第百五十二話 黒い光と黒い炎
「うぉぉぉぉおおおおおお!!!!」
魔石の激しい衝撃波に部屋が崩れ落ち、さらには棟全体が崩れ落ちようとしていた。
俺の黒い炎はアルギュロスの力と混ざり合い、さらに激しい黒い炎となり崩れ落ちる瓦礫を燃やし尽くしていく。俺たちの周りはそれでなんとか防いでいるが、周りには吹き飛んだ瓦礫が城のあちこちに飛び散り、悲鳴が上がる。
魔石の禍々しい黒い光はさらに広がり、城全体を破壊していく。
「リュシュ!!!!」
背後から聞き覚えのある声が聞こえた!! 振り向くとフェイたちの姿が!!
「フェイ!! アンニーナ!! ネヴィル!!」
「リュシュ!! 無事で良かった!! 加勢する!!」
そう言ってこちらに向かい駆け出そうとする三人。
「待って!! こっちに来るな!! 魔石の力に巻き込まれる!! それよりもヤグワル団長たちに!! 王都の人たちを守って!!」
「「「!?」」」
フェイたちは驚いた顔をした。
ここに近付くと魔石に精気を吸い取られてしまう。それよりもこの魔石の力のせいで王都の人々が危険に晒される! それを守って欲しい!!
「カカニアまでヤグワル団長たちが来ているはず!! 王都の人たちを巻き込みたくない!! 助けて!!」
それだけ叫ぶとフェイたちは躊躇いながらも頷いた。俺の気持ちを理解してくれた。
フェイたち三人は竜たちがいるのであろう場所まで一気に駆け出した。
激しい黒い光を放ち続ける魔石は周りの精気をさらに吸い取っているようだった。
悲鳴を上げる兵たちは黒い光に触れるとバタバタと倒れていく。
「くそっ!」
「リュシュ!!」
ヒューイが俺の身体を支える。
「ヒューイ!! 拘束は解けたのか!?」
「あぁ!! なんか知らんが拘束は解けた!! 魔力も発動出来るぞ!!」
ヒューイは吹雪を放出!! 俺の黒い炎と共に魔石を襲う。しかし魔石の黒い光は収まることを知らない。
ヴィリーとロドルガさんも立ち上がった。
「どうやら魔石の力のおかげで捕縛と魔力封じの魔導具が干渉し合い、力の弱い魔導具のほうが消し飛んでしまったようだな」
魔石の力のおかげで魔導具が消失か……皮肉なものだ。
シルヴィウスはもうすでに正気を保っていないようだった。魔石に手を触れたまま、顔はすでに異形化とも思えるほど人相が変わってしまっている。
黒い光はさらに一層激しさを増す。
「アルギュロス!! さらに黒魔法を放出する!!」
今ここで止めなければ全ておしまいだ!!
俺の持てる力全てを放出してやる!!!!
身体のなかをアルギュロスの力が巡る。俺の魔力と混ざり合い力を込める。ヒューイも吹雪を放出し続ける。ヴィリーとロドルガさんは俺たちの背後を守る。
「うぉぉぉぉおおおおおお!!!!」
黒い炎は俺たちの周りからもう跡形もないほど崩れ落ちた部屋を覆い尽くすように、大きく膨らみ周りを飲み込んでいく。
魔石を飲み込み、シルヴィウスを飲み込む。
シルヴィウスは人間とは思えない叫び声を上げ、その声は鼓膜を破りそうなほどだった。俺たちは苦悶の表情になり、それに耐える。
「ぐわぁぁぁぁぁああああああああ!!!!」
シルヴィウスは叫び声を上げたまま、魔石は黒い炎に焼かれ続ける!!
行け!! そのまま燃え尽きてしまえ!!!!
魔石はまるで人間が燃えているかのような不気味な悲鳴にも似た音を響かせた。
ぎゃぁぁぁぁぁああああああ!!!!
思わず耳を塞ぎたくなる。苦しくなる。これは魔石に取り込まれた人々の悲鳴か!!
苦しい!! 辛い!! しかしここでやめる訳にはいかない!!
辛くとも俺がやらなければならないんだ!!
「うぉぉぉぉおおおおおお!!!!」
燃え尽きろ!!!!
黒い炎は魔石を燃やし尽くした…………そう思った瞬間…………
シルヴィウスが小さくなった魔石を握り締め、そして…………
飲み込んだ!?
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