第56話 開店祝い


「それでは一旦ここまでのご入場でお願いします! ここからはお客様がひとり退店されましたら、ひとりご入場するようにお願いします」


 店内に20人ほどのお客さんを入れてから入場規制をおこなう。店内は俺とフィアちゃんで対応し、今あるインスタントスープがなくなるまでは、外でリリアに対応をお願いしている。


「テツヤ、フィアちゃん、開店おめでとう」


「立派な店じゃないか。すごいな」


「フィアちゃんも相変わらず可愛いわね。2人とも、開店おめでとう!」


「みんな、来てくれてありがとう!」


「い、いらっしゃいませ!」


 初めに入ってもらったお客さんの中にロイヤとファルとニコレがいた。商品を紹介している時から3人がいたのは気付いていたが、さすがにお客さんをほったらかしにしてロイヤ達と話をするわけにはいかなかったからな。今なら先に入ったお客さんは商品を選んでいるので、少しくらいなら話せそうだ。


「3人ともわざわざ来てくれてありがとうな」


 今日のお店のオープンは冒険者がまだ活動している朝からとなっていたのだが、わざわざお店まで並びに来てくれたらしい。


「せっかくテツヤの店が開くんだから、そりゃ応援にはいくさ。大した物じゃないけれど、開店祝いに花を摘んできたんだ」


「おお、綺麗だな。ありがとう、お店に飾らせてもらうよ!」


 ロイヤ達から開店祝いに色とりどりの花束を受け取った。とてもありがたいな、あとで花瓶に入れて飾っておこう。


「そういえばリリアさんがこの店の店員になっていたのには驚いたぞ!」


「そうね、びっくりしちゃったわよ!」


 そういえばロイヤ達にはまだ話してなかったか。


「護衛のできる店員を探していたところにいろいろとあって、うちのお店で働いてくれることになったんだよ」


「……リリアさんが護衛っていうのはすごいな。リリアさんのことを知っている人は大勢いるし、威圧感がすごいから、ここで犯罪をするやつはいないだろうな」


「とはいえ珍しい商品も置いているから、油断はできないからな」


 普通の店ならそうかもしれないが、この店には珍しい商品をたくさん置いているし油断はできない。


「ねえテツヤ、そういえばこのお店に制服はないの? フィアちゃんやリリアさん達とお揃いの可愛い服とかあればよかったのに」


「制服か……確かに店員用の制服があってもいいかもしれないな。とはいえ、まだお店を開いたばかりだし、従業員も少ないから、もう少し従業員が増えたら考えるよ」


 確かに店員でお揃いの制服があってもいいかもしれない。……まあニコレは可愛い制服を着たフィアちゃんを見たいだけかもしれないが、俺も2人の制服姿を見てみたいかも。元の世界の服なんかは、2人によく似合いそうだ。


「さっきのインスタントスープもすごかったな! お湯に入れるだけで、あんなにうまいスープができるなんて便利すぎるだろ」


「ああ、俺はコーンクリームスープというやつを試してみたけれど、甘みのあるスープでとてもうまかったぞ!」


「私が試したのはコンソメスープだったけれど、あっちもとっても美味しかったわよ! あれは絶対に買っていくわ」


「それにあのブルーシートとかいう物もいろいろ使えてとても便利だろ。値段もそれほど高くないし、あれは買っておかないとな!」


「買ってくれるのはありがたいけど、みんな無理のない範囲でいいからな」


「いや、今回もそうだけど、テツヤの店で売っているものは普通にほしいものが多いんだよ。今までテツヤの店で買った物のおかげで、これまでよりも快適に依頼をこなせるようになったからな」


 そう言ってもらえると、こちらも嬉しい。ロイヤ達の役に立てたのなら何よりだ。


「それじゃあ、そろそろ商品を選ぶとしよう。またな、テツヤ」


「ああ、また今度飯にでも行こうな!」


「フィアちゃん、お仕事頑張ってね!」


「はいです! ニコレお姉ちゃんもありがとうです!」


 ロイヤ達は商品を選びに戻っていった。そうだな、また今度ロイヤ達を誘って飯にでも行くとしよう。ご馳走をする代わりに、キャンプギアを使った感想を聞きたいところだ。冒険者が実際に使用した感想を聞ければ、これから売る商品を選ぶ参考にもなるからな。




「はい、ありがとうございます。全部で銀貨8枚になります」


「え、ええ〜と、全部で銀貨5枚になります! ありがとうございました!」


 ……ふう、さすがにオープンした初日だけあって、かなり忙しくなってきた。


「申し訳ありません、インスタントスープはおひとり様2つまでとなっております」


 この店の商品には転売防止のために販売個数制限があり、値札の場所におひとり様いくつまでと書いてある。インスタントスープ4種類すべてを購入して味を比べたいというお客さんもいたのだが、お断りさせていただいた。


 個数制限をしないと、方位磁石と同様に転売されてしまう可能性が高いからな。


「はい、こちらの商品はこうやって使います!」


 基本的に俺とフィアちゃんは入り口近くの会計をするカウンターにおり、お客さんから呼ばれたら、基本的にはフィアちゃんにお客さんのほうへ行ってもらい、商品の説明をしてもらっている。一応値札と一緒に商品の説明を書いてはあるのだが、それでもわからないことはあるもんな。


「テツヤ、試供品のスープはすべてなくなったぞ」


「よかった。忙しくなってきたから、リリアも中で手伝ってくれ」

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