#5 後輩(彼氏)に隠し事をされてしまった。

彼は僕に何か隠しているようだ。



週末になったので、昼飯に誘ってみた。

予定があると断られたが、どこか言いづらそうに言葉を濁してるようだった。


僕は窓からの朝日が差し込む部屋の中で、

ベッドに腰掛けながら先程の彼の電話での様子を思い出していた。


(嘘は言っていないけど、何か隠している、という感じだろうか?)


彼の事は信じているけど、足枷にはならないと決めたから、

もし他の人とデートをしていたとしても気付かないフリをしよう。


今後他に好きな人が出来たと言われても、

「そうか、今までありがとう」と笑顔で送り出してやろう。


彼が負い目に感じたりしないよう、

「僕にも好きな人が出来たから、気にしなくて良いよ」と言ってやらなければ。


大丈夫、僕ならやれる。

今までだって色々我慢して、いつだって平気なフリしてきたじゃないか。


小中学生の頃には「病気が伝染うつるから触るなーーー!」なんて、

直接触らないよう物差しなんかでつつかれたり。


高校生の頃には、周りも少しは成長したのだろうか、

流石に言葉に出される事は無かったが、あからさまに避けられた。


恋愛だってそうだ。


好きな相手が出来ても、感染のリスクを考えると付き合うなんて選択肢はなかったから、

告白する事は諦めてたし、告白されたとしても、同じ理由で断って来た。


大丈夫。辛い事には慣れている。今度もきっと乗り越えられる。


だから彼と別れるなんて大した事じゃない。また独りに戻るだけだ。

むしろ、彼に伝染うつしてしまうリスクが無くなる事を喜ぶべきだ。


そんな事を考えていると、目から涙が溢れている事に気付いた。


!!!


(僕は、、、彼の事を本気で好きなのか?)


ただ、後輩として、人間として、家族のように好きなだけなんだと思い込んでいたけど、

彼と別れる事を想像しただけで、胸が痛くなり、涙が止まらなくなって、息が苦しくなった。


あぁ、僕は彼の事を本当に好きなんだな。

深く深く愛しているんだと、今更ながらに気付いた。


でもこの気持ちは決して彼に知られてはいけない。

出来るだけ心の奥底に留めて、あくまで人として好きなんだと装おう。


彼が気軽に僕から離れていけるように。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る