


 まずは普通にバーベキュー用に薄く切った肉を焼いて食べる。


「おお、これがワイバーンの肉か。これはうまそうだな」


「普通のお肉よりも鮮やかな赤色をしていますね」


 どうやらドルファもアンジュもワイバーンの肉は初めてのようだ。そもそもワイバーンは結構強いらしいので、冒険者の始まりの街近くには生息していないからな。


「うわあ~おいしそうです!」


「僕もワイバーンの肉は久しぶりだね」


 フィアちゃんもワイバーンの肉は初めてだろうな。今日来ることができなかった母親のレーアさんのために、ワイバーンの肉を少し取っておくことにしよう。


 どうやらランジェさんはワイバーンの肉を食べたことがあるらしい。さすが現役のBランク冒険者である。


「お肉を結構小さく切るのですね。面白い食べ方です」


「……初めて見る食べ方」


「これは俺の故郷の焼肉、バーベキューという食べ方です。肉を小さくカットしているから、自分たちで網の上に乗せてすぐに焼けます。焼き加減も自分自身で選べるし、少しずついろんな味を楽しめますからね」


 他にもみんなで肉を焼きながら食べるから、一緒に食べる人達との親睦が深まる。


 今回はいろいろな味を用意してある。2人の口にあえばいいんだけどな。

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