第四十二話 魔力
濃紺……普通に考えると「魔力が弱い」ということ。シーナさんの顔を見た。それに気付いたシーナさんはニッ笑う。
「そう、私の瞳は濃紺色だ。ログウェルの言ったままの通りに考えると、私の魔力はめちゃくちゃ弱いということになるな」
実はめちゃくちゃ強い魔力の持ち主なのか!? 疑惑と期待とでシーナさんの言葉を待った。
「私の魔力は弱い!」
「弱いんかい!!」
あ、思わず突っ込んでしまった。ヤバい。
「あ、いや、すみません! なんでもないです!」
横でディアンが笑ってやがる。
「そう! 私の魔力は弱いのさ!」
全く気にしていない鋼メンタルなシーナさん。そのまま話を続ける。ログウェルさんも笑ってるし。
「しかし、私は治療師としてはトップクラスだ!」
「そうなんですか?」
自信満々なシーナさんをいまいち信用出来ないのは、この見た目のせいだろうか、とは言うまい。
チラッとログウェルさんとディアンを見ると、苦笑しながらも頷いていた。
「なぜだと思う?」
シーナさんはグイッと顔を近付け見詰めてくる。だ、だから近いってば!
「わ、分かりません」
「少しは自分で考えろ。頭を使わんと脳筋になるぞ」
グサッ。ま、まあ確かにな……。
魔力が弱いのにトップクラス……少ない魔力をいかにして効率良く使うか……だよな?
「魔力コントロール……?」
「よく分かってるじゃないか!」
そう言いながら再び背中をバシッと叩かれた。だから痛いってば。なんでみんな俺を叩くんだよ。
「少ない魔力でなぜトップクラスなのか、それは私の魔力コントロールがこの国一番だからさ!」
「いや、一番かどうかは……」
ログウェルさんがボソッと呟くと、シーナさんはログウェルさんの腹に掌を当てた。
「うぐっ」
ログウェルさんは腹を抱え蹲る。
「「えっ!?」」
俺もディアンも驚いてログウェルさんを見た。
「お、お前な! 治癒魔法を違うことに使うな!!」
腹を抱えてシーナさんを睨むログウェルさん。な、何が起こったんだ? ディアンもわけが分からないといった表情。
「説明をするのに分かりやすいだろうが。竜人なのだから、それくらい耐えろ」
「竜人だとか関係あるか!!」
若干涙目になっているログウェルさん。な、なんなんだ一体。
「というわけで、ログウェルに何が起こったかと言うとだな」
「治癒魔法の応用だ。さらには魔力コントロールでピンポイントの箇所を狙った」
「?」
元から魔法が使えない俺には全く意味が分からない。ディアンは少し考え込んでから顔を上げた。
「ピンポイントの箇所……ログウェルさんの腹のどこかを狙って治癒魔法を発動させたんですか?」
「そのとおり! さすが私の部下だな!」
「あ、ハハ、ありがとうございます」
ディアンの乾いた笑いはこの際無視して話を聞く。
「我々治療師は患部に手を当て内部のどこが悪いかを感知する能力がある。それを応用してだな、患部ではないが、ログウェルの腹の内部を探り便通を良くさせた!」
「「は?」」
「題して、腹下し魔法!!」
「「うわぁ、嫌な魔法……」」
ディアンと二人で顔を引き攣らせていると、ログウェルさんが部屋を飛び出した。か、可哀想に……。
「な、なんでまたそんな変な魔法を……」
「まあお仕置用だな、ワハハ」
シーナさんは腕を組み豪快に笑った。
いやぁ、地味に嫌な魔法だな、おい。
ログウェルさんが怒り心頭で帰ってきた。
「やあ、おかえり、久しぶりに私の魔法を受けた具合はどうだ?」
「お前から二度と魔法は受けんわ!!」
ログウェルさん……気の毒過ぎる……。
「まあ、というわけで、私の魔力は弱いがこうやって色々応用がきく」
「はぁ」
だからなんなんだ? 腹下し魔法と俺の魔力がないこととなんの関係があるんだよ。
「君ももしかしたらただ魔力のコントロールが出来ないだけかもしれない」
「え!?」
「魔力自体は持っていて、使い方が分からないだけかもしれないじゃないか」
「使い方が分からない……」
「あぁ。この国の人間は皆子供のころから誰に教わるでもなく魔法が使える。だから魔力の使い方を教えることがない。教えなくても知っているからだ」
そう、子供のころから魔法の使い方など教えてもらったことなどない。自力で魔力を感じる訓練をして、ようやく魔力を感じることが出来たんだ。
「ということはだ、魔力の使い方さえ分かれば君も魔法が使えるかもしれないぞ」
「本当ですか!?」
「いや、知らんがな」
「えぇ!?知らん、て……」
「可能性の話だ! そう考えたほうがワクワクしないか? ほれ、ワクワクするだろう?」
「い、いやぁ……」
正直ワクワクよりも、結局自分の無能さが露呈されるだけなのでは、と不安しかない。
「というわけでだ、今後はドラゴンと一緒に君も研究対象だ!」
「は!?」
研究対象って! いやいや、ちょっと待て、なんで俺が研究されなきゃならんのだ!
助けを求めてログウェルさんとディアンを見るが、二人とも目を逸らしやがって!!
「楽しみだな! よろしく頼むぞ! リュシュ!」
えぇぇえ!!
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